文:岩見旦
今から5000万年前、陸地で生活していたパキケトゥスは、その後水中で生活に適した進化を遂げ、現在のクジラとなった。
それ以来、クジラは哺乳類であるにも関わらず、陸地で生活していない。しかし、そんな自然の摂理に反するミステリーが話題となっている。
ジャングルの中で巨大なクジラが打ち上げられているのが発見されたのだ。
南極にいるはずクジラがマングローブの茂みの中に出現
2月22日、ブラジル北東部に位置するアマゾン川の河口にあるマラジョ島で、ザトウクジラの死骸が現れた。水辺から15メートルも入ったマングローブの茂みの中で、地元の漁師が見つけた。
クジラは1歳程度のオスとみられる赤ちゃんで、体長は8mほど。発見されたときには、すでに死後4、5日経過しているという。
ザトウクジラはブラジル沖の大西洋に生息しているものの、この時期は遠く離れた南極に移動している。なぜ2月にクジラが出現したのか、謎を呼んでいる。
ガスで膨らんだクジラが高潮で流されたか?
地元の環境保護団体によると、このクジラは海の中で迷子になり、飢餓などの理由により死んだのではないかとのこと。クジラの死骸が高潮に流されて、漂流したのではないかと予想している。
「この季節は、高潮が1日に2回あり、水位は4mにも達する。洪水がマングローブを包み、世界中の船の残骸などたくさんのゴミが運ばれてくる」と、保護団体の専門家。「クジラの死骸が腐敗したガスで膨らんでいることも、マングローブの森に運ばれた理由として一致する」とも。
このクジラがどこからやってきたのかを突き止めるため、DNA検査を実施。専門機関が調査し、20日以内に死因などを発表するという。
座礁したクジラの胃の中からプラスチックごみ6キロ
クジラの座礁のニュースというと、昨年11月に痛ましいニュースが報じられた。
昨年11月18日、インドネシア中部スラウェシ島の海沿いに、1匹のマッコウクジラが流れ着いた。死骸を解剖してみると、胃の中から115個のカップ、25枚のビニール袋、複数のペットボトルなど、約6kgに上る大量のプラスチックごみが見つかった。
クジラは高度な知能があるだけではなく、人間特有とされてきた自意識や社会文化なども備わっていると指摘する声もある。明日は我が身とは言わないまでも、クジラに降り注いでいる不思議な出来事や悲惨な事件は、いつか人間に降り掛かってくると警戒した方がいいのかもしれない。