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「これが自律神経失調症…?」多くのビジネスパーソンの悩みを解決する一冊【ブックレビュー】
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  • 2018.10.09
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「これが自律神経失調症…?」多くのビジネスパーソンの悩みを解決する一冊【ブックレビュー】

神保慶政

映画監督

1986年生まれ。東京都出身。上智大学卒業後、秘境専門旅行会社に就職し、 主にチベット文化圏や南アジアを担当。 海外と日本を往復する生活を送った後、映画製作を学び、2013年からフリーランスの映画監督として活動を開始。大阪市からの助成をもとに監督した初長編「僕はもうすぐ十一歳になる。」は2014年に劇場公開され、国内主要都市や海外の映画祭でも好評を得る。また、この映画がきっかけで2014年度第55回日本映画監督協会新人賞にノミネートされる。2016年、第一子の誕生を機に福岡に転居。アジアに活動の幅を広げ、2017年に韓国・釜山でオール韓国語、韓国人スタッフ・キャストで短編『憧れ』を監督。 現在、福岡と出身地の東京二カ所を拠点に、台湾・香港、イラン・シンガポールとの合作長編を準備中。

http://y-jimbo.com/index.html

「自律神経」は自動的には機能しない

思うように体が動かない、体の不調が続いている。でも病院に行っても不具合が見つからない。そんな方は、サプリメントなどに頼る前に、原田賢『忙しいビジネスパーソンのための自律神経整え方BOOK』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で、自律神経専門整体院を営む著者の知識を吸収するのが得策だ。

自律神経は、文字が示す通り体の状態を自ずと律してくれる神経だ。だがAIのように自動で調節してくれるというわけではない。「自律」と「自動」は違う。「律」という漢字の成り立ちを調べてみると、偏は「十字路の左半分」を示す象形文字(「道を行く」という意味)、つくりは「手で筆記用具を持つ」ことから成り立った象形文字だ。「律」という漢字が表す通り、自律神経がどのように機能するかは、私たちの生き方と密接に関係している。

自律神経の働きが乱れて機能不全に陥ることを「失調する」という。「律」という漢字をつかった単語には「旋律」があるが、現代社会では個々人の旋律を失調させてしまう要因が数多くある。スマホ、アルコール、考え事(悩み事)はその代表格だ。

自律神経が乱れるとどのような状態になってしまうのだろうか。

たとえば昼間に仕事などで緊張している状況で、眠気を感じることなんてありませんよね?それは交感神経が働いているからです。一方、眠っている間は副交感神経が働き、リラックスしている状態になります。このバランスが乱れると、眠りの最中も緊張状態がとけず、上手にリラックスできなくなってしまうのです。(P18)

そのほか、自律神経が乱れていると脳脊髄液の流れが悪くなり、気圧の影響を受けやすくなるという。この時点で心当たりがある方もいるのではないだろうか。

塵も積もれば失調となる

やはり「旋律」という例えで考えると自律神経はわかりやすい。自律神経は一度失調すると治しづらく、ひとつひとつの構成要素は小さいが放っておくとうつ病にまで陥ってしまうという。ピアノの鍵盤がひとつでも違う音だったら曲全体を奏でられなくなってしまう。弦楽器も、チューニングが狂っていたらハーモニーが崩れてしまう。

楽器は演奏者や職人によってある程度旋律を取り戻せる。しかし、自律神経を元通りにできるのは、もちろん他者の助けもあるが、最終的には自分だけだ。しかも厄介なのは、「治したい」と意思を持つだけでなく、複雑緻密に構成された人体の隅々を見渡して生活習慣を見直し、原因を紐解いていかなければならないのだ。

通常の怪我や骨折なら、その部位を縫合・固定したり、自分の意思で安静にすることも可能ですが、自律神経は自分の意思とは無関係に動く神経であることから、自分の意思だけではなかなか回復させられないのです。(P72)

本書では大きく分けて下記5つの習慣を見直す方法が記されている。

1.姿勢の習慣
2.運動の習慣
3.食事の習慣
4.睡眠の習慣
5.考え方の習慣

冒頭にも述べた通り、スマホ・PCやデスクワークは自律神経にとって最大の敵と言える。交通機関に乗ると、まわりの人につられるか必要性があってスマホを開いてしまうことが読者の皆さんも多いはずだ。スマホを見るなとまでは本書に書かれていないが、大事なのはその時の姿勢だ。

頚椎の歪みを正すためにも、電車の中では下を向かず、前を向くようにしましょう。また、通勤中はついついスマホを見てしまいがちですが、スマホを見ない時間をつくることで、自然と前を向く姿勢でいられるようになります。(P86)

また、気にすると際限がなさそうな食事の習慣に関して、本書では要点が絞られて紹介されている。「疲れた時はこれ!」と差し出されることの多いチョコレートだが、過度の摂取は血糖値をあげ、膵臓を働かせ、消化吸収が悪くなり疲労が取れないことにつながるという。

自律神経にとって良い食べ物として、バナナやさつまいもが挙げられます。これらは血糖値が上がりにくいとされていますから、お奨めです。チョコレートなどの甘いお菓子よりもむしろお腹にたまりやすいですし、甘いものを摂取したという満足感も得られて良いでしょう。(P130)

もちろんせっかく差し出されたものを断るのも感じが悪いので、受け取って後で食べるなど、チョコレートをはじめとするお菓子を口にする適切なタイミングを本書から学べる。そうした小さな心がけの積み重ねから、良い旋律を持った生活習慣が生み出されるのだ。

考え方のネジをはずすことは、失調ではない

本書には他にもデスクワークの合間にできるストレッチ、PCで作業しているといつの間にか歯を食いしばってしまう傾向、有酸素運動の大切さ、休息を習慣にすることなど、多くの観点から自律神経を労る方法が示されている。

その中でも、「考え方の習慣」は一番コントロールが難しい。そもそも著者はなぜ自律神経専門整体院をつくろうとしたのか。それは、元々サラリーマンだった時に体調を崩し、自身が自律神経を失調してしまった経験からだという。だからこそ、当たり前に自律して機能している大切さがわかるのだ。

自律神経が乱れてしまうような「考え方の習慣」はだいたいの場合、完璧主義あるいはネガティブ志向のどちらかだという。

ふと気がつくとストレスになっている仕事や人間関係などばかりが頭に浮かんでくるという経験はありませんか?これはストレスになることを頭に思い浮かべてしまう癖がついてしまっているせいなのです。(P182)

いかに良い楽器があっても、持っている楽譜の通りにしか弾けなくては何の楽しみもない。楽譜通りに弾こうという強迫観念にかられるだけではもったいない。上手く弾けないと思い悩み、「上手さ」という常識にとらわれていても前に進めない。たまには子どものように無邪気にただ音を鳴らすことそのものの楽しみを思い出さないと、自分の旋律は奏でることができない。

本書のタイトルにある「忙」という漢字は、言うまでもなく「心」が「亡くなる」状態を示している。偏は心臓、つくりは手足の折り曲がった死者だ。『天国と地獄』のメロディーのような競争の中を全速力で駆けている方にこそ、手足が折れ曲がって心をなくす前に、一歩立ち止まって読んで欲しい一冊だ。

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