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「出前」はもはや無視できないビッグマーケット!フードデリバリー世界戦国時代を征するのは誰?【連載】オランダ発スロージャーナリズム(7)
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  • 2018.11.15
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「出前」はもはや無視できないビッグマーケット!フードデリバリー世界戦国時代を征するのは誰?【連載】オランダ発スロージャーナリズム(7)

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吉田和充(ヨシダ カズミツ)

ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director

1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

Uber EATSは黒船になれるのか?

今からおよそ2年前の2016年9月末。Uber EATSというフードデリバリーサービスが、鳴り物入りでスタートしたのは記憶に新しいのではないでしょうか。日本では、さまざまな規制によりUberの元々のサービスドメインである配車サービス自体は実施できないようですが、Uberの後発サービスであるフードデリバリーは、大都市を中心に少しずつ市民の生活に定着しつつある、といった感じでしょうか。

つい先日も、あのスターバックスがUber EATSと提携して、デリバリーを始めるということを発表して話題になりました。

さて、このフードデリバリーサービス。ご存知のように従来、日本では「出前」というサービス自体は存在していました。そば屋さんから、お寿司屋さん、中華料理店や宅配専門のピザ屋などが存在していたこともあり、スマホを使って簡単に、好きなものが、どこへでも配達できる、というその利便性や新しさがイマイチ伝わらない面もあったかと思います。

しかし、世界の市場では、このフードデリバリーサービスは2000年代から徐々に興隆を見せています。おそらく、フードデリバリー産業の中では、むしろ日本のマーケットはまだまだ小さい方ではないでしょうか? 

ここオランダでも大ブーム。すっかり市民生活に定着しているように見えます。そこで今回は、オランダで圧倒的シェアNo.1のフードデリバリーサービス「Takeaway.com」をご紹介します。

オランダ証券市場に上場した2番目のユニコーン

極めてシンプルなアプリのオーダー画面

このフードデリバリーサービス。そもそもフードテックとも言われている、いわゆるIT系スタートアップでもあるのですが、日本ではUber EATSにより、少し知名度が上がってきたようにも見えます。しかし世界各国ではすでに非常に盛んで、日本での市場規模はまだまだ小さいのです。

そういう視点から見ると、Uber EATS自体も、実は決して大きくはありません。むしろ後発のサービスプロバイダーであり、世界各国では、多くのライバルたちがしのぎを削っているのです。ここオランダでも確かにUber EATSも見かけるものの、そのシェアはかなり小さいようです。

オランダの各種統計が掲載されているデータベース「statista」によると、2018年のオランダのフードデリバリーマーケットは約923億円。これは前年と比べると17.8%もアップしています。そして利用者はのべ560万人。こちらも前年に比べると13%以上増えているという、かなりホットなマーケットです

そんなオランダで見かけるフードデリバリーサービスは、2013年イギリス、ロンドン発のデリバルー。2014年ドイツのミュンヘン発で、2015年に別の会社に買われてベルリンに移転したフードラ。そしてUber EATS。日本の皆さんには、Uber EATS以外は馴染みがないかもしれません。ちなみに、ごく最近のニュースによるとフードラはオランダ市場から撤退する、と言われています。

しかし、この3社以上に実は圧倒的な存在感を誇るのが2000年にオランダで創業されたTakeaway.com。オランダ語では宅配を意味する「Thuisbezorgd.com」と表記されています。このTakeaway.comは、ヨーロッパを中心に9カ国でサービスを展開しており、オランダ、ドイツ、ベルギー、オーストリア、そしてポーランドの5カ国ではシェアNo.1の座を占めている、すでに立派な大企業です。

Takeaway.comの宅配自転車

実はこのTakeaway.com、すでに2016年にオランダアムステルダムの証券取引所に、日本円にしておよそ1,200億円で上場している立派なユニコーンなのです

これはオランダ発のスタートアップ企業でいうと、2番目のユニコーンと言われています(1番目はフェイスブック、Yelp、spotifyなどのグローバルサービスプロバイダーが使用している決済サービスのAdyne)。

もともとは、いわゆる電話注文で宅配を行っていたレストランから、ちょうどオランダでブロードバンドが普及した2000年過ぎくらいのタイミングに、ネットで注文できるようにスウィッチさせるようにして、サービスを拡大していったTakeaway.com.。その後、金融危機を挟むものの、スマホの普及、オランダにおける食や健康への関心の高まり、生活スタイルの多様化、そして引きこもりがちなミレニアム世代の台頭、オランダにおけるレストランの増加などが相まって、順調に業績を伸ばし続けています。

