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  • 2018.08.09
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ITで発展する沖縄・最新レポート・日本のグローバル拠点、「沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)」始動! 「ISCO Forum2018」イベントレポート

今年5月、日本を代表する観光地の沖縄が、官民共同で「沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)」を設立し、本格的な動きを見せている。

そのお披露目イベント「ISCO Forum2018」が7月12日に開催され、ISCO関係者をはじめとするキーパーソンが顔を揃えた。地場産業×ITで地域振興を目指す動きはどのエリアにも見られるが、沖縄県知事の故・翁長雄志氏、副知事の富川盛武氏の両名が揃って列席するあたりにも、沖縄が見せる本気度が表れている。また、会場には多くの人が詰めかけ、満席・立見となった会場からは多方面からの注目度の高さが伺えた。

国内はもとより、アジア、世界展開を目指す沖縄は、日本のフロントランナーとして21世紀の成長モデルとなることが期待されている。そんな沖縄のこれからのグローバル戦略を探るべく、FINDERS編集部はISCOのイベントに密着した。

取材・文:庄司真美 写真:米田智彦

会場の「沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハ」には大勢のビジネスパーソンや取材陣が詰めかけた。

企業や行政のイノベーション・ハブ組織「ISCO」の役割とは?

ISCOが置かれた、那覇市内にある「那覇市IT創造館」

ISCOは、沖縄でITイノベーションを起こし、新しいビジネスやサービスを創出する拠点として発足。その具体的な役割は、自治体や企業のビジネス支援をすることにある。

特筆すべきは、ISCOのメンバーは行政にありがちな縦割り人事ではなく、さまざまなプロフェッショナル集団で構成されている点。現在、ISCOでは、行政のプロフェッショナルやテクノロジーの専門家など、19名が在籍。今期中に35名、来期には70〜80名体制へ拡大するという。

ISCOのワークルーム

理事長に就任した中島洋氏は、日本経済新聞社を経て、国際大学主幹研究員・教授でMM総研所長などを歴任する、ITジャーナリズムの第一人者だ。

また、専務理事で、ベンチャーの経営者でもある永井義人氏は、今後の活動への意気込みについて、次のように語っている。

ISCO理事長の中島洋氏

写真右/ISCO専務理事の永井義人氏は経営者でもある。

「一生勤める会社だと忖度が生まれるけど、そうではなく、各分野のプロフェッショナルが目的意識を持って集まり、生まれた組織がISCOです。そういう意味でも、これからリベラルで真剣な議論ができると期待しています。寄せ集めのチームですが、世の中を変えるチームになると思っています。これまで沖縄県だけでは実現できなかったことに取り組んでいきたいです」(永井氏)

また、沖縄県知事の故・翁長氏と副知事の富川氏は、ISCOの役割と重要性について、次のように語った。

「今、ITイノベーションを次世代の産業に生かしていくことが求められています。ISCOが産業連携の司令塔となり、新たな価値創造やヒト、モノ、カネ、情報が集まる、ITイノベーションアイランド・沖縄を目指していきたいと考えています」(翁長氏)

「沖縄で観光業が好調な今こそ、次の成長セクターをビルトインして発展させるための大事な時期にあります。特に沖縄では、情報産業は観光の次に来る重要な産業と位置づけています。これまでの経済発展の歴史の中で、千載一遇のチャンスである今こそ、日本をリードし、沖縄が日本のフロントランナーとして21世紀の成長モデルとなれるよう、ISCOを機能させていきたいと考えています」(富川氏)

冒頭の挨拶として、沖縄の未来について語る沖縄県知事の故・翁長雄志氏。

沖縄国際大学の学長を務めた経歴を持つ副知事の富川盛武氏(写真左)

ISCO理事長の中島洋氏は、ISCOの役割について、「地域、事業、人の課題解決などのワンストップ支援窓口」であると表現。その上で、今後の展開について次のように述べた。

「ITがもたらすイノベーションを沖縄の強みである観光業をはじめ、物流業、製造業、農業、金融などの各分野へ応用したいと考えています。その手段として、共創テストベッド、スタートアップ支援、事業マッチングを通じて新ビジネスや新サービスを創出し、全国、全世界への展開を目指していきます」(中島氏)

