EVENT | 2019/02/28

社内不倫がバレた!想定されるリスクと対応策は?【連載】FINDERSビジネス法律相談所(9)

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日々仕事を続ける中で、疑問や矛盾を感じる出来事は意外に多い。そこで、ビジネスまわりのお悩みを解決するべく、ワールド法律会計事務所 弁護士の渡邉祐介さんに、ビジネス上の身近な問題の解決策について教えていただいた。

渡邉祐介

ワールド法律会計事務所 弁護士

システムエンジニアとしてI T企業での勤務を経て、弁護士に転身。企業法務を中心に、遺産相続・離婚等の家事事件や刑事事件まで幅広く対応する。お客様第一をモットーに、わかりやすい説明を心がける。第二種情報処理技術者(現 基本情報技術者)。趣味はスポーツ、ドライブ。

(今回のテーマ)
Q.数年間、社内で部下と不倫をしていて、このたび会社にバレてしまいました。今後の想定されるリスク、それからとるべき対応策について教えてください。(メーカー勤務15年/妻子持ち)

不倫相手の第1位は「職場の人」

不倫トラブルによる相談の中でも、相手が職場の人であるというケースは多いです。最近ではインターネットやSNSの登場で、ネット経由で出会った相手との不倫が多くなってきてはいるものの、現在でも各種調査で不倫の相手は「職場の人」が1位となっています。

「職場の人」には、上司と部下、同僚同士、接点はなかったものの社内イベントなどで急接近した社員同士など、さまざまな関係がありますが、特に上司と部下というパターンは多いようです。

もっとも不倫によって引き起こされる結末は、相手が職場の人のように頻繁に接点を持っているコミュニティの中での関係である場合、そうでない場合よりも多くの事態を引き起こします。

社内不倫のリスクは?

不倫の末の望まぬ妊娠、離婚、別居、子どもとの別れ、慰謝料請求、高額な手切れ金の請求、三者間での修羅場、不倫相手のストーカー化……といった男女トラブルの相談は後を断ちません。

このようなトラブルは、相手が職場の人でない場合でも、不倫の交際自体に付いてまわるリスクです。つい出来心からしてしまった不倫の交際も、それがトラブルに発展したときに、当事者は「こんなつもりではなかった」と後悔することになります。

職場での不倫はバレやすい

職場での不倫の場合、周囲にバレやすいという事情があります。不倫がバレるケースとしては、服装や態度が変わったなどの異変がきっかけになることが多いもの。本人達は隠しているつもりでも、職場の場合、2人の帰宅時間や休みの日などが同じだったり、職場の外で2人がいるところを頻繁に見かけられたりといったきっかけから、周囲が不倫を察知しやすい環境にあると言えます。

さらには、職場の同僚などに不倫交際を相談してしまうことも、職場での不倫がバレるきっかけとしては多いのです。つまり、職場での不倫自体、不倫が会社にバレるリスクも高いわけです。

出世できなくなったり、飛ばされたりする可能性も

職場での不倫には、いくつかの職場特有のリスクもあります。一番大きなリスクとしては、周囲からの信用を失い、結果として人事査定に影響するというリスクです。

人事権を握る者からすれば、すぐに部下に手を出す可能性のある人と、そのような心配がない人であれば、どちらを昇進させたいと思うでしょうか。社内に昇進基準などが設けられていたとしても、最後に判断するのは感情を持つ人間ですから、昇進には少なからずマイナスに影響するでしょう。

また、職場での不倫の場合、それが周囲にバレることによって、周囲の人間が気を遣わなければならなくなります。「不倫をしているような人たちと一緒には働きたくない」と思うのは自然な感情です。

