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「マンガ編集のプロ」だけでは足りない。編集者から「エンタメ総合プロデューサー」へアップデートせよ|浅田貴典(集英社キャラクタービジネス室)
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  • 2018.09.18
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「マンガ編集のプロ」だけでは足りない。編集者から「エンタメ総合プロデューサー」へアップデートせよ|浅田貴典(集英社キャラクタービジネス室)

集英社は2017年3月、新部署「キャラクタービジネス室」を設立した。室長に就任したのは浅田貴典氏。『ONE PIECE』の初代編集を筆頭に多数のヒット作を手がけたほか、雑誌『ジャンプSQ.』創刊立ち上げ、電子書店「ジャンプBOOKストア!」開設にも携わるなど、編集者としてだけでなくビジネスパーソンとしても数多くの経験を積んだベテランである。

キャラクタービジネス室のミッションは、外部の会社と組んでゼロからエンタメ作品を立ち上げ、出版という形態にこだわらず最良のかたちでビジネスを展開していくことだという。

だが、『DRAGON BALL』、『ONE PIECE』、『NARUTO -ナルト-』など世界中で絶大な人気を誇る作品を扱う集英社が、今なぜこのタイミングで新規作品の立ち上げにも注力するのか。そこにはクリエイターの活躍の場を増やしたいという思いだけではなく、エンタメビジネスが多様化を極める現代に通用する、編集者/プロデューサーを養成したいという危機感があった。

聞き手・文:神保勇揮 構成・写真:立石愛香 デザイン:大嶋二郎

浅田貴典

集英社 キャラクタービジネス室 室長

1995年に集英社に入社し、週刊少年ジャンプ編集部に配属。『ONE PIECE』(尾田栄一郎)、『ZOMBIE POWDER.』『BLEACH』(久保帯人)、『Mr.FULLSWING』(鈴木信也)、『アイシールド21』(稲垣理一郎、村田雄介)、『血界戦線』(内藤泰弘)等の立ち上げに、担当編集として携わる。 他に漫画雑誌「ジャンプSQ.」創刊立ち上げ、電子書店「ジャンプBOOKストア!」開設、小説「NARUTO秘伝小説シリーズ」などの立ち上げに尽力。現在は第3編集部次長 兼 キャラクタービジネス室室長。
HP:https://cbiz.shueisha.co.jp/
Twitter:https://twitter.com/shueisha_cbiz

「スーパーマンしかマンガ家になれない」というのはおかしい

―― まず、浅田さんはこれまで集英社でどんなことを担当してきたのでしょうか。

浅田:私はマンガ編集のキャリアが長いんです。新卒で1995年に入社して『週刊少年ジャンプ』編集部で約10年間。次は2007年に創刊した月刊誌の『ジャンプSQ.』で3年、その後は『週刊少年ジャンプ』の副編集長として4年、直近では『JUMPj BOOKS』という、マンガ・映画・アニメ・ゲームのスピンオフ小説を展開する部門の編集長を3年してきました。

所属は変われど、一貫してマンガ家さん、小説家さん、ライターさんなどのクリエイターと接する機会が多かったんです。その中でもマンガ家さんは特に大変だと常々思っていました。他のコンテンツ業界では分業化がかなり進んでいるのに、マンガ家は一人に求められる能力の幅があまりにも広くかつ多い。映画に例えると、役者も撮影も脚本も演出も美術もキャラデザも衣装も小道具もすべて一人で担当しなきゃいけないわけです。

―― 確かに、考えてみればそうですね。

浅田:当たり前ですが、すべてのマンガ家がこれらを完璧にこなせるわけではなく、能力はそれぞれデコボコなんです。絵が上手いけどキャラクター作りは苦手とか、作劇やセリフ選びは抜群に上手いけれども、絵柄は人を選ぶだとか。あるいは寡作であったりとか、いろいろなタイプの人がいます。

そうした、何でもこなせるスーパーマンみたいな人を基準にしてしまうと、当然ながら作品を発表する場を提供できない作家さんが増えてしまいます。僕はこのことをずっともったいないと思いながらキャリアを過ごしてきました。「ウチは出版社なんだから」と書籍化だけを目指すのではなく、ゲーム、アニメなど、さまざまなフォーマットに才能をアレンジメントできれば勝率が上がって、作家さんにより多くのロイヤリティを返せるのではないかと思っていたんです。

キャラクタービジネス室のビジネスモデル

―― 今までの集英社には、キャラクタービジネス室のような役割を担っている部署や機能はあったのでしょうか?