ISCOが重点領域とするのは、AI・IoT、サイバーセキュリティ、ツーリズムテック、フィンテック、ロボティクス、シェアリング・エコノミー、データドリブン・エコノミーの7分野だ。これらについて、沖縄とどのように結びつけていくのか、中島氏の説明をもとに紹介していきたい。

沖縄×AI・IoT、ビッグデータ、サイバーセキュリティ

中島氏は沖縄でのAI・IoT、ビッグデータのビジネスの活用例として、次のようなことを挙げた。

「沖縄にはあらゆる国からの観光客が増えているので、今後、日本の玄関口としてセキュリティのための顔面認証などの必要性が高まると考えています。また、ダイビングショップなどでは、サンゴの白化現象を分析したり、見分けたりする技術が環境保護活動に応用できます。実際にその仕組みを作り、発表したことで、AI学会からも好評を得ています」(中島氏)

さらに、沖縄には観光や気象データが豊富に揃い、そのビッグデータを生かしたビジネス活用も考えられるという。

沖縄×サイバーセキュリティ

次に、世界的にも脆弱だといわれている日本のサイバーセキュリティの強化にも力を入れたいと語る。こうしたノウハウを蓄積して強化することで、グローバルに展開することも視野に入れているという。

「サイバー攻撃からの防御に関しては、日本は世界一脆弱とさえ言われています。日本の法律では、“不正アクセス禁止法”により、人のコンピューターに侵入することが禁じられています。防御のために入ることが難しいことから、ウイルスが発症しても、迅速な逆解析が追いつかないのが現状。その例外地として、沖縄は適しています。沖縄で実証実験をした上で合法化すれば、サイバーセキュリティの強化を日本全体に波及できるのではないかと考えています。さらに、今後こうした技術を高めていくことで、專門家の人材育成の場としても機能し、国内やアジア諸国などからたくさんの人材が集まることも考えられます」(中島氏)

沖縄×ツーリズムテック

また、沖縄といえば日本有数の人気の観光地だ。年々、アジアをはじめとする諸外国からの観光客の増加で、インバウンド需要が増えている。観光産業と結びつくIT活用について、具体的に説明がなされた。

「沖縄は世界中から旅行者からの満足度の高い場所として人気がある一方で、通訳ができる人材の確保に苦労してきました。今後は、多言語化されたデジタルコンシェルジュ、VR/ARガイドなどのインバウンド対応支援により、これまで以上に満足のいくおもてなしが可能となり、観光地としての価値を高められると考えています」(中島氏)

沖縄×フィンテック

それから、県内外をはじめ、グローバルに展開できるノウハウとして、沖縄でのキャッシュレス決済、ソーシャルレンディング(融資仲介サービス)、トランザクションレンディング(取引データを活用した融資サービス)などのフィンテック事業についても言及。沖縄県をサンドボックスに新システムの実証テストをすることのメリットを次のように語った。

「たとえば、仮想通貨の普及が進んだ中国では、現金をほとんど使わずに済みます。さらに、使用履歴や店の売上などのデータをもとに、これまで数カ月かかっていた融資の審査が、たった30分程度で下りるようになるのです。そうしたフィンテックのサービスは海外では普及が進んでいますが、日本は立ち遅れているのが現状。大手金融の動向も含め、日本で新たなシステムの普及を図るのは、法整備も含め時間がかかります。だからこそ、沖縄の離島などで実証テストをして、スムーズに普及促進できればと考えています」(中島氏)

沖縄×ロボティクス

中島氏によれば、耐重量性、飛距離、AI搭載などの機能が進化しているドローンを活用し、離島との物資の運搬に役立てるなど、沖縄らしいドローンの使い方をイメージしているとのこと。

「ドローンの機能がますます進化していくことを前提に、将来のドローンのあり方をいち早く見据えて、沖縄にどんなドローンがあったらいいかをイメージして開発を進められればと思っています。具体的には、本島と離島の物資のやりとり、それから社会課題を解決するために役立てていきたいです」(中島氏)

沖縄×データドリブン・エコノミー

日本各地でシェアリング・エコノミーの動きは活発だが、沖縄でも先行して取り組みたいと、中島氏。

「沖縄には、顧客ターゲティング、消費予測、渋滞予測といった膨大な観光データが揃っています。そうしたデータは、ほかの地域にも応用できることがたくさんあるので、沖縄がその分野をリードしていけたらと考えています」(中島氏)

