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主流のメディアはInstagram? インフルエンサーマーケティング最前線。パイオニア企業リデル社の戦略を直撃!
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  • 2018.10.26
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主流のメディアはInstagram? インフルエンサーマーケティング最前線。パイオニア企業リデル社の戦略を直撃!

インターネットの進化とともに、あらゆるマーケティング手法が登場する中で、近年注目を集めるのが、インフルエンサーとSNSを活用したインフルエンサーマーケティングだろう。

今回、お話を伺ったのは、そのパイオニアとして、企業とインフルエンサーのマッチング・プラットフォーム「SPIRIT」を手がけるリデル社 代表取締役CEOの福田晃一氏。大手メディアにも負けないほどの影響力を持つインフルエンサーの価値とは? マーケットの最新動向について話を聞いた。

聞き手・文・構成:庄司真美

福田晃一

リデル株式会社 代表取締役CEO

1979年高知県生まれ。読者モデルを活用した口コミマーケティングが評判を呼び、2006年、芸能プロダクションとマーケティングによるハイブリッド企業である株式会社ツインプラネットを創業。人気タレントの輩出や多数のトレンドを創出する。多彩な戦略で「ヒト売れ」なる消費トレンドを築き、2014年にインフルエンサーマーケティングのパイオニアとなるLIDDELL株式会社を設立。2万人のインフルエンサーが活躍するプラットフォーム「SPIRIT」をはじめとする多様なC to Cマーケティングプラットフォームを事業化し、価値観のインフラへと成長するSNS時代に即したソーシャルオーソリティー事業を推進。著書に『買う理由は雰囲気が9割』、『影響力を数値化 ヒットを生み出す[共感マーケティング]のすすめ』(2018年12月6日発売予定)がある。

かつての “ギャルマーケティング”と根本は同じ

―― 現在のInstagramを主体としたインフルエンサーマーケティングのビジネスに行き着くまでの経緯について教えてください。

福田:20年近く前にリデルの前身となる会社「ツインプラネット」を創業し、当時から読者モデルと呼ばれる子たちをマネージメントしながら、大学生マーケティングのビジネスを展開していました。ちょうど2000年頃の話で、芸能プロダクションからしてみたら、「読者なの? モデルなの?」という絶妙な立ち位置の存在が生まれた時期でもありました。

僕たちは彼女たちの影響力に価値があると考え、企業のサービスプロダクトにつながるようなマーケティング・ビジネスを展開し始めました。そこから試行錯誤した結果、読者モデルから本職のモデルへ、そしてタレントへと育って行ったので、プロダクションとしても成立するようになり、同時に読者モデルのファンに対してもマーケティングを展開するようになりました。そうやって10年以上かけて蓄積してきたナレッジやノウハウのデジタル化を試みた結果、設立したのがリデルという会社です。

設立当時、Instagramをはじめとするソーシャルメディアが台頭してきたのを見て、かつての読者モデルブームの現象と似ているなと思ったのです。当時は、渋谷という若者を代表する街に“ギャル”と呼ばれる人たちが大勢現れて、「チョベリグ」みたいな独特な流行語を作っていました。ネットの世界でも同じことが言えて、影響力を持つ人たちが生まれる場には、トレンドや新しい流行語も生まれ、ヒット商品がどんどん生み出されるのです。

SNSは一見デジタルではありますが、その先には生活者のリアルな体験情報がないと成り立ちません。そうしたものを共有して共感し、交流し続けるサービスがSNSです。だからこそ、そこを主戦場にしてマーケティングしていこうと考えました。

―― 媒体が違うだけで、かつての“ガールズ・マーケティング”は現在のInstagramを主体としたインフルエンサーマーケティングの本質と同じということでしょうか?

福田:そうですね。ただ、タレントのマネージメントをしてプロデュースしていくだけだと、どうしてもそこに依存していきますので、そうではなく、当初からクリエイティブを大事にしながら、芸能とマーケティングのハイブリット型のビジネスモデルを目指してきました。

―― 昔、読者モデルが登場する雑誌の編集者に聞いたのですが、ロケ当日の朝は読者モデルにモーニング・コールをするのが必須で、起こさないと誰も来なかったそうです(笑)。タレントが生業じゃない学生の読者モデルと仕事すると、それこそ社会常識が通じないので大変だったということですが、その点はいかがでしたか?

