CULTURE | 2018/10/19

オリンピックに向けて気運を高めるために。新宿御苑を夜間解放し、歩きながら光と音を楽しむイベント「GYOEN NIGHT ART WALK 新宿御苑 夜歩」

文・写真:立石愛香
新宿御苑、公園全体を使った大規模イベントは初めての試み
新宿御苑・OPEN PARK プロジェク...

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文・写真:立石愛香

新宿御苑、公園全体を使った大規模イベントは初めての試み

新宿御苑・OPEN PARK プロジェクト実行委員会(一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン(以下CVJ)/株式会社ライゾマティクス(以下ライゾマ))は、10月12日(金)夜の新宿御苑にて、『GYOEN NIGHT ART WALK 新宿御苑 夜歩(よあるき)』と題し、「運動」をテーマに光と音によるインスタレ―ションを展示した回遊イベントを行った。通常、夜間は立ち入ることができない自然豊かな新宿御苑のおよそ2キロのコースは、一夜限りのミュージアムに変貌した。

東京の中心に位置し、2020年東京オリンピック・パラリンピック会場の新国立競技場の隣という新宿御苑。ここを日本文化発信の拠点とし、多くの方に楽しんでもらえる空間を作りたいとプロジェクトは発進した。

当日は約6,000名の来場があり、歩調を計算して作られた音楽に合わせて夜歩きを楽しんでいる姿が見られた。

100メートル以上の空間に滑走路のような演出を施している。

連続した光の造作“The Warp(ワープ)”を通り抜けると、時間の概念を越えてあたかもワープしたかのように感じることができる。

指向性の強いムービングライトとレーザーによって異空間の入口が出現。

レーザーを使って池の表面に文字を映し出す。

光とミスト(霧)によって 森の様相が様変わりし、さらに幻想的な世界へと誘う。

若手アーティストの作品をはじめとする関連プログラム

今まで見たことのない、新しい文化芸術に接してもらいたいと思い、現在話題性のあるフェスティバル等の出展経験がある3名の新進気鋭のアーティストによる作品展示も行われた。

会場で行われた記者会見で、ライゾマ代表の齋藤氏は「今回のような、大きな場所で表現するのを今後も支援して行きたい」と話す。

後藤 映則 Akinori Goto 

1984 年岐阜県生まれ、アーティスト。武蔵野美術大学卒業。代表作に時間の彫 刻「toki-」シリーズ。近年の主な展覧会に Ars Electronica Festival 2018 や THE ドラえもん展 TOKYO など。

藤元 翔平 Shohei Fujimoto 

1989 年生まれ。岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)卒業後、多摩美術大学情報デザイン学科へ編入。モジュール性や繰り返しの性質に着目し、それらから得られる視覚的パターンが及ぼす感覚を探求している。

Ryo Kishi 

2010 年東京大学大学院修了。技術やツールにこだわることなく現象に着目した 実験製作を行い、ARS ELECTRONICA など国内外の展示会で作品を発表。文化 庁メディア芸術祭新人賞など受賞。

車椅子ロードレースを VR で体感できる、「CYBER WHEEL」の体験試乗会

「一般社団法人 日本姿勢と歩き方協会」による、歩き方ワンポイントレッスンの様子

活用していなかった場所の可能性を広げる

左:主催の総合プロデューサー 井上 智治 一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン 代表理事/株式会社美術出版社  右:取締役会長 総合ディレクター 齋藤 精一 クリエイティブ・ディレクター/ライゾマティクス・アーキテクチャー代表 

通常、新宿御苑は16時半で閉園となり、夜間に立ち入ることはできない。都市の中心部をいかに有効活用していくかということは国や自治体の課題でもある。都市公園で今回のような大規模なイベントは前例がなかったが、

「これだけブラックアウトした場所が、東京のど真ん中にあるというのは、表現をする者からすれば奇跡の場所」(齋藤)

「夜間の新宿御苑に対するニーズが多いことがわかった」(井上)

と話す。今後の実施イベントの予定は現時点で決まっていないが、両氏は

「またこの様な素晴らしい機会があれば、新宿御苑(庭園)の良さをもっと引き出せるようなものを追求し、近隣の公共施設やさらには地方を巻き込んだものにもぜひ挑戦してみたい」(齋藤)

「オリンピック、パラリンピックはスポーツだけではなく、文化のイベントでもある。今回のように面白いイベントを通して気運を高めて行きたい」(井上)

として、新たな企画も立ち上げていきたいと語っている。

まだ先だと思っていた2020年東京オリンピック・パラリンピックを身近に感じることができた。