沖縄出身の世界的イノベーター・玉城絵美氏の活動から見る、ISCOの必要性

イベントでは、講演者として沖縄出身の研究者、玉城絵美氏が登壇。玉城氏は、コンピューターが人の手の動作を制御する装置「Possessed Hand(ポゼスト・ハンド)」を発表したことから、世界的に注目を集め、米『Time』誌が選ぶ50の発明にも選出されている。2015年にはKickStarterのクラウドファンディングで、世界初の触感型ゲームコントローラー「UnlimitedHand」を発表。わずか22時間で目標金額を達成した偉業を持つ、触感認識研究のプロフェッショナルだ。

触感を体感できるゲームを実演。電気刺激により、手がハッキングされたように動く仕組みを利用して、ゲーム内に出てくる障害物の触感を体感できる。

玉城氏が取り組んできたのは、VRやARを通じて、人に触感や身体感覚を伝達する“BodySharing”の研究とその普及をすること。今でこそ優れたイノベーションが世界的に認められた玉城氏であるが、これまでとても困難な道を歩んできたという。そうした立場から、ISCOのような起業支援組織の必要性について次のように述べた。

「“BodySharing”の普及にあたって、会社を設立したり、他分野での実験や追加技術の開発をしたりするために、さまざまな知識が必要でした。たとえば、投資や特許、企業間の紛争、金融、会計といった経営知識など。それから、生産に対する知識もなかったので、量産システム、品質管理、マーケティング手法を会得する必要がありました。さまざまな支援先にお世話になりましたが、組織がバラバラなので、出張も多く発生しました。また、ベンチャーなので、開発のための実証実験が難しく、他機関に潜り込ませていただいて研究を続けるなど、大変なことがたくさんありました。このたび、ISCOが設立されたと聞いて、あの時ISCOがあれば本当に助かったのにと、心から思います」(玉城氏)

多方面からISCOに寄せられる期待

パネルディスカッションでは、地元のベンチャーの経営者も登壇。ちゅらデータ代表取締役社長の真嘉比愛氏は、ISCOについて次のように語った。

「ISCOのような組織が沖縄で生まれることに価値があると思っています。ITとなにかを組み合わせることは、世界的なムーブメント。私たちもその一力となる働きをしながら、各ジャンルの企業とディスカッションして、沖縄から新しいものを発信していきたいと考えています」(真嘉比氏)

「沖縄での賃金の安さ、最先端の仕事がないといった問題を変えていきたい」と語るちゅらデータ 代表取締役社長の真嘉比愛氏(写真中央)。自社だけの取り組みではなく、沖縄にデータサイエンティストやITエンジニアを育成し、県内で働きたい業界ナンバー1を目指していきたいと豊富を述べた。

後半、こうした活動報告を受けて、モデレーターを務めた、情報通信事業のコンサルタント事業を手がけるクロサカタツヤ氏は、次のようにコメントしている。

「玉城さんが開発する“BodySharing”がもっと沖縄で普及すれば、世界中の観光業にも応用できるかもしれません。玉城さんがこれまでやってきたことは、言わば“1人ISCO”的な活動。玉城さんは沖縄のご出身ですが、イノベーションが起こる場所には、米シリコンバレーやスペイン・バルセロナなどに象徴されるように、温暖な気候、開放的な気質、交通の要衝、そしておいしい食べ物や飲み物が揃うといった特徴があります。環境がいいとそれだけで人が集まり、ビジネスが生まれ、文化が育ち、互いに支え合うことでより強化されていきます。そうした条件に、沖縄は合致するのです。沖縄では最近、世界で初めてウニの養殖に成功したニュースがありました。また、沖縄県医師会がTポイントと提携することで、健康の意識改革と検診の普及に努める動きもあります。今後、沖縄でイノベーションが期待されるテーマとして、食とヘルスケアは外せません。ISCOの登場により、産業団体へのサポート体制が整うことで、今後、さまざまなイノベーションがスムーズに加速することを期待しています」(クロサカ氏)

さまざまな方面からISCO発足への熱い期待が寄せられた「ISCO Forum2018」。沖縄が日本のフロントランナーとして成長モデルとなり、沖縄が日本のシリコンバレーとなる日もそう遠くはないかもしれない。

レポート続編では、7月13日に「ISCO Forum2018 Day2」として開催された、ISCOとの連携企業によるセミナーの模様を紹介します。こちらもお楽しみに。


ISCO

※翁長沖縄県知事は、8月8日に永眠されました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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