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EVENT | 2022/07/08

国内最大級のICTイベント「INTEROP」と「AITAC」が連携。ますます重要となる次世代“ITアーキテクト人材”の育成が本格始動

Interop会場内に構築されるネットワーク「ShowNet」ブース。毎年最も注目を集めるプロジェクトだ
文・写真:神...

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Interop会場内に構築されるネットワーク「ShowNet」ブース。毎年最も注目を集めるプロジェクトだ

文・写真:神保勇揮(FINDERS編集部)

2週間で会場に大規模ネットワーク環境を構築する「ShowNet」プロジェクト

1994年から開催が続いている、国内最大級のインターネットテクノロジーイベント「Interop Tokyo」。

29回目を迎えた本年は、6月15日~17日にリアルイベントとして幕張メッセにて開催。(6月20日~7月1日にはオンラインでも開催)

Interopが他の展示会・カンファレンスイベントと大きく異なるのは、出展社から提供された1500台以上、総額にして数十億円分にもなる最新製品・サービスを用いて、約400名ものトップエンジニアたちがボランティアで参加し、たった2週間で会場にネットワーク環境を構築し完全撤収まで行う一大プロジェクト「ShowNet」を開催初回から継続していることだ(ちなみにInterop自体は世界各国で開催されているが、ShowNetを現在も継続しているのは日本だけだという)。

ShowNetブースでは使用している最新機器や技術的な見どころの紹介や、NOCメンバーが最新技術トレンドも交えて直接解説してくれるウォーキングツアー(有料)も実施している

ウォーキングツアーでのレクチャーより。ShowNetでは世界初・日本初展示といった機器も多数投入されており、「こうした最新機器に触れることができる」のは運営メンバーとして携わる大きなメリットだという

ShowNetの環境構築を担っているのは、産学双方のベテランエンジニアで構成されるNOC(Network Operation Center)チームと、若手社会人や学生・大学院生などで構成されるボランティアメンバーのSTM(ShowNet Team Member)に分かれている。STMは毎年公募を行っており、本年は39名の採用に対し約100名の応募があったという。

「アーキテクト人材」の育成をさらに強化すべくAITACとShowNetが連携

AITAC公式サイトより

このShowNetにおいて、本年から新しい取り組みが始まった。

ネットワークエンジニアリングにおける最新技術とハード特性を理解し、IT技術導入の設計・融合を指揮できる高度な「ITアーキテクト人材」の育成を目的として、2017年に企業・大学が協働して誕生した「一般社団法人高度ITアーキテクト育成協議会(通称AITAC)」が、講座修了生2名をSTMに推薦・派遣したのだ。

これだけ聞くと「教育団体がプロモーションも兼ねて交流プログラムを作ったのか」と思われてしまうかもしれないが、実態はShowNetの理念をより広く実践するためのプログラム拡充と言える内容である。

AITACがどのような理念で設立され、何を実践しているのかは、2020年に掲載されたこの記事で詳しく書いているので読んでいただきたいが、ShowNetとしては「できるだけ多くの人に参加してもらいたいが、実作業時間が短いので多少のネットワークエンジニアリング知識や実践経験は持っていてほしい」という希望があり、一方でAITACはアーキテクト人材育成のための実践の場が多ければ多いほど好ましい。まさに両者ともWin-Winの取り組みなのだ。

また今年からSTMに選ばれたメンバーは全員、AITACのラーニングプログラムを無料で受講できるようにするなどの対応も行った。事前学習をすることでShowNet本番に向けた学び直しと不安の解消に一役買っている。

今回の取り組みの目的については、AITACでカリキュラム委員長を務める、東京大学大学院 情報理工学系研究科教授の関谷勇司氏のインタビュー動画も公開されているので、こちらもぜひご覧いただきたい。

また関谷氏は今後、ShowNet運営の国際化も考えているという。AITACでは既にアジア・パシフィック地域のインフラエンジニア育成組織「Asia Pacific Internet Engineer Program (APIE)」との連携も図っており、当該地域の若手エンジニアに対してAITACが提供するeラーニングプログラムの翻訳版の提供や出張講義なども行っているが、そこで育成した人材をいずれShowNetのNOCチームやSTMとして活躍してもらう構想もあるそうだ。

STMに参加して得られる、これだけのメリット

STMの作業ブース

今年のShowNetにAITACが推薦を行い派遣した若手エンジニアは、江戸麻人氏と深川祐太氏の2名。両名ともNTTコミュニケーションズに在籍している。

今回はこのお二方に「どのようなモチベーションでAITACを受講しSTMに立候補したのか」「STMに参加することでどんな経験が得られるのか、大変だったことは何か」といった話を伺うインタビューを行ったので、その模様もお伝えしたい。

お一人目の江戸麻人氏は今年で入社7年目。同氏は現在国際電話の装置開発やネットワーク構築を手掛けており、部署に配属された当時はネットワーク装置を含めた上位システムの更改時期でもあったことから、ハード関連だけではない幅広い知識・経験を持つ必要性を感じていたという。そうした中で上司からAITACの存在を教えてもらったことから受講を決めたそうだ。そして、ネットワークをゼロから構築でき、かつ最新機器を扱うことによる未知の課題解決の場数も踏めることに魅力を感じ、STMに立候補したと語る。

