ITEM | 2018/10/19

来週発売のiPhone XRは「ただの廉価版」じゃない! XS・XS Maxとどう違うかを改めておさらい

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今期発売される新型iPhoneのもう1機種、6色のカラーバリエーションを揃えた「iP...

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今期発売される新型iPhoneのもう1機種、6色のカラーバリエーションを揃えた「iPhone XR」の発売が10月26日に迫った。予約注文は19日に開始されている。イエローやブルーといったビビッドカラーを選べるiPhoneの登場は、2013年に発売された「iPhone 5c」以来のこと。カジュアルな服装にも似合いそうなその外観に合わせ、中心価格帯も10万円以下に抑えられていることから、iPhone Xから正常進化したiPhone XS/XS Maxとは違った魅力を持つモデルが現れたと注目を集めている。

伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。

iPhone XRはiPhone 5cの再来なのか?

カラフルな6色のボディカラーを揃えたiPhone XRが発表された時、長年iPhoneを利用する熱心なファンの多くは「なんでまた?」と疑問を感じたのではないだろうか。iPhone XRと同様に、カラフルなボディカラーを採用した廉価版のiPhone 5cは、歴代iPhoneの中でも売り上げが伸びなかったことで知られており、成功したとはいえないモデルだったからだ。にもかかわらず、なぜAppleは似たようなコンセプトのiPhone XRを発売したのだろうか。

iPhone 5sとiPhone 5c( Image by Apple)

そこで、iPhone 5sとiPhone 5c、iPhone XS/XS MaxとiPhone XRの関係性の違いを比較してみた。

iPhone 5sの廉価版として登場したiPhone 5cが搭載するシステムチップは「AppleA6」。iPhone 5sが採用した「AppleA7」の一世代前にあたり、iPhone 5と同じものだ。

iPhone 5cのメインカメラは、画素数こそiPhone 5sと同じ800万画素だが、採用しているレンズのF値はf2.2ではなく、iPhone 5と同じf2.4。

iPhone 5sが指紋認証のToch IDを新たに搭載しているのに対し、iPhone 5cでは省かれている。

こうしてiPhone 5sとiPhone 5cの主要なスペックを比べてみると、iPhone 5cは一世代前のiPhone 5とほぼ同等の性能ながら、外観を若者や女性に好まれそうなカラフルなものへと変えることで、新たなユーザー層の開拓を狙ったものといえるだろう。

XS/XS Maxとの最大の違いは画面とカメラ

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iPhone XS/XS MaxとiPhone XRの最も大きな違いは、前者がSuper Retina HD(有機EL)ディスプレイを採用しているのに対し、後者はLiquid Retina HD(液晶)ディスプレイを使っている点だ。

有機ELディスプレイはひとつひとつの素子が自発光するため、裏からバックライトで照らしている液晶ディスプレイに比べて、色鮮やかな映像表現と圧倒的なコントラスト比(※)が得られ、特に黒の表現は優れているとされる。

(※)Super Retina HD(有機EL)のコントラスト比は、1000000:1。Liquid Retina HD(液晶)のコントラスト比は、1400:1。

解像度も、5.8インチのiPhone XSが2436×1125ピクセル解像度(458ppi)、6.5インチのiPhone XS Maxが2688×1242ピクセル解像度(458ppi)であるのに対し、6.1インチのiPhone XRは1792×828ピクセル解像度(326ppi)と若干低い。

iPhone XS/XS MaxとiPhone XRの、もうひとつの差別化要因になっているのがカメラだ。

iPhone XS/XS Maxが広角/望遠のデュアルレンズを採用しているのに対し、iPhone XRは広角のシングルレンズのみ。カメラ好きにはこの差は大きいかもしれない。

だが、iPhone XRでも深度コントロールによる美しいボケを生かしたポートレート撮影はできるので、望遠レンズを特に必要としないならiPhone XRでも撮影面で不満を感じることはなさそうだ。

iPhone 5cの教訓は活かされているのか?

同じカラフルボディの廉価版として登場したiPhone XRとiPhone 5cだが、性能面における上位モデルとの関係は大きく異なる。

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iPhone 5cが一世代前のiPhone 5と同じチップを搭載しているのに対し、iPhone XRはiPhone XS/XS Maxと同じA12 Bionicを搭載しているのだ。

2つの性能コアが負荷の高い演算タスクを、4つの効率コアが日常的なタスクを処理するA12 Bionicは、iPhone XのA11 Bionicと比較して、最大15%高速な処理能力と、最大50%少ない消費電力を実現。ゲームやビデオ編集などに影響するグラフィック性能に関しても、最大50%の高速化を達成している。

また、リアルタイムの高度な機械学習のために作られたNeural Engineも搭載。A11 Bionicと比べて最大9倍高速な毎秒5兆の演算処理により、臨場感あふれるAR世界の体験や高度かつ高速な写真検索機能などを実現している。

シングルレンズで美しいボケを生かしたポートレート撮影を可能にしたのは、先進的な深度エンジンを搭載した画像信号プロセッサによるもの。明暗差が激しい状況下でもダイナミックレンジの広い映像表現を可能にしたスマートHDRの効果も見逃せない。

深度マッピング(Image by Apple)

iPhone XRには、iPhone Xで好評を博した最先端の顔認証システムFace IDも搭載されている。高度なTrueDepthカメラシステムやSecure Enclave、Neural Engineなどによって実現されるFace IDは、スマートフォンの顔認証において最高レベルの安全性を獲得。しかも、さらに早く、さらに簡単に使えるよう改良が加えられている。

同じカラフルボディでも質感が異なる

iPhone 5cと同様にカラフルなボディカラーを揃えたiPhone XRではあるが、その質感がまったく違うことにも着目したい。

iPhone 5cが樹脂製ボディを採用しているのに対し、iPhone XRでは、7層にわたる着色プロセスを経ることで深くリッチな色あいを持たせた背面ガラスと、航空宇宙産業レベルの精密加工が施されたアルミニウム製フレームを、酸化皮膜処理によって色調を揃え一体感を持たせている。

背面がガラスなので、もちろんワイヤレス充電にも対応している。

このようにiPhone XRは、iPhone XS/XS Maxの廉価版というよりは、iPhoneならではの最先端の機能を、従来のiPhoneの印象とは異なるカラフルなボディで楽しむことができる新ジャンルの製品と捉えた方がよさそうだ。

最先端のiPhoneならではの優れた機能・性能を、高級感あふれるカラフルなボディで利用することができる。そこに、iPhone 5cとは似て非なるものであるiPhone XRの魅力があるといえるだろう。


Apple iPhone XR