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PARTY・伊藤直樹氏と語る「YouTuberの熱量に負けない、クリエイティブにおけるチームワークとは?」「FINDERS SESSION VOL. 1」動画・レポート
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  • 2018.06.28
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PARTY・伊藤直樹氏と語る「YouTuberの熱量に負けない、クリエイティブにおけるチームワークとは?」「FINDERS SESSION VOL. 1」動画・レポート

テキストベースではこぼれ落ちてしまう感覚を生の声で届けたい。オンラインだけでなく、オフラインでもFINDERSならではの知識を共有する場が設けられた。

「クリエイティブ×ビジネス」をテーマにした本誌『FINDERS』。4月10日に正式ローンチしたことに伴い、4月20日に公開トークイベント「FINDERS SESSION VOL.1」が行われた。今回の議題は、「クリエイティブ起業論」&「コ・クリエーション(共創)の秘訣」。

登壇者は創刊編集長の米田智彦。そしてスペシャルゲストとして、クリエイター集団「PARTY」CCOの伊藤直樹が招かれた。会場は中目黒にある株式会社シー・エヌ・エス のコミュニケーションラウンジ。ローンチ直後にもかかわらず、耳の早い読者の予約で満席となり、これからのクリエイティブの道しるべとなるアイデアが数多く披露された。

文:高岡謙太郎 写真:神保勇揮

伊藤直樹 Naoki Ito

PARTY クリエイティブディレクター

1971年静岡県生まれ。早稲田大学卒業。テクノロジーとストーリーテリングの融合を追求するクリエイター集団「PARTY」の CEO。これまでに Nike 、Google、Sony、無印良品など企業のクリエイティブディレクションを手がける。「経験の記憶」をよりどころにした「身体性」や「体験」を伴うコミュニケーションのデザインは大きな話題を呼び、国際的にも高い評価を得ている。2016年、Fast Company誌が選ぶ世界の「The Most Creative People in Business 1000」に選ばれる。最近の作品に、成田空港第3ターミナルの空間デザインやサンスターのハミガキIoT「G•U•M PLAY」、インスタレーション「でじべじ」の総合演出など。経済産業省「クールジャパン官民有識者会議」メンバー(2011、2012)。NYの国際広告・デザイン賞ONE SHOWの国際ボードメンバー。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。事業構想大学院大学客員教授。

ダイジェスト動画はこちら↓

現場主義者が訊く、クリエイティブ最前線の現場

FINDERS編集長・米田智彦

まずは米田智彦による『FINDERS』創刊の紹介と自己紹介から始まった。さまざまな媒体で編集やライティングに関わり、東スポの一面にチラッと映ったことがあるという零れ話も飛び出た。メディアに関わりながら、一冊の書籍から人生の転機が起きたという。それがシェアリング・エコノミーについていち早くまとめた書籍『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』だ。そこから家財道具を処分して、東京都限定でさまざまな場所に泊まり歩きながら働くという「NOMAD TOKYO」というプロジェクトを行い、GoogleのCM出演などが舞い込むようになったという。その他の事例も含め、一貫して現場主義であることが伝わる来歴を語った。

そして『FINDERS』の編集方針に関しては、「クリエイティブと名付けるとどうしても広告代理店関連を連想しがちだが、さまざまなジャンルのクリエイティブを取材して発信していきたい」と広い枠組みを設定し、セレンディピティの高いメディアとして運営していく意気込みを聞かせてくれた。

続いて、仕事先の沖縄から急いで会場に向かい、10分前に滑り込んで到着した伊藤直樹氏にマイクが渡された。普段はPARTYで企業のブランディングを行うが、最近では企業のミッションもつくり、何をする会社なのかを一緒に考える機会が増えたという。

直近のテーマは、「クリエイションの拡張」を意識した活動。まずは、3つのクリエイティブのレイヤーを説明した。ネットのクリエイティブは、番組をつくる「コンテンツクリエイティブ」だけでなく、AbemaTVのようにテレビの枠組みをつくる「メディアクリエイティブ」も増えた。そこからもっと大きな枠組みでの経営者の視点を持った「ビジネスクリエイティブ」につながっていく。

「今までクリエイターは制作の経験しかなかった。PARTYを運営して、それではいかんということを痛感した。制作だけでなく、運営などサービスを回した経験があることも重要。そして、自分たちはビジネスクリエイティブの観点から発信していることが多い。今後、コンテンツをつくっているだけのクリエイターは間違いなく職を失うと思う」(伊藤)

そして意外なことに、伊藤自身は現在YouTuberなどのネットクリエイターに負けている意識があるという。「個人で対峙すると彼らの熱量には勝てない。ただ、集団でやれば勝てる部分もある」。これはPARTYという社名と通ずる概念。ゲームソフト『ドラゴンクエスト』のようにさまざまなスキルを持った人が集団を成して敵と戦うイメージからの影響だ。