浅田:弊社ライツ事業部は、刊行書籍のライセンスアウトを多く扱っておりますが、いちから書籍以外のIP(※)を立ち上げる取り組みは、少なかったかと思います。

※Interllectual Propery:知的財産権。エンタメ業界では「メディアミックス時の原作(に関する権利)」という意味合いで使われることが多い。

これまでの考え方は「ヒットしたマンガをいかに次のビジネスにつなげるか」というものだったのですが、キャラクタービジネス室は「出版物であるかにとらわれず、ゼロからヒット作を生み、それをビジネスとして幅広く展開していこう」という考えに基づいて動いています。

作家のためになるなら何だってやればいい

―― こうした取り組み自体は出版業界初、というわけではありませんが、、今このタイミングで集英社さんが始めたのはなぜでしょうか?

浅田:市況を見てというのもありますが、浅田が週刊誌編集、月刊誌編集、ライツ業務。デジタル業務、書籍編集の経験を重ねて、いまなら出来ると思い、部署創設の企画を出しました。

―― 出版だけにこだわらないとなると「作家の才能を、どんなフォーマットで発信するのがベストなのか」を考えるのも結構難しいと思うのですが、その辺りははどうしているのでしょうか?

浅田:フォーマットそれぞれの特性と、想定する顧客層の属性・財務状況、作家さんの持っているスキル、市況、クライアントが補いたい所、作家さんの置かれている状況、それぞれを照らし合わせて分析した上での判断になるかと思います。

例えば、フォーマットの特性分析ですが、ストーリーということだけで考えても、フォーマットによって物語への没入スピードが変わってきます。ここに関しては持論があります。没入スピードが速いということは、その世界のキャラクターに共感しやすいということです。その中ではやっぱりゲームが一番速いんですよ。自分でキャラクターを動かせるので、すぐに「このキャラクターは自分なんだな」とわかりますし、達成=快感も与えやすいんです

その次は演劇だと思います。狭いスペースの中で役者さんが目の前にいて、強制的に演技と音で、物語空間に強引に引きずり込むことができるからです。その次が映画。閉じたスペースに2時間囲い込まれるので、多少つまらない作品でも1,800円払ったら出たくないですよね。だから最終的に満足度はともかく、「没入」させられてしまいます。

4番目はテレビ・配信アニメです。これらは、声優さんの声とか音楽で没入をコントロールすることはできますが、一方で、途中で視聴をやめるのが簡単な所が辛いところです。最後に、一番没入スピードが低いのが実はマンガなんです。最初の数ページを読んでつまらなかったら読むのやめてしまいます。キャラクターに関心を持たせ、追い掛けさせにくい。キャラクターは読者にとって「他人」のままになりがちです。

このようにそれぞれの特徴があり、顧客層によって、必要な作劇構成は異なります。そして、これは「入り込んで楽しむ」形式のものだけの分析です。他の形式のものもあります。

ちなみに、唯一の例外は小説です。やはり文字ものは読むのが一番頭を使うし、リテラシーが必要になってきますから手にとってもらう、読み進めてもらうハードルが一番高いんですが、「人物の心の描写」がダイレクトに描かれます。少女マンガ原作の映画がありますが、それが出版物にはね返るのは原作マンガ以外に、ノベライズも多く売れます。

―― 映画のノベライズが多いのはそういう理由もあるんですね。

浅田:そうです。特に恋愛ものの場合は、「この人のキュンキュンした恋の気持ちを、キャラクターはどんな風に感じていたんだろう」ともっと深く本で楽しみたい読者が多いんです。でも、マンガだと字数が限られているので心象風景の描写にそこまで情報量を割けないじゃないですか。

出版社に「エンタメ界の総合プロデューサー」が必要なワケ

浅田:このように、表現フォーマットによって読者の没入の速さや深さが異なっていて、それによって物語のつくり方も、稼ぎ方のサイクルも違うので、それぞれに合わせたロジックも経験も必要です。作家さんをアテンドする時には、クリエイティブをコーディネートしていく立場になるプロデューサー的な人の重要性がより高まっていると思います

