文:岩見旦
中島哲也監督の最新作『来る』が興行成績で苦戦
ヒットメーカー中島哲也監督の最新作『来る』。第22回日本ホラー小説大賞に輝いた澤村伊智の小説『ぼぎわんが、来る』を映画化した作品で、主演は岡田准一。黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡ら豪華キャストが脇を固めた。
昨年12月7日に封切られ、東宝の正月映画の大本命になると目されていたが、興行成績で苦戦し、その息が正月まで続くことはなかった。『来る』がコケた理由として、中島監督の独特の作風や、正月とホラー映画の相性の悪さなどが挙げられていたが、ここに来て新しい理由が注目を集めている。「ググラビリティ」を配慮しなかった説だ。
単語の検索されやすさ「ググラビリティ」
「ググラビリティ」とは、その単語の検索されやすさのことであり、「Google」と「ability(能力)」をかけ合わせたネットスラングだ。
映画を鑑賞する前に、その評判を知ろうとSNSで口コミを調べようとする人も多い。しかし、『来る』で検索すると、タイトルが一般動詞のため、作品の感想以外の投稿が大量に紛れこむ。作品の評判を正しく知ることが難しい。
都内2館の公開から全国300館以上に拡大した『カメラを止めるな!』は、SNSに溢れかえった絶賛評が異例のヒットのきっかけとなった。SNSが存在していなかったら、低予算映画の一つに留まっていただろう。SNSと映画のヒットは密接な関係にある。
ネーミングの際には、ググラビリティに配慮を
あるTwitterユーザーは1月25日、『来る』の興行不信の理由として、この「ググラビリティ」を紹介。この投稿は瞬く間に拡散され、約9,000件のリツイートを獲得。「確かに検索が難しい……」「一度検索して出てこなかったら、『まあ、いいか』ってなる」「同音異義語や既出固有名詞などに配慮するのがクリエイターの課題であり、難題でもある」などのコメントが寄せられた。
邦題がダサいと槍玉に挙げられがちが洋画のタイトルも、このググラビリティを考慮したケースも決して少なくないだろう。
お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」は、コンビ名を決める際、決定打となったのは当時ネット検索にかけたところ、結果が1件もヒットしなかったことだという。今後、映画のタイトルに限らず、商品名や社名を付ける際、この「ググラビリティ」がさらに重要視されるようになるのではないだろうか。