文・写真:立石愛香
主人公は「漫画家の夢に破れた男」
芥川賞受賞作家でお笑いタレントの又吉直樹氏が、毎日新聞の夕刊での連載小説を9月3日より始める。タイトルは『人間』。
又吉氏は、2015年にお笑い芸人の世界を描いた小説『火花』(文芸春秋)で第153回芥川賞を受賞。今回も、2作目の『劇場』(新潮社)に続く長編小説になる。
物語は、書き手である又吉氏と同年齢、38歳の東京で漫画家の夢に破れた男が、かつて同世代の仲間たちと過ごした日々をふり返るところからスタート。
8月7日に毎日新聞社で行われた記者会見では、「今まさに書いている途中なんですが、全貌が自分でもまだはっきりとは掴めてないというか掴もうとしている最中。僕はあまり器用じゃないので、新聞だからと意識をせず、書きたいことや風景みたいなものを書いていけたらいいかなと思っています」と抱負を語った。
毎日掲載される新聞小説という形態にチャレンジ
また、原稿用紙300枚程度で半年以上の連載を予定しているが、「新聞小説は自分が小説を書くスタイルとしては一番恐ろしい。経験がないですし。でも、わからないっていうのもすごく魅力的だなと思いました」と新しい挑戦に対しての前向きな気持ちを述べた。
太宰治の没後70年の今年、『人間失格』を彷彿とさせるタイトルで挑むことについては、「人間というかなり大きなテーマで、人間について語っていくのはすごく難しいと思うんですけど、いつか書いてみたいなと思っていました。太宰治の『人間失格』は僕が一番好きな小説でもあるので、頭の中のどこかに残ってはいたんだと思います」と話す。
ルミネtheよしもとから3回のステージを終えて駆けつけた。途中で紳士服の「AOKI」でジャケットと革靴を購入したという。
芸人としての活動も継続
また、執筆に専念するわけではなく、今まで通り芸人の仕事も並行していく。夜から朝にかけて書くことも考えられ、体調管理が心配されるが、「連載小説はもちろん、9月にコントライブも控えているので、今は体調の事を心配するよりは、常に稼動して頑張っていこうかなと思ってます。体調管理では、野菜はもちろん多めに、水分も多めに取っていこうと。スポーツジムにも1年前に入会しました。1回だけ行きました」と、全力疾走していく意気込みを笑いを交えて語り、会場を沸かせた。
毎日新聞東京本社学芸部長の勝田友巳氏からの「新聞小説というのは新聞にとっての顔ですので、読者が新聞の中面から読み始めるような作品を書いていただきたい」というエールに対しては「前作までと同様に、自分のちゃんと好きなものを作りたい。自分の中でも代表作というか重要な作品になるものを書きたいなと。全部出し切れたらいいなと考えてます」と最後まで書き上げる覚悟を語った。