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2000万円のクルマも即完売!アメリカでキャンピングカーが静かなブームを迎えているワケ【連載】幻想と創造の大国、アメリカ(21)
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  • 2020.12.03
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2000万円のクルマも即完売!アメリカでキャンピングカーが静かなブームを迎えているワケ【連載】幻想と創造の大国、アメリカ(21)

自分の広大な土地を貸し出すキャンプ場版Airbnbも人気

トラックで牽引するこれらのモデルはあちこちを旅行するのには適していないが、新車でも200万円ほどから入手できる

何よりも大きな変化は、これまでRV車専門店がターゲットにしてこなかった人たちが興味を抱くようになったことだ。

筆者の夫もそのひとりだ。夫はマイレージ会員になっているアメリカン航空で10年以上前に「生涯プラチナ会員」を獲得し、毎年最上級の「エグゼクティブ・プラチナ会員」を達成するほどビジネス利用が多い。それで長距離移動に飽きるどころか、プライベートでも旅行好きでこれまでに100ヵ国以上を訪問した。その彼が、パンデミックのさなかに「飛行機に乗らなくなってみたら、別に寂しいとも恋しいとも思わなくなった。飛行機に乗って異国に行かなくても、アメリカ国内に美しい景色の場所は限りなくある。これからはそういう所でハイキングやカヤックをして自然を楽しみたい」と言い出したのだ。

RV産業について造詣が深いザガミ氏の紹介で夫がコンタクトを取ったのは、メイン州で最も人気が高いRV車専門販売店「Lee’s Family Trailer」のオーナー、ダン・クラッフィー氏だ。

ボブ・サガミ氏とダン・クラッフィー氏

RV車でよく知られているのは、観光バスぐらい大きなモデルやトラックで引っ張るタイプのものだろう。だが、現在人気なのはコンパクトな車だという。

コンパクトなRVの中で現在最も人気があるのが、メルセデス・ベンツの四輪駆動のバンをキャンピングカーに改造したWinnebago® 4x4 Revel®だという。他のキャンピングカーとは異なり、舗装されていない場所を運転できる「オフロード」で、ソーラーパネルとパワフルなバッテリーのおかげで「オフグリッド(送電網につながっていない状態)」になれるからだ。最低限の付属品を加えると2000万円を超える価格だが、それでも全米で売り切れ状態になっている。

このWinnebago 4x4 Revelを選ぶのは、これまでのRV車の典型的な顧客である引退した高齢者夫婦ではなく、もう少し若い年代のアウトドア派である。大きなRV車が行けない大自然の真ん中に行き、そこを拠点にハイキングやカヤックをすることができる。小さいがトイレとシャワーもあるし、調理もできるので、他人と部屋を共有する必要もない。だから、パンデミックのさなかに他の州を訪問してもホテルで自主隔離する義務はないのだ。

キャンプをした農家から、採れたての卵のプレゼント。キャンプに行く人も、自分の土地をキャンプ場にする人も、パンデミックで欠乏している人と人のふれあいを恋しがっている。

このRV車ブームと無関係ではないのが、Airbnb(エアビーアンドビー)のキャンプ場バージョンとも言える民泊サービス「Hipcamps(ヒップキャンプス)」だ。自然の中に大きな土地を持っている地主が自分の土地内にキャンプ場を作り、それをインターネットで貸すシステムとなっている。

ヒップキャンプスでみつけた個人所有の土地でキャンプ。全長20kmの森のトレイルをハイキングし、湖でカヤックもできる

Hipcampsのほかにも、年会費を払えば全米のワイナリーやビール醸造所などにRV車を停めてキャンプをさせてもらえるHarvest Hosというプラットフォームなどもある。

アメリカでは、パンデミックをきっかけに、人々の働き方も大きく変わろうとしている。ある企業でCEOを務める友人は、オフィスに近いボストンの中心地に自宅を持っているが、パンデミックで自分を含む多くの社員がリモートワークをするようになってからは、自然の中にある別荘で過ごすことが増えた。すると、無駄な会議をカットするのが容易になり、「これまでのような働き方はしなくてもいいのではないか?」と思うようになったという。

Winnebago 4x4 Revelのオーナーだけが加わることができるFacebookグループがあるのだが、そこには、自宅を売ってこのRV車で暮らしている人もいる。そのうちの一人は写真家で、アメリカを横断して写真を撮っているようだ。最近ユタ州の砂漠の中でモノリスが現れて消えた珍事件があったが、メディアが報じる前にグループで「長年の友人の写真家がモノリスの写真を撮った後に男性たちが現れてそれを取り除いた」とシェアしてくれた。このRV車があれば砂漠の中でも数日冒険ができるし、世界中と繋がることもできる。自由な働き方の可能性を感じる出来事だった。 

アメリカ人の働き方の変化と遊び方の変化は、COVID-19のワクチンが行き渡ってからもそのまま残ると考える人は多い。つまり、2019年以前の世界にはもう戻らないという考え方だ。

そう考えている人たちは、世界が「元に戻る」のを待ってはいない。新しい世界での人々のニーズを考え、すでに行動に移している。


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