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EVENT | 2020/08/28

オンラインで「ハード演習環境の仮想化」も実装、授業中のTA質問も可能に。AITACが高度なインフラ技術者を育成するeラーニングコンテンツを提供開始

聞き手・文:三浦一紀 写真:神保勇揮
ソニー生命が2019年に実施したアンケート調査「中高生が思い描く将来についての意...

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聞き手・文:三浦一紀 写真:神保勇揮

ソニー生命が2019年に実施したアンケート調査「中高生が思い描く将来についての意識調査2019」によると、男子高校生が将来なりたい職業の1位は「ITエンジニア・プログラマー」という結果だった。

パソコンやスマホが全世代に普及し、「IT社長」がタレントやスポーツ選手のような“夢を掴んだ人”の象徴として語られてきたこともあってか、アプリケーション開発などに携わるエンジニアやプログラマーは人気の職業だ。その上、今年度から小学校でプログラミング教育が必修となったことからも、今後プログラミングは読み書きそろばんと同じくらい基礎的な学問となっていくことだろう。

一方、業界ではそうしたIT製品・サービスを支えるインフラ技術者の育成促進が課題であり続けてきた。高いセキュリティ技術、クラウド活用の知識、IoT製品やドローンなどの普及に伴って求められるハードや部品に対する造詣など、最新技術を理解して既存のワークフローとIT技術導入の設計融合を指揮することのできる人材=「アーキテクト人材」は未だ一握りなのが現状だ。

一般社団法人高度ITアーキテクト育成協議会、通称「AITAC(アイタック)」は、そんなアーキテクト人材を創出すべく、企業・大学が協働し2017年に設立された団体だ。対象となるのは学生から、すでに社会人として働いているエンジニアたちまで幅広い。そのAITACが、オンラインで演習を受けられるeラーニングプログラムを開始した。まずはその紹介動画を観てみよう。

対面の演習をオンライン上で実現する新しいeラーニングシステム

この動画では、東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授 であり、AITAC カリキュラム委員長を務める関谷勇司氏が「これからの世界に求められるITインフラ人材育成」というテーマで、なぜアーキテクト人材の育成が急務なのかを解説している。

ITインフラ技術者の仕事といえば、昔は社内にサーバを設置し、ルーターなどのネットワーク機器を接続し、企業の要望に合わせたネットワークシステムを構築するというものだった。いわゆる「ネットワーク管理者」「サーバ管理者」としての業務だ。そして、その上で動かすアプリケーションは専門のエンジニアが開発するということが多かった。つまり、ITインフラとアプリケーションはまったく別の部署が担当していたのだ。

しかし、現在のITインフラはクラウド上の仮想サーバを使用することが増えた。そのため、ITインフラとアプリケーションの境目があいまいになりつつある。

そこで今一番求められるのが、ITインフラとアプリケーション全体を見渡せるフルスタックエンジニアだ。もはやITインフラとアプリケーションは別物ではなく、シームレスな関係にあるものとなっているため、両方について知識を持ち合わせている人材が必要なのだ。

AITACは、そんなフルスタックエンジニアをはじめ、アイデアを具現化できる知識・経験を兼ね備えたアーキテクト人材、ITインフラシステムを運用できるエンジニアなどを育成するために設立された団体。これまでは、実際にルーターなどを使った演習を行うなど、セミナー形式での授業がメインだった。

しかし、コロナ禍においてセミナー形式の授業を行うことが困難に。そこで、演習などもオンラインで行える新しいeラーニングシステムを開発した。

このシステムでは、講師の動画を観るだけという従来のオンラインセミナーとは異なり、チャットツール「Discord」を使い参加者全員でのハードウェア演習をオンライン上で実現。そして、質問がある生徒はTA(ティーチングアシスタント)がDiscord内の別のチャットルームで1対1の質問を受け付けるなど、実際の演習に近いことが行える環境となっているのが特徴だ。

AITACの育成プログラムはSTEP1からSTEP3までの3段階用意されているが、そのうちのSTEP1の演習を6月からオンラインで実施している。今後は、このeラーニングシステムを活用することで、コロナ禍においてもフルスタックエンジニアの育成を行っていくとのことだ。

好評だった「広く浅く網羅する」はそのまま、オンラインでも対面授業と変わらないシステムを構築

AITACが、なぜこのようなeラーニングシステムを開発するに至ったのか。関谷氏にお話を伺った。

―― eラーニングの取り組みが始まった経緯を教えてください。

関谷:AITACは、ITシステムの構築から運用までを行えるフルスタックエンジニアを育成することが目的です。そのためには、専門的なことに特化して教えるというよりも、広く浅く学ぶ必要があります。ITインフラにはたくさんの学ぶべき技術要素がある一方、この「網羅する」ということができている育成プログラムがほとんどなかったことから、受講者や企業から高い評価をいただいておりました。

以前は定期的に教室に集まり、実際にルーターを使ってネットワーク演習などを行っていたのですが、コロナ禍においてそれも難しくなりました。そこでオンラインで学習するシステム、eラーニングの開発を、従来の計画を大幅に前倒しして急ピッチで進めました。

