EVENT | 2018/09/01

カメルーンと日本育ちの星野ルネさんが描く、エッセイ漫画連載スタート!日本人とカメルーン人のビジネス観、生き方とは?

(※FINDERSでは星野ルネさんの連載「アフリカンジャパニーズ・ビジネス周遊記」がスタート!こちらもぜひご覧ください)...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

(※FINDERSでは星野ルネさんの連載「アフリカンジャパニーズ・ビジネス周遊記」がスタート!こちらもぜひご覧ください)

Twitterにアップした独自目線のエッセイ漫画が評判となり、『まんが アフリカ少年が日本で育った結果』(毎日新聞出版)を出版した星野ルネさん。FINDERSでは、9月より星野さんによるビジネス目線の漫画連載をスタートする。

日本とカメルーンで育ち、日本語、フランス語、英語を話すトリリンガルでもあり、タレント、作家、MC、プログラマーなど多才な“多動力”を発揮する星野さん。連載に先立ち、星野さんの育った環境をはじめ、これまでのキャリアや仕事のスタンスなどについて話を聞いた。

星野ルネ

漫画家、タレント、放送作家、MC、プログラマー

1984年、中部アフリカ・カメルーン共和国出身。4歳の時に来日後、兵庫県姫路市で育つ。その後、放送作家を目指し上京。2011年にフジテレビ「求む!新人放送作家。」に応募し、第1回グランプリを受賞。放送作家として、番組から「星野ルネ8(八)」という作家名も命名される。2018年8月に、Twitterで発表していたエッセイ漫画を掲載した『まんが アフリカ少年が日本で育った結果』(毎日新聞出版)を出版し、話題となる。

カメルーンは永遠のパワースポット

―― 日本人のお父さんがいて、苗字も「星野」ですが、カメルーンと日本人のハーフなのですか?

星野:もとは中部アフリカのカメルーンで生まれて、4歳の時に母が日本人の父と再婚したので、兵庫県姫路市で暮らすことになりました。父は僕の生まれた村に研究で来ていて地元の人と交流があり、その中で母と知り合いました。7歳と11歳の時に計2年間ほどカメルーンに帰国しましたが、あとは25歳で上京するまで、青春時代などもずっと姫路で育ちました。

―― 星野さんにとって、カメルーンとはどんな場所ですか?

星野:カメルーンには親戚が100人以上いるので、僕にとってはみんなに会える場所であり、エネルギーが充電できる場所です。近くのジャングルに行けば、年中20種類ぐらい果物が自生していて、しかも食べ放題。カメルーン全体でいえば、アフリカにいるほぼすべての動物がいるので、基本的に食べ物には困らないんです。8月に出版した『まんが アフリカ少年が日本で育った結果』でも描いているように、小さい頃とはまた違った意味で、日本とカメルーンの違いを体感しています。カメルーンについてみんなからいろんな質問を受けるので、それを踏まえてカメルーンに帰ると、違いや共通点など、別の角度でいろんなことが見えてくるんですよ。

星野ルネさん公式Instagramより

―― 4歳までは公用語のフランス語を話していたのですか?

星野:フランス語と部族語の「ンヴァイ語」です。カメルーンではたくさん部族語がありますが、この言語は国内ではわりとメジャーです。強いて言えば、日本の関西弁に近いですかね。

―― 4歳で日本に来たときの印象はいかがでしたか?

星野:カメルーンにいたときは、その後母と結婚することになった義父を「オシノ」(フランス語では「H」を発音しないためこうなるという)と呼んでいて、父以外の日本人を見たことがなかったのですが、日本に来たら「肌の白いオシノがいっぱいいる」と思いました(笑)。それから父が言うには、アフリカの親戚と離れ離れになるのがさみしくて泣いていたということです。日本は核家族なのであまりピンと来ないかもしれませんが、カメルーンでは村1つを引っくるめて家族意識が強いんですよ。

自分らしい表現法に行き着いた結果が、マンガだった

―― 子どもの頃なりたかった職業は?

星野:これまで、タレント、工務店勤務、バーテンダーなどいろいろな仕事をしてきましたが、実は、漫画家とゲームデザイナーなんです。

―― 結局は子どもの頃にやりたかったことに戻っていますね。

星野:そうなんです。昔は自分の好きなことは仕事にできないから、趣味のままでいいと思っていました。「自分の一番得意なことを表現方法として使わない手はない」と、最終的に行き着きついたかたちですね。今は漫画も描いているし、ゲームを作るためにプログラミングもしているので、子どもの頃文集に書いた自分の夢そのままのことをしています。

―― もともと好きで漫画を描いていたわけですね。上京したきっかけはなんだったのですか?

