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文:岩見旦
6600万年前、当時隆盛を極めていた恐竜が絶滅した有力な理由として考えられている巨大隕石の落下。地球の環境を一変させてしまうほどの衝撃をもたらした。現在でも巨大隕石の衝突による人類絶滅の恐怖は拭い去られておらず、幾度となく映画などで描かれてきた。
実は3カ月前、太平洋に巨大隕石が墜落した。その威力は、なんと広島に落ちた原子爆弾の10倍。大ニュースだったのにも関わらず、あなたが知らなかったのも無理はない。実は誰にも気付かれていなかったのだ。
昨年12月、ベーリング海峡上空に巨大隕石が飛来
昨年12月18日、ロシアのカムチャツカ半島の沿岸に近いベーリング海峡上空に巨大隕石が飛来した。オックスフォード大学の気象学者サイモン・プラウド氏は、自身のTwitterに、その様子を捉えた気象衛星ひまわりの画像を投稿した。赤い円で囲まれた部分が隕石だ。
プラウド氏の別のツイートでは、オレンジの火を放つ隕石の様子をカラーで見ることができる。
この隕石の爆発エネルギーは、TNT火薬173キロトンに相当すると推測されている。これは広島原爆10倍に相当し、過去30年観測された中で2番目の大きさだ。NASAの惑星防衛担当官のリンドリー・ジョンソン氏は、この規模の隕石爆発は100年に2〜3回しか起こらないと語っている。
ちなみに最も大きな規模だったものは、2013年ロシアのウラル地方に落下した「チェリャビンスク隕石」だ。
このときは監視カメラやスマホカメラ、ドライブレコーダーなどで撮影されたが、今回は太平洋上空の遠隔地であったため、ほとんど気付かれなかったのだ。
秘密裏に行われている核実験を検知するセンター網が感知
それでは目撃情報がないにも関わらず、なぜ隕石の存在がわかったのだろうか? 今回の隕石の観測に成功したのは、カナダのウエスタン大学の流星研究者ピーター・ブラウン氏。秘密裏に行われている核実験を検知するために作られたセンサーのネットワークが、この隕石爆発で発生した低周波を感知。今月、ブラウン氏が昨年12月のデータを調べたところ、偶然発見したのだ。
こんな大規模の隕石をあらかじめ検知できていなかったのは、よくよく考えると恐ろしいことだ。突然私たちの頭上に巨大隕石が迫っていたということがあるかもしれないのだ。NASAは2020年までに140mを超える隕石の90%を特定する計画を立てているが、30年以上かかる可能性もあるという。