また江戸氏は、STMでの作業においては、「AITACのカリキュラムで学んだレイヤ2(L2)、レイヤ3(L3)の関連技術であるネットワーク内のスイッチやルーターまわりの冗長化や、どのようなプロトコルを使えばサービスの品質を維持できるのか、そしてサービスを要件定義するための知識などが役に立ちました」と語る。

またSTMの一員になるには技術者としてどの程度の知識が必要になると思うかという質問については「L2、L3の分野であれば、他のものさしで言うとCCNP(シスコシステムズが提供する技術者認定で、上から3番目のプロフェッショナルレベル)に合格するレベルであれば網羅的に理解できると思いますが、最近はセグメント領域で新しい技術が登場してきているので、自身でのキャッチアップも必要になります」と答えてくれた。

一方で「ここはもう少し勉強しておくべきだったと感じた部分はあるか」という質問に対しては「これまで自分が触ったことがないメーカー製品のコンフィグ設定は事前に勉強しておけば良かったなと思いました。そこで無駄な時間を取られてしまうことが結構起きてしまいましたし、マニュアルはネットで無償公開されています。製品のバージョンが違ってもそう大きな違いはありませんから、ざっと見ておくだけでもかなり違ったと思います」という。

そして、STMの活動において「ネットワークをゼロから構築できる経験」以外にも今後仕事で活かすことができそうなスキルとして、「ShowNetでは機器の配線も含めて来場者に展示しているのですが、養生テープを使ってまとめたり、そのテープにタグを書き込んで分かりやすくしたりするといった“魅せる配線”は意外に学べる場が少ないと思いますし、自分でも経験がなかったのでかなり勉強になりました」といった点を挙げてくれた。また、「所属や年齢を問わず多様な人と活動できたこと自体もとても刺激になりましたが、仕事ではコロナ禍以降テレワークが中心だったので、久々に対面での作業ができたというのが純粋に楽しかったですね」と語ってくれたのが印象的だった。

「参加中に気づいたニーズは本業でも絶対に役立つはず」

二人目の深川祐太氏は大学生時代からAITACを受講しており、STMには2019年から自身で応募し参加していた。NTTコミュニケーションズには今年4月に新卒入社している。現在は検証用ネットワークや、ソフトウェアPCルーター「Kamuee(カムイー)」の開発に携わっているという。

同氏はAITACにおいて、最初は座学でOSI参照モデルをはじめとするネットワークの基本的知識を習得。その際実機やクラウドを用い簡単なシステムを構築したという。

AITACのeラーニングプログラムの一部。無料で受講できる講義もあるので、興味のある人はチェックしてみてはいかがだろうか

その後グループワークでの実習編となるSTEP2では、チームで課題に対するアプローチを考え実際の現場で使うことを想定したネットワーク・システムを設計から構築まで行ったという。受講当初は他の分野を専門としていたが、AITACカリキュラムの受講を通じてネットワークやインフラにも興味を持ち、STMに参加を希望したという。

AITACの講師陣には大学教授だけではなくShowNetの構築・運営に責任を持つNOCメンバーであるベテランエンジニアも多数在籍し、業界最新トレンドを踏まえたハイレベルな講義が受けられるうえ、実習では社会人ともチームを組んで共同作業を行う経験が得られる。決して楽ではない活動ではあるがその分だけ自身の血肉になっている実感もあり、同じようにレベルの高い取り組みに携われるSTMに参加するのは自然な流れだったようだ。

深川氏はSTMに参加するメリットについて「1人ではできない大規模なシステムネットワークを、錚々たるNOCメンバーが務めるメンターの皆さんの知見も得ながらどのように構築するかを学べるので、今の仕事においても非常に役立っています。加えて自分たちが作業する中で気付いたニーズは、これからのネットワークを担う高速なソフトウェアルーターの開発にも役立つと思います」と語り、いつか自分が開発に関わるプロダクトをShowNetに提供できるような製品に仕上げたいと抱負も語ってくれた。

AITACが提供する講座は、段階を追って学べるようにStep分けされた、50本近くのeラーニングコンテンツのほか、定期的に開催される演習セミナー・認定試験などかなり充実した内容となっている。AITACカリキュラム委員長の関谷勇司氏は、同団体を設立するきっかけの一つとして「ITインフラとアプリケーション全体を見渡せるフルスタックエンジニア(アーキテクト人材)の重要性は年々高まっているにも関わらず、他の分野と比べて興味を持つ若い層が減っていることに危機感を持っています」と語っており、講師陣やメンターたちも非常に高いモチベーションのもと、手厚いサポートや実践機会を増やしていくことに対する非常に高い意欲を持っていることは間違いない。

もし読者のあなたがITインフラに関してもう少し勉強したいと思う気持ちがあれば、AITACの門を叩いてみるのはいかがだろうか。一方、ITインフラに関わる企業・団体も、今一度AITACが目指す高度な「ITアーキテクト人材」の育成についての重要度について考慮し、AITACへの積極的な参加されることに期待したい。


一般社団法人 高度ITアーキテクト育成協議会(AITAC)
https://aitac.jp