「フードデリバリー」ではなく「テックカンパニー」である

シンプルな地図表示。登録している飲食店の数でもTakeaway.comが一番多い。

そんなTakeaway.comは、自分たちのことを「フードデリバリーサービス」とは、あまり考えていないようで「テックカンパニーである」と言っています。

Takeaway.comはユーザーとレストランをつなぐプラットフォームですが、オランダでは、すでに99%の地域をカバーしています。なので、オランダの名物でもある、ポテトフライ一つからでもデリバリーしてくれます(実際、ポテトフライ専門店も数多く存在している)。

ウェブからスマホへの対応もいち早く行い、今ではAmazonなどのスマートスピーカーへの対応などの技術開発も行っているようです。さらに週末の夕方〜夜など、わずか数時間にヨーロッパ中から殺到するオーダーを効率的にさばくシステムを構築したり、デリバリーバイクの現在地表示に取り組むなどしているようで、いわゆる「そば屋の出前」からはまったく想像がつかない技術革新を行っています。テックカンパニーとして、ユーザーとレストラン双方にとって、利便性を高めるための技術開発を行っているのです。

実はこうしたデリバリーサービス。海外などで初めて訪れる土地では非常に重宝します。というのは、初めて訪れる場所では土地勘もなく、そのエリアの治安状況も分からない。そんな右も左も分からないエリアで食事を摂るのは、意外と苦労するもの。もちろん、そのお店が美味しいのかどうか?なんてまったくわかりません。言葉が通じなければ、なおさらです。そんな時に、こういうデリバリーサービスがあれば、レビューも出ているのではじめての土地でも安心。値段も明確で、天候が悪かったり、疲れ切ってホテルから出たくなくなったとしても、ホテルまで届けてくれるはずです。しかも場所によっては、遅い時間まで対応してくれる店も探せます。

こういう視点で考えると、日本でもインバウンド需要の高まりを考慮したうえで、改めて「出前」というサービスを設計したりすると面白いかもしれません。

さて、このTakeaway.comでは、実は今、新たな市場開拓を行っています。イスラエルの企業と組んで、企業向けにランチをデリバリーする、という新市場の創出を行っているのです

企業にとっては、毎日好みの契約レストランから新鮮な食事がオーダーできます。もちろん社内にキッチン設備を作ったり、調理人を雇う必要もありません。ランチの充実度が、その企業のレピュテーションを高める、なんてこともありますよね。

もちろん、そこで働く従業員にとっては自分で好きな料理を選べます。また、こうした費用も、福利厚生の一環として会社が負担したりすることで、従業員の満足度が高まります。

企業周辺のレストランにしてみれば、毎日ある程度のまとまったオーダーが見込めるようになります。

そしてTakeaway.comにとっては、例えば企業と年間契約などをすれば、あらかじめ計算の立つ収入が見込めることになります。この仕組みが広がってくると、フードデリバリー会社にとっては「企業のランチ」という今までは顕在化していなかった新たなマーケットが生まれることになります

ユーザーとレストランをつなぐプラットフォーマーとして、テクノロジーの力を使って新たな市場を作ることが出来るのです。この辺りが、さすがユニコーンである所以だな、と感じます。

もともと屋台などが盛んで外食の料金が安く、家庭で自炊をするという文化があまりない東南アジアなどでもフードデリバリーは盛んです。

アムステルダムに3店舗あり地元っ子からも大人気のバッテンラーメンは、店によってはオーダーの4分の1から3分の1程度がデリバリーのオーダーであるとのこと。そのため宅配先で熱々のラーメンが食べられるようにデリバリー仕様のラーメンも準備しているということです。

さらには、フードデリバリーを当初からレストランのインフラの一部と考えて、無店舗型のレストランなども存在するようになってきています。初めからデリバリーオンリーで、しかもそのデリバリーさえ自社で抱える必要がないのです。

日本でも生活スタイルの多様化、一人暮らし世帯の増加、家庭内での孤食が増えているといった現状を考えると、フードデリバリーは今後もっともっと盛んになるかもしれません。今後、注目してみてください。


Takeaway.com

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