LIFE STYLE | 2019/11/07

日本車にハマって日米の文化を発信。所ジョージ的ライフスタイルを謳歌するYouTuber「スティーブ的視点」に直撃取材!

© Steves POV  2019
取材・文:6PAC
「生活を楽しむために仕事をする」という...

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© Steves POV  2019

取材・文:6PAC

「生活を楽しむために仕事をする」というライフスタイル

© Steves POV  2019

日本で「生活を楽しむために仕事をしている人」と聞くと、どういう人を連想するだろうか? 筆者が真っ先に連想するのは所ジョージである。2015年に放送された『ビートたけしの一流が嫉妬したスゴい人』(フジテレビ系)という番組で、親交の深いビートたけしが「仕事のために生きているわけではない」、「仕事以外の楽しみ方をすべて教わった」と言及したのも所ジョージについてだ。アメリカンなライフスタイルを実現するため、世田谷ベースを筆頭に、沖縄ベース、山中湖ベース、八王子ベースといった遊び場兼仕事場を日本各地に所有し、アメ車、ゴルフ、ファッション、エアガン、フィギュアなどを楽しんでいる。

日本では所ジョージのような「生活を楽しむために仕事をしている人」はまだまだ少ないが、アメリカではそれほど珍しい存在ではない。アメリカの一軒家には大抵ガレージや地下室があって、主に男性の「生活を楽しむために仕事をしている人」の遊び場になっていることが多い。こうしたガレージや地下室は、“男の隠れ家”を意味する「man cave」とも呼ばれる。

カリフォルニア州サンディエゴ郊外に住む筆者の友人のガレージには、ピックアップトラックとセダンの2台、バイクも2台、サーフボードやスケートボードが十数本、車やバイク用の工具やサーフボード関連の道具が収納されている。サーフィンやツーリングに行く機会の多い友人は、サーフボードやバイクの手入れのためにガレージで過ごす時間がかなり多い。彼のガレージはまさに“man cave”といった感じである。

先日、そうした「生活を楽しむために仕事をしているアメリカ人」による日本語発信のYouTubeチャンネルを見つけてしまった。気になった人の話を聞くことを楽しむために仕事をしている側面もある筆者としては、「スティーブ的視点 Steve's POV」というチャンネルを運営するスティーブン・フェルドマン氏の話も聞かないわけにはいかない。ということで、ご本人に色々と話を訊いてみた。ちなみに、日本と海外の違いを日本語発信するYouTubeチャンネルという意味では、「バイリンガール英会話 | Bilingirl Chika」の車に特化したバージョンと言えばわかりやすいだろうか。

本業不動産仲介業、副業YouTuber

同氏の本名はスティーブン・フェルドマンなのだが、世間的にはスティーブというニックネームで通っているそうだ。日本語が達者な彼が最初に日本を訪れたのは1992年の夏。日本語を学んでいたアメリカの大学(ウィスコンシン大学マディソン校)が夏休みの間、埼玉県の養鶏場でホームステイとアルバイトを経験したそうだ。帰国後、養鶏場での経験をまとめたスピーチをした全米日本語弁論大会で優勝。大学卒業後の1993年末くらいから約5年ほど、日本のコンピューター関連の会社に勤務するため日本に住んでいた経歴の持ち主だ。

現在はカリフォルニア州シミバレー在住で、不動産仲介の仕事をする傍ら、YouTuberとして活動している。「スティーブ的視点 Steve's POV」にアップされている動画の平均的な再生回数は2~3万程度なので、やはり「YouTubeの広告収入だけでは生活できません」と話す。なぜ日本語発信より市場規模が桁違いに大きい英語発信でYouTubeチャンネルを運営しないのか訊ねてみると、「日本語でやっている外国人もいると思うのですが、自分のようなスタイルでやっている人がいないので、あえて日本語でやろうと思ってやっています。また昔から日本との架け橋としてビジネスをしてきたので、日本との関わりを常に持っておきたい考えもあるので日本語でやっています」という。