福田:まさにはじめはそんなことの連続でしたね(笑)。彼女たちは特有のコミュニティにおいては絶大な影響力はあっても、社会人、ビジネスパーソンとしては子どもと言えます。社会人としての常識やルールが未成熟で、一般常識的なコミュニケーションができない子が多いのです。当時、彼女たちのような読者モデルたちは、渋谷からあらゆるトレンドを作り出して発信を続けていましたが、大手企業や大手代理店は遠くから傍観していました。なぜなら、手をつけられないから(笑)。しかし誰も手をつけないからこそ、大やけどするリスクはありますが、リスクを回避できる術を身につければビジネスとして成立するということですね。そういう意味では、当時僕らは独占マーケットだったとも言えます。

―― 社会人として未熟な読者モデルたちをマネージメントする上で気を遣っていたことはありますか?

福田:クライアントが言っていることを一旦咀嚼して、等身大の表現に再構築し、彼女たちにわかりやすく伝えることは徹底していまいした。まるで母親のように、彼女たちが食べやすいように細かくちぎって「はい、どうぞ」と食べさせるようなイメージです(笑)。そのフィルター役として重宝されることで、次第に読者モデルたちからの信頼関係も構築されていった経緯がありますね。

当初、芸能プロダクションはやっていませんでしたが、読者モデルとして活動した先に次のアウトプット先がないので、テレビなどのメディアとのパイプを敷いたり、企業や行政と連携したりして、彼女らの影響力を事業にも活用できるようにしました。つまり、自立を促していったかたちですね。だから、当時やっていたことは今やっていることと同じなんです。プロダクションという名の読者モデルの育成・教育機関だったのかもしれません。僕たちもベンチャーでわからないことだらけでしたから、彼女たちと一緒に試行錯誤しながら育っていったかたちです。

今も昔も若い女性がトレンドを生み出す

―― これまで手がけてきたマーケティング手法で一番強かったというか、“効いた”手法は何でしたか?

福田:読者モデルや女子高生マーケティングで一番強かったのは、口コミでした。影響力のある誰かが「これいいよ」と発信したら、それが一気に広がっていくのです。コンビニのお菓子を例にとると、「これを食べると好きな人と両想いになれるらしいよ」というサブストーリーがあるだけで商品が爆発的ヒットにつながることもありました。なぜ一気に広まったかといえば、「おいしい」上に、「両想いになれるかも」という人に勧めやすいフックがあったからです。

当時の口コミをソーシャルメディアに置き換えれば、Instagramのハッシュタグやフックとなる投稿になるわけです。それをみんなで共有して連鎖させていくかたちが、すごく似ていると思いました。もちろん、そのお菓子を食べた人が実際に好きな人と両想いになれるわけではありませんが、想像する余白があるストーリーが大事なのだと思います。

インフルエンサーは大勢の読者を抱える個人メディアの編集長

―― 福田さんの著書『買う理由は雰囲気が9割』(あさ出版)によれば、インフルエンサーは、1つの投稿のために何十枚も撮影し、さらに1時間近くかけて画像加工するということですが、もはや素人ではなく、やっていることはプロの編集者やフォトグラファーと同じですよね?

福田:そうなんです。たとえば、今あるウェブメディアにしてみても、20年くらい前では雑誌編集者からしてみたら、「ウェブでファッション雑誌って何?」という感覚だったと思いますし、ウェブメディアで雑誌と同様な権威を持つ編集長という存在はあり得ませんでした。それと同じ状態が現在起きていて、当時は出版社が作るものだけが雑誌メディアでした。そこから派生するのが編集者であり、ライターであり、記事だったのですが、インターネットの普及によりみんながメディアを持ち、個人も法人もみんなが編集長になり始めたのです。さらにコモディティ化したInstagramで個人がメディアを作っているのが現在の状況です。たとえばあるインフルエンサーは、Instagramで10万人のフォロワーがいます。雑誌に置き換えれば、10万人の読者がいるということです。昨今、10万人の読者が付く媒体を作るのって大変なことですよね。

―― 今どき名の知られた雑誌でもそこまで部数は出ていなかったりしますね(笑)。インフルエンサーの質や能力についてはどのように捉えていますか?