―― そうしたメディア別、プラットフォーム別の勘所を熟知した、総合的な能力を備えるプロデューサーは業界にどのくらいいるものなんでしょうか。

浅田:結果的に僕はそういったキャリアを積んできましたが、全体で見るとやはり少ないと言わざるを得ません。集英社は少年マンガも青年マンガも少女誌もやっている。アニメもやっているしゲームもやっているし、2.5次元ミュージカルもやっています。いろいろな作品展開の経験値が成功事例、失敗事例を含め、その知見が集約・共有されていくこと、そこをちゃんと見ていくとプロデューサー的な人材が育つ土壌になるのかもしれません。

―― パートナー企業と作品を開発した際、集英社や作家さんが受け取る対価はどうやって分配しているのでしょうか。

浅田:そこは千差万別ですね。役務に対する対価をもらうケースもありますし、共同著作として一つのIPを企業同士でホールドするやり方もありますし、作家さんがつくった基になる設定をライセンスアウトするやり方もあります。

我々は一貫して「汗をかいた人がちゃんと正当な対価を得られるようにしたい」というスタンスです。なので、初期から企画立ち上げに関わった重要な作家さんについては、必ずレベニューシェアにしてもらう契約をして、利益をお戻しできるようにします

ゲーム、アニメ、マンガ、それぞれの業界に商慣行や常識があって、一緒にやると、お互いに「え?なんでこんなこともやらないの? やって当然でしょう」という軋轢が起こることも少なくありません。そこをちゃんと間に入って受け止めて、全員にストレスが無いように、お仕事を回していけるよう務めています。

キャラクタービジネス室の主な事例その1:シンエンレジスト(スマホ向けゲーム)

―― なるほど。では具体的にキャラクタービジネス室がどんな風に仕事をされてきたかをみていきたいと思います。まずはスマホ向けゲームの『シンエンレジスト』からお願いいたします。

株式会社オルトプラスとの協業プロジェクト。キャラクタービジネス室はストーリー制作、キャラクターデザイン、コミカライズをディレクション。2018年6月配信&コミカライズ開始。ウルトラジャンプ、少年ジャンプ+にて連載中。
ストーリー制作:ヤモリモモンガ、キャラクターデザイン&コミカライズ:成家慎一郎(ラパス・テーマパーク)

浅田:『シンエンレジスト』では、企画開発協力、テキスト開発の受託、キャラクターデザインの作家さんアテンド、イラストの費用の負担、コミカライズおよび出版請負を担当しました。ゲームを通じて生じた収入をレベニューシェアでいただいて作家さんに戻す流れです。

―― スマホゲームの場合、シナリオやイラストは買い切りが多かったんでしょうか?

浅田:マンガの原作があって、そこからライセンスアウトしてゲーム化し、そこからロイヤリティをいただくことはあったと思いますが、オリジナルの場合は買い切りのケースが多かったのではないでしょうか。

事例その2:ダーリン・イン・ザ・フランキス(ロボットアニメ)

浅田:オリジナルロボットアニメの『ダーリン・イン・ザ・フランキス』ではかなり前の段階から打ち合わせをさせてもらって、今年1月の第一話放映直後にマンガアプリの『少年ジャンプ+』で60ページ×2話のコミカライズ版を掲載し、2月にはコミックス1巻が出るというかたちで、スピード感を持って制作しました。幸いにも好評をいただいて、10月発売の3巻の時点で累計55万部のヒット作品となりました。

監督:錦織敦史、制作会社:TRIGGER×CloverWorksによるアニメのコミカライズをディレクション。コミカライズ版では、人気作『To LOVEる』シリーズでお色気描写に定評のある矢吹健太朗を作画に起用したことでも話題を呼んだ。

今までのコミカライズは動きがスローリーにならざるを得なかったんです。アニメの放映が終了してから、コミックスが出るということも多くて。

―― 確かに、マンガ版の完結がアニメ放映終了から5年後といったケースはザラにありますね。キャラクタービジネス室ではどうやってこの問題を解決したのでしょうか?