―― 具体的にAITACのeラーニングシステムの特徴はどんなところでしょうか。

関谷:既存のプログラミングセミナーでも「仮想化した環境でインフラを構築する」という講座は数多く存在しました。ただ、それは既存のハードウェアの上で動くソフトウェア的なインフラを構築することであって、「既存のハードウェアの仕組み」自体を理解してほしいというのがAITACの考え方です。これまでは実際にルーターなどの機器を使ってシステムの仕組み・土台部分の働きを理解してもらっていましたが、実物を使わない「ハードウェア演習環境の仮想化」ともいえるシステムをどのように構築するかというのが今回のeラーニングプログラムの1つの大きなチャレンジでした。

今回は画面上にルーターのイラストを表示し、そこにケーブルを接続することで、どうやって通信が行われているのか、どのようにしたら正しく通信が行えるのかを、実機を使ってやる演習と同じように行えるシステムを構築しました。

加えて、リアルタイムでのオンラインセミナーでは質問がある生徒さんがTAに質問することができます。その場合はDiscord上の別室でTAと1対1になることができるので、実際の演習と同じような感じで進められるのが特徴です。

―― そもそもなぜ、アーキテクト人材を増やすことが重要なのか、改めてお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

関谷:これまでの国内IT業界の課題として「インフラエンジニアだからプログラミングが全くできなくてもいい、プログラマーだからインフラは全くわかっていなくてもいい」といった風潮が少なからず存在していたことを問題視しています。

例えばオンラインゲームのバックエンドとなるサーバ群を組み立てるケースを考えると、AWSを使えばリージョンを分けて世界各国に分散させることはできますけど、そもそもそれを分散させる意味、仕組みを理解せずに作ってしまうと、やはりそこで耐障害の仕組みとして間違ったつくりをしてしまうケースが出てしまうわけです。

あとはサーバがあることをあまり考慮せず、アプリケーション側で好き放題作ってしまうと、通信量が多い仕組みを作ってしまい、ユーザー数が増えた途端に動かなくなってしまうということが起こり得ます。技術者全員が両方を知る必要はないかもしれませんが、そういう人材が社内にいないまま作られたサービスは危険だと思います。

こうした人材はIT業界だけでなくて、IT化が進んでいない分野にも本当は必要だと思うんです。IoTやドローンなどでも、それを操作する、データを溜め込んで解析するみたいなところも当然クラウド技術が必要ですが、それをどう設計すれば製品が日本全国に普及した時でも問題なく動くのかというところを考えられる人材、つまりアーキテクトがもっと出てくると日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)もより進んでいくんじゃないかと思います。

―― eラーニングプログラムの対象者はどんな層を想定しているのでしょうか?

関谷:1つは「若手の社会人」です。入社して2~3年経過し、社内でやってきたこととIT業界全体の動きとを比べながら振り返り、今後自分がステップアップしていくためにはどのあたりの技術に詳しくなるべきか、あるいはどの方向性に向かっていくべきかを総ざらいで見直すために役立てていただきたいと考えています。

また、これらの講座はIT知識を持っていない、大学の学部1年生向けにも展開して受講してもらっています。カリキュラム自体は同じですが、教え方はより概念的な話を中心にしています。技術そのものというよりも「どうしてこの技術は生まれたのか、どういう仕組みで動いているのか」「普段使っているスマホアプリを支える仕組み・土台はこういうものなんだよ」という本質を理解してもらうことが目的です。

―― これまでは対面での演習が行われていたわけですが、このeラーニングシステムが開発されたことにより、地方在住の方なども受講できる機会が増えそうです。

関谷:そうですね。実際、地方の事業者さんから相談を受けることもあります。以前ならば、月に1回東京に来ていただいて演習を受けていただく必要がありましたが、このeラーニングシステムができたことで、地方の方も負担なく受講できるようになると思います。

―― 今後の展望を教えてください。

関谷:より幅広い人たちに育成プログラムを受講していただけるよう、eラーニングを活用していきたいと思っています。また、最新の動向をエンジニアのみなさまにお伝えできるよう、短期集中セミナーなどもテーマごとに開催していきたいと考えています。

AITACとしては、さまざまな分野・業界でITの技術を発揮できるエンジニアを増やしていきたいと思っていますし、そのような人材はこれからの社会に非常に有用だと考えています。AITACで学んだということがより価値のあるものになるよう、我々の存在価値をどんどん示していけるようにしていきたいと思います。

未来のフルスタックエンジニアよ、AITACに集え!

AITACのeラーニングは、動画による講義とオンラインによる演習のセットが5万5000円(税込)で受講できる。動画はテーマ別に49本。この動画をすべて観るだけでも、かなりITインフラの全貌を理解することができるだろう。もちろん、オンライン演習を受講することでその理解はさらに深まるはずだ。

座学だけではなく演習もオンラインで。AITACのeラーニングは、次世代のフルスタックエンジニア誕生の可能性を大きく広げるものとなるだろう。


AITAC e-learning