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なにげに世界で有名な日本人:「見立て」で差別化に成功したミニチュア写真家、田中達也氏
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  • 2018.10.17
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なにげに世界で有名な日本人:「見立て」で差別化に成功したミニチュア写真家、田中達也氏

田中氏の作品「地球は甘かった」
©Tatsuya Tanaka

取材・文:6PAC

田中達也

ミニチュア写真家・見立て作家

1981年熊本生まれ。ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立て、独自の視点で切り取った写真「MINIATURE CALENDAR」がインターネット上で人気を呼び、雑誌やテレビなどのメディアでも広く話題に。広告ビジュアル、映像、装画など手がけた作品は多数。2017年NHK連続テレビ小説「ひよっこ」のタイトルバックを担当。写真集「MINIATURE LIFE」、「MINIATURE LIFE2」、「Small Wonders」発売中。「MINIATURE LIFE展 田中達也見立ての世界」が国内外で開催中。
公式サイト:http://miniature-calendar.com/

SNS時代の波に乗ったミニチュア写真家

iPhoneなど高性能カメラを内蔵したスマートフォンの登場で、誰でも気軽にキレイな写真を撮れる時代になった。自撮り写真を毎日のように投稿し続ける若い女性、作品公開の場として活用するフォトグラファー、自分を売り込むツールとして活用するタレントなど、用途はさまざまだがインスタグラムなどの写真投稿サイトには、多種多様な写真が公開されている。ある意味、誰しもが写真家という時代である。

写真投稿サイトの隆盛と連動するように、アクションフィギュアの躍動感あふれる動きを撮影した「オモ写(オモチャの写真)」なるものや、ミニチュア模型だけで作り上げた世界を撮影した「ミニチュア写真」なるものまで登場した。こうした写真は、典型的なUGC(User Generated Contentsの略。一般ユーザーが生み出したコンテンツのこと)だが、これに目をつけた企業とのビジネスで収益を得ることで、副業や本業として活躍している写真家も出てきている。

「ミニチュア写真」というワードをグーグル検索すると、検索結果画面右側に「田中達也」という個人名が大きく表示される。(スマートフォンであれば一番上)おそらく今現在、日本で一番注目度の高いミニチュア写真家なのであろう。その田中達也氏ご本人に色々と話を伺った。

田中達也氏

写真家に仕事を発注する立場から自ら撮影する立場へ

「甘島(あまとう)」

元々、広告制作会社で写真家に仕事を依頼する立場の仕事をしていた同氏が、インスタグラムを始めたことをきっかけにミニチュア写真を撮り始めたのは2011年のこと。人物の被写体が欲しかったが、サラリーマンとして働いていたので時間の制約があり、モデルを雇うにもコストがかかる。ならばと、趣味で集めていたプラモデル用のミニチュアを使い、毎日1作品を投稿するようになった。ミニチュア写真の面白さは、「ミニチュアの視点から日常を観察することで、日ごろ何気なく見ているモノの見方が変わり、新しい発見が得られること」や、「頭で想像した場面を創りやすいこと」だという。

ミニチュア写真を公開している写真家は他にも大勢いるが、同氏の写真の最大の特徴は、あるものを別のものとしてみる「見立て」だ。包丁をヨットの帆に見立ててみたり、レコード盤を中華料理店の円卓に見立ててみたり、カッターをエスカレーターに見立ててみたりと、思わずクスっとしてしまう遊び心満載のミニチュア写真が代名詞となっている。インスタグラムに毎日投稿している時、どうしたら「いいね」が集まりやすいかを考えていたところ、「見立て」の要素が入っている作品に「いいね」が集まりやすく、他に同様のことをしている人がいなかったことに気付いたのが、始めた理由だったという。

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どうすればウィットに富んだ「見立て」ができるのか単刀直入に訊ねてみると、「モチーフの形や色からアイデアを導き出す方法と、風景や言葉からモチーフを導き出す方法の2パターンあります」とのこと。

例えば、ブロッコリーのシルエットを「葉の生い茂る木」に見立てるのが前者のパターン。連想ゲームのようだが、夏と言えば海、海と言えば青い、青いと言えばジーンズといった流れで、夏を表現するのにジーンズを使うのが後者のパターンとなる。ミニチュア写真を撮影する際のこだわりは、「国籍や老若男女を問わず、誰にでもわかるモチーフを選び、誰にでもわかる物や事柄に見立てること」だそうだ。

「MINIATURE LIFE」

ミニチュア写真を始めてから数年はサラリーマンが本業、趣味で始めたミニチュア写真家が副業という二足のわらじを履いていたが、ミニチュア写真で得られる収入が会社の給料を上回ったこともあり、2015年にはそれまで勤めていた会社を退職。ミニチュア写真家を本業へとシフトした。ちょうど子どもが生まれたこともあり、子育てと仕事を両立するための選択でもあったそうだ。独立して働く時間が自由になった点は良かったと言うが、同時に制限なく仕事をしてしまうというジレンマもあると語る。

予算内でやれる人こそがプロ

「田舎ぶらし」

ミニチュア写真家として独立したことで、ビジネス面も自らマネジメントしなくてはならなくなった。ミニチュア写真家としての収入は、展覧会開催やクラインアントから依頼された作品のギャラ、写真集などからの印税がメインだという。

ミニチュア写真を切り口にビジネスを展開していく1人のビジネスマンとして、どういうことに気をつけているのか聞いてみると、「仕事を受ける条件を自分の中で決める」、「自分自身がその仕事を楽しめるか」、「自分自身の作品制作において新しい試みになるか」という答えが返ってきた。基本的に、「一般の人に認知される展覧会につながる仕事」や、「ウェブ等で幅広く多くの人にみてもらえる仕事」を受けるようにしているそうだ。ただし、新商品などのプロモーションは、その商品自体を知らない方が多く、見立てが成立しないことが多いので、仕事を引き受けにくいという。「ミニチュア写真家というアーティストとしても、ビジネスマンとしても、予算内でやれる人こそがプロ」という言葉からは高いプロ意識が窺い知れる。

言葉の壁なしで楽しめる面白い動画や画像があると、一気に世界中に広まる可能性を秘めているのがSNSだ。同氏のミニチュア写真も世界中に拡散された。香港に拠点を置く「9GAG」というエンタメ系情報サイトのインスタグラムにミニチュア写真7点が掲載されると、100万件近い「いいね」がつき、同氏のフォロワーが20万人ほど増えたそうだ。それが話題を呼び、他にも「designboom magazine」、「BoredPanda」、「My Modern Met」などさまざまな海外ウェブメディアで作品が紹介されている。

SNS経由で海外での知名度が上がるにつれ、日本国内だけでなく海外からも展示会の依頼が舞い込むようになった。今年に入り、香港、台湾、上海で展示会を行っている。全て中国語圏だが、今後は英語圏での展示会にも出品されるのであろう。

「新パン線」

数年前、テレビCMの影響か、「好きなことで生きていく」というキャッチフレーズをあちこちで耳にした。子どもたちのなりたい職業の上位にも“ユーチューバー”なるものがランクインしたりもした。だが、当時のテレビCMに出ていた人たちの中には、「好きなことで生きていく」のが大変そうになっている人もいると聞く。「好きなことで生きていく」ためには、好きなことをして“生活が成り立つだけの収入を得る”という大前提があるのだが、これは難しいことだ。同氏もまた今現在を好きなことで生きているように見える。手段が動画ではなくミニチュア写真ではあるが。同氏のような“インスタグラマー”が子どもたちのなりたい職業にランクインしたりする時代もくるのだろうかと、ふと思った次第である。


MINIATURE CALENDAR

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