「スティーブ的視点 Steve's POV」では、日本車好きなアメリカ人たちや、日本独特の車文化を楽しむ日本人たち、そして自身が興味深いと感じた日本の文化などが紹介されている。同氏も、「もともと車好き。特に日本車には全く興味は無かったんですが、実際に日本にしかない車を見たら非常に惹かれてしまい、それから日本車好きになりました」と話す。

世界でも1億人程度しか話さない日本語圏ということや、四方を海に囲まれた島国という地政学的な点から、ガラパゴスと揶揄されることが多い日本文化だが、車文化も例外ではない。同氏は、街道レーサー、デコトラ、バニングカー(ワゴン車などをベースにしたカスタムカー)を面白いと感じた日本独自の車文化として挙げる。

現在、同氏が所有する車は3代目スカイライン(ハコスカ)、フェアレディZ、サニートラック(サニトラ)、フェラーリ458、フォード・ラプターの5台。日本の自動車メーカーでは日産がお気に入りのようだ。さらに家族でも一人一台が当たり前のアメリカなので、家族(妻・息子)が所有する2台を合わせると、計7台を所有していることになる。

ちなみにこちらは同氏のガレージ。文字通り“男の隠れ家”だ。

車文化を皮切りに、カラオケや大相撲にも興味

© Steves POV  2019

日本独自の車文化以外では、カラオケと大相撲に興味が湧いたと語る同氏。筆者がこれまでに出会ったことのある“日本文化に興味のあるアメリカ人”というくくりだと、ほぼ8~9割の確率でアニメ、マンガ、ゲームといったポップカルチャーがきっかけだったという人が多い。日本語の勉強がきっかけで、日本独自の車文化に興味を抱いた同氏のケースは珍しいと言えるかもしれない。ちなみに、「カラオケを楽しむのが日本語の勉強にもなっている」と同氏はいう。いまだに日本語習得意欲は旺盛なようだ。

日本が好きになり、そのまま日本に住み続ける外国人も結構多いらしいが、同氏は5年程度日本で仕事をした後アメリカに帰国し、現在はカリフォルニアで生活している。その理由について訊ねると、「暮らしやすいのはアメリカです。カリフォルニアなどの西海岸であれば日本との距離的にもそうですし、時差も『現地での17時が日本の10時』という感じで比較的仕事がしやすい環境です」と話してくれた。

日米両国で生活した経験から、それぞれの国で生活する上でのメリットとデメリットも訊いてみた。まず、日本のメリットは「接客が最高、おもてなし、料理が美味い、ほぼ全て時刻通りに動く」だそうで、デメリットは「渋滞、満員電車、高速道路の料金、雨が多い」という。一方で、アメリカのメリットは「土地が広い、自由さがある、フレンドリーな人が多い」と語り、「カスタマーサービスが悪い、物価が高い、場所によって治安が悪い」ことをデメリットとして挙げてくれた。

以前、筆者は「アメリカでJDM(Japanese Domestic Marketの略)と呼ばれる日本仕様の右ハンドル車に人気が出てきている」という内容の記事を執筆した。そのJDMについて訊くと、「かなり人気だと思いますよ。映画『ワイルド・スピード』、ゲーム、アニメなどの影響もあると思いますが、それらに影響を受けてJDM好きになるアメリカ人はどんどん増えていっていると思います」との答えが返ってきた。

筆者は『Pimp My Ride』というMTVが制作した、ボロボロの車をこの世に一台しかないようなカスタムカーに改造してしまう番組が好きだったのだが、今後「スティーブ的視点 Steve's POV」では、どういったコンテンツを配信していくのだろうか。この点について訊ねてみると、「色々予定はあります。改造プロジェクト系の動画は人気だと思いますが、視聴者はデコトラの紹介、日米文化比較など、それぞれのシリーズごとに付いてくることが多いので、いろんなプロジェクトをやりながら楽しくやっていきたいと思います」と話してくれた。

最後に、“アメリカ版所ジョージ”とか言われませんかとぶつけてみた。「言われます。そろそろ会うべきじゃないかと思っていますので、いつか会えるような動きはあるので、いつか会いたいですね」。

厳密に言えば、アメリカ人の普通のライフスタイルを日本で実践しているのが所ジョージなわけで、同氏は車好きなアメリカ人として普通にカリフォルニアで暮らしているだけなのだが。