星野:関西でバーテンダーをしていたときに、この見た目で日本語が流暢なので、「どこから来たの?」などと聞かれて、すごくお客さんに興味を持たれたんですよ。そこでのお客さんとの会話の中で、ウケた話、驚かれた話が徐々に溜まっていきました。次第に「東京に出てもっと発信した方がいいんじゃない?」と言ってくれるお客さんが増えて、背中を押されたことが、最終的に上京するきっかけとなりました。

―― 上京してタレントになったきっかけは?

星野:なにかを表現するのに一番多くの人に伝わるのはテレビだと思いました。ということで、先に上京していた弟の紹介で今の事務所に登録することになりました。

いわゆる「外タレ」としてバラエティ番組にもたくさん出演させていただきましたが、自分のやりたいことと求められることに違いがあったんです。芸人活動に近いこともしたことがありますが、実際に芸人さんに会ってみると、「人種が違うな」と思ってしまって。

テレビのバラエティで「外タレ」に求められるのは、サンコンさんやボビーさんなどの存在でも分かるように、飛び道具的なおもしろさなんです。でも、彼らはもともとアフリカで生まれて育ち、日本にやって来た人たちだけど、僕は4歳から日本で暮らしているので、実はカテゴリーが違うんですよ。だからそもそも彼らと同じことはできないわけです。自分の表現の場はテレビにはなかったんだなと実感しました。そんなとき、ふと、「そうだ。漫画なら描ける」と思い出し、あらためて描き始めて、Twitterにもアップするようになりました。

人は自分事化できるコンテンツに共感する

―― Twitterでは1日1本ペースで更新して、現在フォロワーが4万人以上に拡大しましたが、8月に出版した漫画の反響はいかがですか?

星野:おかげさまで好調です。大ヒットするネタが何かは未だに読めませんが、SNSにアップしていると反応がダイレクトで、ある程度ならどのネタがウケるかという傾向は見えてきました。ただバズらなくても自分が描きたいと思うものを時々描いて、全体的にバランスをとるようにしています。

―― どんな内容の漫画がウケるんですか?

星野:やはり人は“自分事”にできるものに共感するんですよ。日本と関連する話を織り交ぜるとウケがいいです。日本と関連して、しかも笑えて新しい発見がある話が一番ウケます。基本的に僕の漫画は事実に基づいていて作り話ではないので、笑える話は実はそんなにあるわけではないのですが。

―― 個人的には、星野さんの漫画の中で、「夢を何語で見ていのるか」という話が好きでした。

星野:なかなかマニアックですね(笑)。これも人から聞かれて、「日本人は日本語しか話さないから疑問に思うんだ、なるほどな」と思ったのが、漫画にしたきっかけです。そういう素朴な疑問がソースになることが多いですね。あとはTwitterでリクエストをいただくこともあります。今、こうして話していても2つぐらいネタを思いつきました。

星野ルネさん公式Twitterより

―― 本当ですか?どんなネタでしょうか?

星野:インタビューに答えながら、「自分が漫画を描くようになった経緯ってそういえば描いたことがなかったな」と思いました。なので、それがひとつで、もうひとつは……。

―― それは秘密にして、今後、FINDERSの連載で乞うご期待ということにしましょう(笑)。FINDERSは「ビジネス×クリエイティブ」をテーマにしているので、そういう話もお願いしていきたいと考えているのですが、これまでいろんな仕事をしてきた中で、印象深いビジネスパーソンはいましたか?

星野:漫画にも登場していますが、工務店時代、後輩として入ってきた、元ミュージシャンのアフリカ人のおじさんはおもしろい人でしたね。彼からいつも「本当にお前はアフリカ人なのか?」って言われてました(笑)。「血はアフリカ人だよ」と答えても、「挙動にしても、本当にお前は日本人みたいにテキパキ動くな」なんて言うから、「アフリカというOSだけど、ソフトは違うから」と返していました。

彼は米や野菜といったオーガニックな食べ物しかとらないので、ファストフードに染まっている僕を見て、「そんな添加物だらけのグローバル資本の象徴みたいな食べ物に染まりやがって」と落胆されていました。でもある日彼が弁当を忘れてきたので、コンビニでアメリカンドッグをおごったら、「うわ、なんだこのうまい食べ物は!」って、やみつきになっちゃって(笑)。それまではファストフードについて、人間を堕落させる「悪魔の食べ物」と呼んでいて、お茶しか飲まなかったのに、コーラを飲むようになったんです。以来、すっかり弁当を作らなくなったし、悪魔と契約するのが本当に早かったですね。もちろん、罪悪感はありますよ(笑)。

星野ルネさん公式Twitterより

グローバルで見ても、独特な日本人の働き方観

―― 日本とカメルーンとの働き方の違いをどのように捉えていますか?

