Photo By Shutterstock
文:岩見旦
麻生太郎財務大臣は4月9日、2024年をめどに一万円札、五千円札、千円札の紙幣を全面的に刷新すると発表した。新しい紙幣の肖像画について、一万円札は実業家の渋沢栄一、五千円札は教育者の津田梅子、千円札は医学者の北里柴三郎にそれぞれ変更される。
しかし、この新しい紙幣のデザインについて、ネット上では「ダサい」「重厚感がなくなった」など、不満の声も挙がっている。社会学者の古市憲寿氏も、肖像画に関して「新紙幣、キャラクターや絵画、名所旧跡を含めれば候補は無限にある訳でしょ。いい漫画家も、いいアーティストもたくさんいる国で、これはあり得ない」とツイートし、不服の様子。
偽造防止などの観点から、日本はもちろん海外でも、紙幣には人物が描かれることが多い。しかし、そんな常識に意義を申し立てるユニークな紙幣が注目を集めている。
オランウータンが描かれたインドネシア紙幣がSNSで大評判
あるTwitterユーザーが紹介したのは、インドネシアの旧札。そこには何とオランウータンが鎮座。9日に投稿されたこのツイートは、現在約7000件ものリツイートを獲得している。
「かわいい!」「ポージングがめちゃくちゃいい」「別に人の顔じゃなくてもいいよな」などのコメントが寄せられ大評判だ。
世界の動物が描かれた紙幣
実は海外には動物たちが紙幣の顔になっている国が多数ある。文鉄・お札とコインの資料館から引用し紹介する。
南アフリカ共和国の旧札には、シロサイ、ゾウ、ライオン、バッファロー、ヒョウと5種類の動物が描かれている。
南アフリカ共和国 10ランド券
広大な大自然が特徴の東アフリカの国タンザニアの紙幣にも、ライオン、クロサイ、アフリカゾウと、巨大獣が顔を揃えている。
タンザニア 2000シリング券
タンザニア 5000シリング券
タンザニア 10000シリング券
自然豊かな南米の国スリナムの旧札には、チャバラエボシゲラ、ムナグロマンゴアハチドリといった珍しい鳥類が登場。
スリナム 5ギルダー券
スリナム 10ギルダー券
マダガスカル共和国の旧札は、クロシロエリマキキツネザルを採用した。この島の熱帯雨林だけに生息しているキツネザルの仲間だ。
マダガスカル共和国 1000アリアリ券
紙幣の肖像画にその国で有名な人物を起用することで、愛国心や尊敬の念を高める効果があるとされている。一方、肖像画に動物が用いられる理由は、その国の社会的・政治的背景が複雑で、人物を描くことが難しいといった事情があるようだ。
南アフリカ共和国では、アパルトヘイト撤廃後に人物の採用を避け、上記の5種類の動物が描かれることになったという。2012年には、政治家のネルソン・マンデラが肖像画に起用された。
不満の声が挙がりつつも、紙幣の肖像画に人物を採用できる日本は、やはり平和なのかもしれない。