浅田:これは今までなぜできなかったかというと「アニメサイドが完成品のない、脚本や絵コンテのみの状態で、マンガを制作するのが非常に難しかった」ということに尽きるんですよ。それでもやるとなると、アニメ制作サイドとの密接な連携が不可欠なんです。

矢吹先生のコミカライズは、「アニメで伝わることでも、マンガでは伝わりづらいこと」をすべて計算しきって改変してますので、マンガ編集としてテクニカルに分析すると本当に凄い仕事をしてらっしゃいます。またスピンオフ作品としてmato先生の4コママンガ『だーりん・いん・ざ・ふらんきす!』も制作し、少年ジャンプ+およびアニメの公式Twitterに掲載しています。

公式スピンオフ作品『だーりん・いん・ざ・ふらんきす!』は、Twitterで人気を博した『エンペラーといっしょ』の作者、matoが手がけている。

さらにアニメグッズ商品化とは別に、矢吹先生によるマンガのメイキングBOOKを出しました。

矢吹健太朗『ダーリン・イン・ザ・フランキス』メイキングBOOK。ネームや未公開キャラクターのラフイラストなどが収録されている。

浅田:これは50ページで1,500円という価格設定ですが、コミケで先行販売するかたちでリリースし、その後は「アニプレックス+」と「ジャンプキャラクターズストア」というECサイト限定で販売中です。

――この本は書店流通は無しなんですか? コミケでは人気アニメに携わったアニメーターが、個人で限定イラスト本を出したりすることはよくあるかとは思いますが、それに近いことを集英社さんがやるというのは驚きです。

浅田:書店流通は無しです。高単価・少ロットの商品は作品ファンがいると明確にわかる場所に投入しなければ売ることは難しい。でもそれを明確にできれば、もっと柔軟な作り方もできますし、しっかり利益を出して作家さんにロイヤリティも戻せます。

事例その3:MIST GEARS(ゲーム・小説・マンガのメディアミックス)

株式会社エイリム、株式会社トライエースとの協業プロジェクト。ゲーム、マンガ、小説3つのメディアを同時に展開。2018年秋始動予定。キャラクタービジネス室はストーリー制作、キャラクターデザインをディレクション。
ストーリー制作&ノベライズ:田中創(ニセコイ、双星の陰陽師ノベライズシリーズ)、キャラクターデザイン&コミカライズ:天野洋一(ステルス交境曲、アナノムジナ)

浅田:ミストギアの企画の話を頂いたエイリムさんとは、彼らの『ブレイブ フロンティア』のノベライズをJUMP j BOOKS編集長時代に引き受けたときからの付き合いです。そこから「新作ゲームを作る際に、集英社さんの作家と一緒に仕事ができないか」とお声掛けを頂いたのがスタートです。

『ミストギア』は、シナリオをJUMP j BOOKSで多数のノベライズを手掛けた小説家の田中創さん、キャラクターデザインを少年ジャンプで連載経験のある天野洋一さんにお願いしました。ビジネスの構図的には『シンエンレジスト』に似ているのですが、作家さんへの支払いは異なる形を採りました。エイリムさんからの希望で、小説・マンガなどの文章や絵もすべてゲームと同じ作家さんがやっている作品にしたいというものがありました。

―― このケースではどのような支払い形態にしたのでしょうか?

浅田:作家さんが密接に作品に関わらせてもらっている関係上、文章や絵の修正対応や細かな作業が頻発する形にどうしてもなってしまいます。そこでこの取り組みの場合は、絵が1点いくらとか文章量に対していくらではなく、集英社から月々一定額の原稿料を作家さんに保証しています。そこに+αでゲームローンチ後は、収益に応じてレベニューシェアも作家さんにお支払いする契約をとらせていただいています

クリエイターのマッチングから知財交渉まで。大手出版社だからできること

―― 回り回ってキャラクタービジネス室でのお取り組みが、集英社全体に対してどういうインパクトを与えるものになってきましたか?

