EVENT | 2022/12/30

アダルトサイトで約3億売り上げた男、実は反社に脅されていた?裁判で明らかになった活動背景(前編)

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阿曽山大噴火
芸人/裁判ウォッチャー
月曜日から金曜日の9時~5時...

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阿曽山大噴火

芸人/裁判ウォッチャー

月曜日から金曜日の9時~5時で、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載を持つ。パチスロもすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。

※編集部注:本連載は被告人の名前をすべて本名と関連しないアルファベット表記(Aから順に使用し、Zまで到達した際は再びAに戻して表記)で掲載しております

【連載】阿曽山大噴火のクレイジー裁判傍聴(44)

「出所後、2人の男に脅されたからです」

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罪名 わいせつ電磁的記録媒体陳列
L被告人 無職の男性(43)

起訴されたのは、2021年7月10日から2022年4月6日までの間、L被告人が男女の性交場面を収録した無修正の動画6点をFC2コンテンツマーケットにアップロードし、不特定の客がお金を支払えば動画が視聴できるように公然と陳列したという内容。

罪状認否でL被告人は「間違いありません」と罪を認めていました。

検察官の冒頭陳述によると、L被告人は高校を中退後、カラオケボックスなどでアルバイトをしており、犯行当時は動画の販売利益で生活していたという。

前科1犯で、罪名は違うものの本件と同じような動画に関する事件で実刑判決を受けているようです。

L被告人は飲食店で知り合った女性と性交し、その様子を動画撮影し、編集してFC2コンテンツマーケットで販売。「無名な男」というハンドルネームで数多くの動画を販売し、サイト内の年間売上ランキング3位を占めていたこともあるとのこと。

「無名な男」という名前が皮肉に思えるほど、この手の動画が好きな人にとっては超有名人で、売上が3億円くらいあったと報じているメディアもあったほど。かなりの人気者だったというわけです。

弁護人が証拠整理があるということで8月15日に行われた初公判は数分で閉廷でした。

そして、9月22日に行われた第2回公判。

弁護人は、検察官が主張している金額は多すぎるのではないかという証拠を提出。

そして、被告人質問です。まずは弁護人から。

弁護人「動画に出演する女性とはどうやって知り合ったんですか?」
L被告人「キャバクラなどです。多くは出演者の知り合いです」
弁護人「女性は動画の販売を了承しているんですか?」
L被告人「しております」
弁護人「出演女性と今まで何かトラブルになったことはありますか?」
L被告人「ありません」
弁護人「出演料は?」
L被告人「本人の希望次第ですが、日当か売上に応じた歩合です」

昨今、出演強要などが問題になりAV新法も制定されましたが、L被告人の動画に関しては女性も動画販売を知った上で、トラブルもなかったようです。

そして、ここから事件の内容が大きく展開していきます。

弁護人「あなたには前科が1犯あって、懲役1年6月の実刑でしたね。似たような事件ですが、何故またやったんですか?」
L被告人「出所後、2人の男に脅されたからです」
弁護人「どんな人ですか?」
L被告人「2019年の4月に前回逮捕されたとき、新宿警察署の中の留置所で一緒になった男です」
弁護人「名前は?」
L被告人「ヤスダ(仮名)と言っていました」
弁護人「何の仕事をしてるんですか?」
L被告人「訊いてないですけど、暴力団関係者だと思います」
弁護人「刑務所に行ってる間はどんなことがあったんですか?」
L被告人「留置所にいる時に親しくなって、自分の部屋とか家財道具などの面倒を見てもらうことになったんです。刑務所にいる間はヤスダさんとは手紙でやり取りしていました」
弁護人「2020年9月30日に仮釈放されて、そこからは?」
L被告人「6月頃、仕事とアパートは確保したという手紙が届きまして。それで出所後に家財道具などのことで連絡をすると、JR板橋駅に呼ばれまして。それで行ったら知らない男も一緒にいて」
弁護人「それで2人の後について、アパートに行ったという話でしたね?」
L被告人「部屋に入ると、包丁と持った男が入ってきて、『今までの世話代400万円よこせ』と言ってきました」
弁護人「あなたはどうしました?」
L被告人「怖かったので、要求を呑んで翌日腕時計を売って200万円を渡しました。するとさらに『FC2をやって稼いだ金を渡せ』と言ってきました」
弁護人「あなたのこと知ってて言ってきたと?」
L被告人「はい。留置所も一緒でしたし、ニュースにもなっていたので」

悪い人に脅されて、嫌々わいせつ動画の撮影編集をやるようになったという衝撃の告白。

弁護人「出演する男性は今まで通りあなただとしても、女性や撮影場所は?」
L被告人「当初は向こうが用意していました。場所はそのアパートの近くのホテルです」
弁護人「動画の売上ってどうしてました?」
L被告人「2人に全額渡していました」
弁護人「その期間は?」
L被告人「2020年11月~2021年の3月末ごろまでです」

刑務所を出たのが9月30日なので、一カ月後から動画の撮影販売がスタートし、約半年間2人の男に売上を渡していたようです。

弁護人「渡していた総額は?」
L被告人「最低でも1500万円はあったと思います」
弁護人「女性への支払いはどうなってました?」
L被告人「37歳までスカウトをやっていたんですが、そのスカウトバックで入ってくるお金で払っていました」
弁護人「ヤスダから逃亡しようとしなかった?」
L被告人「2021年1月に逃げました。でも住所とかを知っているので実家に来て、近所の人に『ここの息子は犯罪者だ』と騒ぎたてていたようで、実家から連絡が…」
弁護人「いつまで2人に売上を?」
L被告人「2021年3月末頃まで。そこからは距離を取って関わっていません」

距離を置くだけで大丈夫なら、もっと早くそうしておけばよかったのではないか?という疑問もありますが、悪い2人の方も離れていったのかもしれませんね。

「ヤスダ」から離れられたのになぜ動画販売を続けていた?

わいせつ動画に手を出したきっかけはわかりましたが、起訴されているのは2021年7月~2022年4月までの動画について。「脅してきた2人がいなくなったのに何故動画の撮影、販売を続けていたのか」がこの裁判で問われる部分です。

弁護人「じゃあ、2021年3月以降も同じように動画の撮影・編集・販売を続けていたのは何故ですか?」
L被告人「出演した女性やその知り合いの女性からの出演オファーがありまして、頼られるのがうれしくなって2021年7月から再開して、止め時を失いました」

人に頼られることで自分が必要とされているという存在意義を感じていたんでしょうね。単純にモザイクかけとけばよかったのに。それだと売上が下がったりしてたんでしょうかね。

続いて、争っている売上に関しての質問。

弁護人「動画の価格の単位は?」
L被告人「FC2のオリジナルポイントです」
弁護人「購入する人はどうやってポイントを入手するんですか?」
L被告人「1ポイント1円で購入するか、動画を販売して得ます」
弁護人「例えば1万ポイントの動画が売れたとして全額手に入るんですか?」
L被告人「33%天引きされます」
弁護人「日本円に換金する手順は?」
L被告人「ショッピングサイトを使えば全国百貨店共通券に交換できるので、それをチケットショップに売っていました」

だから検察官が主張するほどは儲かっていないですよというアピールなんですね。犯罪行為もいろんなところで搾取されたり、手数料がかかったり世知辛い世の中ですね。

続いて検察官から質問ですが、また次回。

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