星野:日本は歴史的に見ても、お殿様と領民とか、丁稚奉公の名残が残っているのかもしれませんが、会社のために働く意識や愛社精神が強いですよね。その後、欧米文化が取り入れられたのに、なぜもう少しドライな方向に行かなかったのかということが、僕からしてみたらとても不思議です。カメルーンでは、基本的に家族のために働くのが根底にあって、あくまで働く側は資本家と契約して、時間を売る対価として報酬を得るという考え方です。

―― おそらくその考え方の方がグローバルですよね。

星野:そうだと思います。日本だと遅くまで残って仕事している人が評価されますが、カメルーンも含め、グローバルでは、時間内に仕事を終わらせて家族のために早く帰る人の方が、社会的にも評価されます。そこは大きく違うところですね。

―― お父さんは日本人ですが、生き方、働き方において影響を受けた部分はありますか?

星野:カメルーン人よりも、日本の義父の方が、社会に認められること、社会貢献に対する意識が強いですね。カメルーンの場合、社会全体とか公益というよりも、身内や親戚同士との団結の方が強く、“自分たちファースト”です。日本は働き方にしてもなんにしても、家族の団結よりも、世間や社会全体を意識するように思います。

それから、父から影響を受けたのは、自分の捉えられ方についてでしょうか。僕がアフリカ人ということで耳目を集めることは、日本におけるアフリカ系の数少ない標本になっているんだと思っています。僕と関わった人によってアフリカ人に対する日本人の評価が変わるから、できるだけ人と良い関係を作ろうという意識はありますね。メディアで報道されがちなのは「攻撃的な原住民が住む村」とか、「アメリカの犯罪報道で捕えられる黒人の犯人」みたいな感じじゃないですか。そういう映像しか見ていないと、外国人が少ない地方のお年寄りなどは、「黒人は怖い存在」というイメージを持ってしまいます。少なくとも僕がテレビに出たり、人と接したりする時にちゃんとしていないとそのイメージは変わっていきませんから。

身近な幸せを追求すれば、日本人の幸福度は上がる?

星野ルネさん公式Instagramより

―― 日本とカメルーン両国で育った星野さんだからこそ見えてくるものはありますか?

星野:幸せの基準の違いはものすごく感じています。先進国の中でも幸福度が低いと言われている日本ですが、もし、カメルーンの人が日本の普通の暮らしを体験したら、「なんて幸せなんだろう」と思うはずです。だって、街はきれいで停電なんて起きないし、トイレもきれいで、しかもウォシュレットまで付いています。どのホテルでもかならずお湯が出るし、電車も時間通りにやってくる。基本的に都会にいれば、仕事に困ることもありません。たとえ夫婦2人でアルバイト生活だとしても、安いアパートを借りて贅沢しなければ普通に生活できますよね。義務教育もさまざまな保障もあります。

一方、そうしたものが整わないカメルーンの僕の生まれた村では、本当にアルバイトすら仕事がないので、みんな田舎に戻って畑仕事をしたり、漁をしたりしているわけですが、みんな幸せに暮らしています。そう思うと、幸せとは物質ではないんだなと実感します。

両方を見ているから、僕はずっと幸せですね。ビールが飲めて、散歩して団子を食べたり音楽を聴いたりするだけでも結構幸せです。今後、結婚するにしても別に貧乏でもいいから支え合えるような人と一緒になれればいいなと楽天的に考えています。でも、多くの日本人がそうではないなら、バブル期で幸せの基準が止まっているのか、突きつけられている幸せの基準が違うんでしょうね。素朴な幸せに立ち返りませんか?と思ってしまいます。

―― 日本人は自己承認欲求や自己実現欲求などの高次な欲求ばかり求めていて、シンプルな欲求が満たされていないから幸福度が低いという話もありますね。いわゆる3大欲求として、「睡眠欲」「食欲」「性欲」といった一番根本的な欲求がありますが、これらが満たされていないと幸福度は上がらないと言われています。

星野:考えてみると、カメルーン人はその3つすべて満たされていると思います。たとえば、出世して車を手に入れたいといった高次の欲求はすぐに飽きるものばかりですよね。日本人の幸福度を高めるために、一度全員から車もウォシュレットも取り上げちゃうというのはどうでしょう(笑)。

―― 日本人全員、カメルーン合宿ですね(笑)。

星野:カメルーンの僕の生まれた村に行けば、トイレはウオッシュレットどころか水洗じゃないし、冷蔵庫もないし、市場に行けば食材にハエがたかっているのが当たり前です。村にやって来た日本人は、始めは「最悪!」と思うかもしれないけど、2〜3カ月経ったらそれにも慣れてきて、ふと気がつけば、「流れている時間が日本とは違ってスローだな」なんて思って、1年後に日本に帰ってきた時には、生活の便利さを強く実感するはずです。