浅田:一歩ずつですが、社内にとって困った時の「駆け込み寺・何でも屋」のような存在になれてきたかなと思います。今も昔も、各編集部は作家さんと誠実にお付き合いしています。作品制作のみならず、作家さんがどういうことが好きでどういう仕事をやりたがっているかは、ちゃんと日常的にお付き合いしていないと分からないし、明かしてくれない部分もあります。その情報を、共有する土壌ができ始めました。

僕もマンガ編集だけのキャリアだけで、ライツ系事業の経験値がなかったら分からなかったと思いますが、そうしたちょっとした情報は次のビジネスにつなげられるんだということを実例として示し始められたかなと思います。「○○さんがこういうことをやりたがっているんですけど、興味を示している企業の方はいらっしゃいませんか?」といったかたちで社内から話が来たりします。

もちろん外部の企業様からのご相談もありますし、こちらから積極的に営業・企画のブレストを行っております。

―― 「作家のためにゼロから新しい仕事をつくる」とおっしゃっていましたが、まさにこういうことですね。

浅田:当然ながら、その作家さんがどういう人間で、どういったところをストレスに感じ、何をやりたいかを理解するには、長いお付き合いが必要です。

例えばクライアントから「鳥山明さんのようなキャラクターデザインをできる人が欲しい」というオーダーが出た時、すぐに鳥山先生のところに行くのは論外なわけです。タイミングもわきまえずお願いするだけだったら誰でもできますし、ビッグネームであればあるほど実現する可能性も下がります。「集英社だから鳥山先生に話を持っていける」というところだけに価値を置くのはダメで、「作家さんを口説くには、企画書にこういう要素を入れられないか」「この作家さんはプロダクトにまだ出していないんだけれども、こういうところに興味があり、強いんです」というクライアントさんとのやり取りを経て、作家さんに持っていってこそ、企画が成立する可能性が高まると思っています。

―― そのうえで「集英社のリソースが使える」ということはクライアントにとってどんなメリットがあるのでしょうか?

浅田:希望する作家さんに断られた場合でも、Bプランのご提案を出来ることが強みかと思います。あとは出版物の収益化のノウハウ、電子書籍・海外出版など多面展開を行える組織力ですね。

本を収益化すると一言にいっても、商品によってノウハウがかなり違います。また、海外の読者から人気だから翻訳版を出そうといっても、他の業界の方が海外の出版社の契約書を読むのは大変ですよね?

―― 弁護士に相談するにしても、「そもそも誰に聞けばいいか」も分からないですよね。

浅田:知財系の弁護士といっても、強いジャンルと弱いジャンルがあります。例えば中国の場合、アメリカの場合、ヨーロッパの場合、それぞれの商慣習も違います。海外ではそもそも売掛金を回収できないケースなんてのもあるわけです。そのような場合でも、作家さん・クライアントさんの損にならないように、集英社は動きます。

「負けない」からこそリングに上がり続けられる

―― 出版社には販売部があるとはいえ、多くは書店を中心に考えてきた組織ですし、プロモーションと一口に言っても、求められるスキルがとんでもなく増えていますよね。

浅田:そのとおりだと思います。個人的には、やはり作家さんには出来る限りクリエイティブに専念してほしい。そして、企画アレンジ、プロモーション部分は、求められるスキルが増えている分、組織の力が必要になってきている時代だと感じています。

ただ、必要なものが増えていると言っても、一番の強みを忘れてはならないと思っています。キャラクタービジネス室を立ち上げてつくづく思うのは、「餅屋は餅屋だな」ということです。出版社の真の“餅”部分は何かというと、作家さんとのお付き合いの蓄積です

編集者であれば新人、中堅、ベテラン作家それぞれに接する。売れている作家とも、売れない作家とも接する。そのやりとりの中で、どういう言葉をかければ作家さんのためになっていくのか、それはケースバイケースなので、その経験値をたくさん積めるのが出版社のいいところだと思います。

そのうえで付け加えると、やはり人は成功体験より失敗事例を通じて成長できるのではないか、と個人的には感じます

―― 勝ち方よりも「負けない戦い方」を知っている方が重要ということですか。

浅田:成功することはもちろん大切ですが、踏んじゃったら絶対に失敗する地雷ポイントはいろんなところにあるわけです(苦笑)。できる限り、作家さん、クライアントさんに知見を提示できればと思っています。

いま作家さんに集英社が、パートナーとして組みたい、と思われるには何をすればよいか?個人ではできないこと、組織だからこそ出来ること、とは何なのか? その答えを模索し続けるのが、キャラクタービジネス室のアイデンティティです。

作家活動そのものを最大化していくパートナーとして、これからも我々は進んでいきたいと思っています。


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