福田:媒体のブランディングに質は不可欠ですが、自分のメディアを持ち、編集者と同じようにプロ意識やクラフツマンシップ、プロデューサー意識を持ってやっているのが、インフルエンサーと呼ばれる人たちです。もちろん、フォロワー数はひとつの目安にはなりますが、ただ単にフォロワーが多いだけのインフルエンサーでいいというわけではありません。社会と関係していける常識を持ち得て、継続的にしっかりとフォロワーとの関係性を構築できる能力が必要です。つまり、クライアントや社会、フォロワーとも良好な関係性を築けた人が真のインフルエンサーになれるのです。

ですから弊社では、プロ意識のないインフルエンサーに対しては、「あなたたちはプロとして責任を持って自分のメディアを持つ自覚はありますか?」というふうに強く問うこともあります。影響力があればあるほど、ひとたびネガティブに転べば炎上することもありますから。

インフルエンサーの大淘汰時代へ突入!

インフルエンサーと企業のマッチング・プラットフォーム「SPIRIT」。

―― インフルエンサーと企業をマッチングするプラットフォーム「SPIRIT」や「SPIRIT TEENS」について教えてください。

福田:弊社のサービスの提供の仕方としては、プラットフォームを介するケースとそうでないケースとがありまして、クライアントから依頼を受けて案件にふさわしいインフルエンサーを人力で提案するのがいわゆるアナログなパターンです。

プラットフォームは2つあり、インフルエンサーと企業のマッチング・プラットフォーム「SPIRIT」とマイナビに提供している10代限定のインフルエンサーとのマッチング・プラットフォーム「SPIRIT TEENS」があります。

「SPIRIT TEENS」のインフルエンサーの登録は10代限定で、ギャランティの代わりにポイントが付与され、貯まったポイントを商品に変えられる仕組みです。年間10万ポイント以上変換する場合は保護者の許諾が必要になります。

「SPIRIT」は20歳以上のインフルエンサーを対象とし、口コミレビューサービスのように、各インフルエンサーのページにコメント欄があって、5段階で評価される仕組みです。たとえばインフルエンサーと仕事をした時に、期日を守らなかったり、ハッシュタグの修正依頼が来たときに迅速に対応しなかったりすると評価が下がります。さらにインフルエンサーごとに過去の実績が掲載されて可視化されるので、企業が選びやすいようになっているのが特徴です。

―― 登録しているインフルエンサーの男女比率は?

福田:登録しているインフルエンサーの9割は女性で、圧倒的に女性が多いです。今も昔も女性がトレンドを作り、口コミで広まるのが世の常だからでしょう。男性も少しずつ増えていて、男性のインフルエンサーはエンゲージメント率が女性の倍ほど高いのが特徴です。元々絶対数は少ないのですが、よりフォロワーに近いコミュニティ形成ができていることが要因と思われます。自分と遠すぎない憧れの対象としての男性インフルエンサーが登場しています。

女性のデータを見ると、「食べ物」や「トラベル」「ファッション」「ビューティー」のジャンルでエンゲージメント率が高いです。ところが男性はその倍のエンゲージメント率になっています。注目するべきは、高校生男女のエンゲージメント率で、圧倒的な高さを見せています。女性のフォロワーには、同じ属性や感性を持つ人だけでなく、アイドル的な人気で視線を注ぐ男性ファンも入り混じっていることが多いのですが、その点、高校生のインフルエンサーのフォロワーは、同じ属性の高校生だらけです。

そのため、ティーンエイジャー向けの商材をPRする場合、高校生のインフルエンサーは非常に影響力があります。彼らはまだまだコミュニティが狭いので、自分たちのコミュニティ内で影響し合っているということでしょう。青春時代ならではの感性溢れる投稿が支持されるので、それに共感できる世代だけで完結しているのです。大人になればなるほど多様性が出てきて、フォロワーも多様化していくかたちですね。

―― 現在「SPIRIT」を利用している企業について教えてください。 

福田:現在、ご利用企業は1600社を超えていますが、ジャンルはファッション、ビューティーが35%で、メディア、製薬・医療、金融などさまざまな業界に利用いただいています。毎月、法人向けには、1回30〜40名を集めたセミナーやワークショップを開催していますが、ビジネスパーソン向けのセミナーに講師として呼んでいただくことも多くあります。そこで、インフルエンサーマーケティングに対して懐疑的な企業の決裁者の方にもアプローチできていると考えています。

