ITEM | 2021/04/14

紙、スマホ、タブレットで、記憶の定着に最も効果的なデバイスが、東京大学の研究で明らかに

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文:汐里
小中学校で使うデジタル教科書の本格的な導入に向けて、文部科学省...

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文:汐里

小中学校で使うデジタル教科書の本格的な導入に向けて、文部科学省ではさまざまな取り組みが行われている。DXが叫ばれる昨今の状況を踏まえると、当然の流れだろう。

しかし、そんな教科書のデジタル化の流れに待ったをかける、研究結果が先月、『Frontiers in Behavioral Neuroscience』に掲載された。

紙の手帳を用いると脳が活性化

東京大学とNTTデータ経営研究所が共同で行った研究で、人間の脳は、デジタルツールより、物理的な紙に書いたときの方が、より情報を記憶できることが分かった。

研究には、18歳〜29歳の大学生と社会人48人が参加。3グループに分けられた参加者が、会話文の中から14種類の予定を抜き出し、2カ月間の架空のスケジュールを記録する実験を行った。それぞれのグループは「紙の手帳にペンで書き込む」「タブレットのカレンダーアプリに専用ペンで書き込む」「スマートフォンのカレンダーアプリにタッチスクリーンで書き込む」とそれぞれのスケジュールを書き留めた。

すると、記録に掛かった時間はそれぞれ、紙の手帳が約11分、タブレットが約14分、スマートフォンが約16分という結果に。すなわち、紙の手帳を使う方が、デジタルデバイスを用いた場合より、短時間で書き終えたということだ。

また1時間後、脳の機能活動を画像化する「fMRI」で参加者を測定しながら、スケジュールに関する問題を解いてもらったところ、正答率に差はなかったものの、一定の直接的な設問については紙の手帳のグループが、タブレットのグループより高くなった。また、紙の手帳の参加者は他のグループに比べて、言語や想像力に関わる前頭葉や記憶などに関わる海馬が活性化していたことが判明した。紙を使用することで、場所などの空間的な情報と書き込んだ情報を結びつけて、記憶を定着させている可能性を示唆している。

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