不倫によって職場に悪影響を与えてしまい、職場の業務に支障が出るようになると、結果として望まない部署や勤務地へ転勤させられるといったリスクも大いにあります。

減給・出勤停止・降格処分の可能性もある

職場内での不倫により、会社からの懲戒処分として、減給や出勤停止、降格といった処分が下される可能性もあります。会社が不倫の当事者に懲戒処分を下すにあたっては、会社は懲戒処分について就業規則に定めておいた上で周知しておかなければなりません。懲戒事由として「社内の風紀を乱したとき」といった形で就業規則に定めている会社は多くあります。

職場内での不倫は、形式的には「社内の風紀を乱したとき」にあたりそうですが、処分が有効となるには、当該処分に社会通念上の相当性が認められる必要もあります。たとえば、1人の既婚男性社員が社内で複数の女性社員の部下と不倫関係を持ち、社内における人間関係のトラブルを発生させた」というようなケースでは、社会通念上、懲戒処分となる相当性があると判断される可能性が高いでしょう。

社内不倫による解雇もあり得る!

結論から言えば、可能性としては懲戒処分として解雇となるケースもあり得ます。もっとも不倫の問題はあくまでプライベートであって、犯罪行為というわけではないため、不倫そのものを理由に解雇すれば、多くの場合は会社の不当解雇となってしまいます。そのため、会社からの解雇が認められるケースはかなり限られたケースになります。

具体的に解雇される可能性があるのは、勤務時間中の不倫行為や社内での不倫行為があったなど、職務に関わりがある不倫関係と言える場合、それから職務上の地位を利用して不倫相手をあからさまに贔屓する、取引先に噂が広まってマスコミ報道されてしまった場合など、会社の評価に悪影響を及ぼす結果になる場合です。

こうしたことは、社内の風紀や文化によっても判断が変わってくるところでもあります。「仕事で結果さえ出していれば、私生活でどうしようと会社は関知しない」といった社風の会社もないわけではありませんから、一概には言えません。

たとえば、社内不倫が黙認されるような会社でも、ある人だけが不倫を理由に不利益な処分をされたとすれば、その処分は社会通念上の相当性を欠くものと判断されるでしょう。

社内不倫の対応策は?

以上に挙げたように、職場での不倫の場合、一般的な当事者間での不倫の末路のほかにも、会社との関係でさまざまな不利益を受けるリスクがあります。

職場での不倫がバレた場合、当事者の一方や双方が居づらくなって自主的に退職するケースも少なくありません。もしくは、会社から不利益な処分を受けるかもしれません。

一旦社内で明るみになってしまった不倫の事実は消すことはできませんが、事後的な対応策として、不当な処分を受けないための準備をして安心材料を求めることはできます。

もし仮に、会社から不倫を理由にクビだと宣言されたとしても、前述したように、そもそも単に不倫を理由とするだけの解雇は懲戒処分としては不相当であるケースが多いわけです。

会社からの懲戒処分に対しては、客観的な理由があり、「社会通念上の相当性があるか」という基準を満たすかをご自身のケースと照らし合わせて検討しておいてください。

会社の社風やこれまでの処分実績などを考慮した場合、どの程度の処分が下される可能性があるのか、弁護士などの専門家に相談することも有益です。人は「どうなってしまうのか分からない」という状況が一番怖いものです。相談した上で、自身のケースの場合に懲戒処分とするのが行き過ぎであることが分かれば、不安が緩和されるはずです。

実際に処分が下されてしまってから、処分の有効性を事後的に争うこともできます。この場合は紛争コストもかかりますし、事実上、職場復帰は困難となり、せいぜい金銭的解決で着地となることが多いため、一番は処分が下される前の段階でなんとか会社からの処分を回避することです。

個人的にお勧めなのは、会社に対して、今後2度と同じ過ちをしない旨の誓約書を提出するなど、誠心誠意、反省していることを自ら率先して会社に伝えてみることです。

会社としての処分を決定するのもまた、感情を持った人間ですから、当事者からの誠心誠意の反省の心が伝われば、社内での挽回のチャンスを与えてくれるかもしれません。


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