星野ルネさん公式Instagramより

複数のものを組み合わせて商品化すれば、唯一無二のものができる

―― 現在の仕事のジャンルやスタンスについて教えてください。

星野:今はゲーム製作をしながら漫画を描いています。一応、司会もできるし、映像編集もプログラミングもできるので、フリーランスとして、僕がやれることならなんでも引き受けています。「都会の狩猟採集民族」みたいな感じで、なんとかその月に食べていく分ぐらいは稼ぐスタンスです。今後はものを描く仕事をしながら、講演活動などの仕事が増えていくのかなと考えています。

フリーランスで働いているとわかるのですが、能力を見込んでというより「知り合い・友達だから頼む」という依頼があるんです。友人のクラブやパーティーのMCなどはそういう類の仕事です。テレビの仕事だと、アフリカ系で日本語が喋れる人が欲しいという時に呼ばれます。ドラマの場合、片言の日本語を喋る役がつくこともあって、「星野ルネ」として出演するバラエティなら無理がありますが、あくまでお芝居なので、OKとしています。日本人の監督や企画の意図が感覚として理解できるから、僕は便利な外人タレントだと思いますよ(笑)。ほかの人たちはなかなかニュアンスが伝わらないことも多いですから。

―― バランス感覚がいいというか、柔軟性を感じますね。

星野:逆にひとつの仕事に特化する方が不安なんですよね。たとえば、役者なら、殺陣専門というふうに専門性を極める人もいますが、そういう働き方が苦手というか、DNA的に拒否してしまうんです。できることをなるべく整理して、特化して専門性を高めた方がフリーランスの場合、功を奏すということは論理的にはわかっているのですが。

―― でも、これからの時代、いろんなジャンルを横断してビジネスにつなげられる人材が求められていると言われていますよ。

星野:数年前から薄々感じていましたが、やっと来ますね。僕の時代が(笑)。昔は器用貧乏が評価されない時代でしたが、考えてみたら、スティーブ・ジョブスはエンジニアとしてはそんなにレベルが高かったわけではないけれど、音楽プレーヤーやタッチパネルといったさまざまな技術があることを知識として知っていて、それをまとめるのが得意で、なおかつプレゼン能力に長けていたから成功しましたよね。

YouTuberなどを見ていても顕著に感じられます。たとえば、ボイスパーカッションが上手な人であれば、世界中に上手な人はたくさんいる中で、それにプラスして、さまざまな動画を組み合わせてひとつにまとめれば、その人にしかできない唯一無二のコンテンツになります。僕の場合にあてはめても、アフリカ人も絵がうまい人もストーリーをもっと緻密に作れる人もたくさんいるけど、全部組み合わせると僕にしかできない仕事になるということですね。

―― まさに、堀江貴文さんが言うところの「多動力」を発揮していますね。

星野:実は僕、堀江さんやひろゆきさんのような未来志向な人が好きで、対談動画をよく見ているんです。恐縮ですが、直感で堀江さんとは楽しく議論できるような気がしています。それから、社会学者の古市憲寿さんも好きで注目しています。いつかお会いしてそれを漫画にできたらいいなぁ。

―― そうやってしたいことを公言しておくと叶うので、どんどん発言して、ぜひFINDERSの漫画連載でもその模様を描いていきましょう(笑)。

星野:ぜひ、よろしくお願いします(笑)。実は以前一度、堀江さんに僕がTwitterにアップした漫画をリツイートしていただいたことがあるんですよ。

―― それなら望みは明るいですね。最後に、今後、FINDERSの漫画連載でネタにしたいと構想しているビジネスパーソンについてこっそり教えてください。

星野:仕事や働き方がメインテーマなので、一発目は、そもそも仕事ってなんなの?という根源的なテーマから攻めたいと思っています。カメルーンのジャングルには、少数民族のピグミー族が住んでいます。子どもの頃に一度、彼らが物々交換をしているところを見たことがあるんですよ。考えてみたら、それがビジネスの根源なんじゃないかなと思ったのがヒントになりました。

―― それは興味深いですね。人類の起源はアフリカにあると言われていますからね。

星野:はい。そこから回を追って、“仕事と家庭”“給料をもらう感覚”など、僕がこれまで日本で働いてきた中であったできごとや感じたことを織り交ぜながら、パターンを広げていけたらいいなと思っています。

―― 星野さん、今日はお忙しいところ、ありがとうございました。漫画が完成するのを楽しみにしています。


FINDERSでは星野ルネさんの連載「アフリカンジャパニーズ・ビジネス周遊記」がスタート!こちらもぜひご覧ください。