また、法人向けには、インフルエンサーとマッチングしやすくなるコツについてお伝えしています。感覚としては、求人と同じです。たとえば、依頼する案件とインフルエンサーのアカウントの世界観が合わなければ、ギャランティが高くても手を挙げるインフルエンサーは少ないのです。さらに、表現の幅を限定してしまうと、インフルエンサーとしては、自分らしさを表現できないため敬遠してしまいます。インフルエンサーの表現に自由度を設けてあげることが大事で、「撮り方は自由。ただし、商材のコンセプトが“Enjoy!”なので、それに合った撮り方で、ご自身のフォロワーに響く表現の仕方でお願いします」といった依頼の仕方であれば、インフルエンサーは工夫してクリエイティビティを発揮しようと思うのです。

―― 聞けば聞くほど企業と個人のインフルエンサーとの橋渡しが重要ですね。

福田:本当に昔やっていた読者モデルの広告マーケティングとかぶりますよ(笑)。彼女たちの世界観ややりたいことに敬意を持って、より添うかたちでサポートしますが、かといって甘やかすわけではありません。著しくクライアントからの評価が低下したら退会していただくインフルエンサーもいます。

去年8月のタイミングでインフルエンサー会員は2万人に到達し、この先3万人、5万人と量的な成長を続けても、既存の2万人がきちんとビジネス感覚や社会常識を持った質の高いインフルエンサーとして推移できなければ意味がありません。ですからまずは、既存の2万人をお手本となるようなインフルエンサーとして育成するために、会員の上限を2万人に設定することにしました。1年がかりで半分に絞り、質を凝縮して精鋭部隊を作る計画です。

それからインフルエンサーにプロ意識を持ってもらうために「インフルエンサー検定」を作りました。ありがたいことに会員申請は後を絶たず、退会いただいては申請があるかたちなので、まだ1万人にまで絞れてはいませんが、淘汰される中で、優良なインフルエンサーの割合が増えてきています。

―― 個人が企業とつながってビジネスが成立するプラットフォームは、働き方が多様化している時代に合っていますね。

福田:まさにそうですね。世界的な有名ブランドからの仕事の依頼が個人に来るなんて、これまでの常識で考えるとあり得ない事態ですよね。これだけ柔軟に個人のパラレルワークが可能な時代なのに、一部のインフルエンサーのマナーの悪さ、社会性のなさによって業界全体が疲弊してしまったらもったいないと考えています。

そのため、まずは優良なインフルエンサーを育成して、このマーケティング手法には健全性があって、しかも効果的であり、経済効果もあるという見本を作りたいと思ったのです。

福田:今のインフルエンサーたちについても、まだまだ世間からの適切な認識がないからこそ、しっかり自覚と責任、ルールとモラルが必要だということを教育していきたいと考えています。

マスメディア化するInstagramではシニアインフルエンサーが急増中?

―― 女性インフルエンサー以外の掘り起こしにも注力しているということですが、詳しく教えてください。

福田:最近特に力を入れているのは、これからの人生100年時代に向けて、シニアのインフルエンサーを育てようと勉強会を実施しています。すでに、Instagramは20代や30代の一部のおしゃれな人が投稿するSNSではなくなっていて、10代や50代のユーザーの比率が上がっているのです。これからますますInstagramユーザーの年代の幅も広がり、日本の人口構造と同じになると言われています。となると、高齢化が始まっていくということです。当社では、高齢のインフルエンサーを「エクスインフルエンサー」と呼んでいて、今後の高齢化社会での活躍の場を創出できればと考えています。

―― 数年単位でSNSの主流は移り変わるものですが、御社では今後、Instagramに限らず、その時々の主流のSNSでインフルエンサーマーケティングを展開していく考えですか?

福田:僕らはあくまでInstagramではなく、人と人の関係性に重点を置いたマーケティングを行っていますので単体のSNSに縛られているわけではありません。ですがInstagramに論点を置いてみますと、スナップチャットが登場し、世界中がそこに注目した直後、Instagramはそれと類似した「ストーリーズ」という機能を実装しました。そうしたツイッターっぽいカジュアルな機能も取り入れて、内外から進化を続けるスタンスであれば、まだまだInstagramが多くの人を惹きつける流れは続くのではと考えています。

さらに最近、InstagramはECショップで売り買いできる「ShopNow」という機能も実装しました。Instagram自体がマスなメディア化を果たしてきている中で、そういう機能が付加されたということは、ひとつの市場になったと言えます。ということは、この中で影響力があるインフルエンサーたちは、“ソーシャルオーソリティー”になると考えています。自分のメディアを確立し、自立している人をインフルエンサーと呼んでいますが、さらに自分を律することができる人を“ソーシャルオーソリティー”と銘打ち、今後はサポートしていけたらと思っています。


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