議題1「クリエイターが起業家になるために必要なこととは?」

PARTY・伊藤直樹氏

自己紹介から本題であるクリエイティブ企業論について、伊藤氏がワイデンアンドケネディなどの広告代理店で働いていた20代、30代の頃の思い出を交えながら語った。

「みんなアントレプレナー精神を持てと若い人に言うけれど、自分自身が20代の頃はなかった(笑)。当時、自分の表現をつくるので精一杯で、自分の好きなサッカーに例えると、いかに数多く試合に出てシュートを打つことしか考えていなかった。そこから、30代中盤で集団のトップをやることになって、いきなり集団創作を実践することになった。アニメーションスタジオのピクサーでは、かなり高度な分業システムができていることを知って。脚本をつくるにも大勢が関わる構造なので、ひとりの天才が作品をつくっているわけではないと痛感した」(伊藤)

日本のクリエイティブ集団は海外に比べてしまうと、規模や編成を含めてなかなかかなわないのが現状。激しい価格競争が行われる“レッドオーシャン”になってしまう。ただ、最近ではアメリカの代理店で働いていた人がメーカーに転職するなどの流れができ始め、時代が動きつつある実感があるそうだ。

議題2「時代に求められるチームワーク・マネジメント論」 

個人クリエイターやYouTuberには勝てないという伊藤氏の葛藤を元に、チームワークについての持論を展開した。2006年にユーザーが自発的に動画をアップロードするキャンペーンサイト『 NikeCosplay』を手掛けてから個人の制作を見続けてきた伊藤氏には、2018年は個人に勝てない感覚が強くなったという。

「時間が大量にある中学生にはかなわない。現在は個人のクリエイターが世界に遍在していて同時にアクセスできる状況で、5分もあれば世界で有名になれる可能性がある。パソコンのスペックもあがって、作品をつくる機会はもはや均等になった。となると、組織編成されたピクサーに勝てない、個性に特化したネットクリエイターに勝てない、そして産業のスケールでは中国にも勝てない。となると、僕たちは包囲されてしまった」(伊藤)

もはや八方塞がりといえる状況を語る伊藤に、「その鍵はどこにあるんですか?」と米田は問うと、伊藤氏ならではの組織編成のビジョンを提示した。

「会社型やアーティスト型の組織でもなく、僕はサッカー型の組織を考えていて。サッカーは日によって得点を取る人が違う。プロジェクトによって、得点を取るであろう選手が出場できる状況をつくる」(伊藤)

それだけでなく、アイデア出しに関しても経験に即した指針が伊藤氏にはあった。「普通のブレストではダメ。全員の脳をひとつのするのではなく、ずっと一人で考えた沸々としたマグマのような案を打ち合わせで噴火させる。その噴火時の水蒸気で周りを巻き込む。PARTYの場合はブレスト型ではなく、基本的には個人で考えた案を出している」

ラブ&ヘイトを明確にしていく

そういった個人の思いに関して、「ラブ&ヘイト(偏愛)」がものづくりには重要だと米田はつなげた。「なにかに強烈な愛情がある場合は、なにか嫌いなものもがある。感情は表裏一体で、そういう感情がないと何かをつくろうとは思わない」

「好きなものをはっきりさせる。ラブ&ヘイトをはっきりさせるのも重要だけれど、ヘイトも好きになれるようにする。もしくは俯瞰して理由を考えることも大事」と伊藤氏も共感。まずは自分自身と向き合うことが重要なのだろう。

働く場所のUXデザイン

現在、建築物にデジタルの要素も含まれるようになって建築家だけでは考えられなくなり、PARTYにも建築コンペの参加打診が来るようになったという。UXベースで人の流れを考えた上での設計を手掛けている観点を含め、クリエイターの働く場所を変えていく取り組みについて伺った。

「元来、クリエイターは会社に居たくない存在。会社という体裁で囲むとうまくいかない。会社っぽさ、オフィスっぽさを極力なくしていく。フリーの人とゆるやかにつながっていくことが重要。できれば会ったほうがいいのでリモートワークは良くない。オフィスが分散している状況を目指したい」

そういった「ものをつくる人たちが分散的に動き回れて、緩やかなつながりを意識しながら人と会う状況をつくる」という観点の元に、現在PARTYでは代官山と鎌倉にコレクティブオフィス(既につながりのあるクリエイター達が集まって共同制作できる場)をつくり、今後は全国各地にも展開していくという。もちろんこれはシェアオフィスとして経営するのではなく、クリエイターのより良い制作環境をつくるという試みだ。

この後も2人のクリエイティブに関する知見が飛び合い、1時間半のトークイベントは拍手の中で終了した。登壇者の熱量に感化され、参加者同士の交流が自然と始まり、この場から新しいクリエイティブのつながりが生まれていた。

FINDERS SESSIONは今後も定期開催

本イベントは定期開催の予定だ。6月13日に行われた「FINDERS SESSION VOL.2」では、今年2月に新著『福岡市が地方最強の都市になった理由』(PHP研究所)を上梓した、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事である木下斉氏を招いて、「福岡の都市経営論を、いかにビジネスで応用するか」をテーマに議論が進められた。

「FINDERS SESSION」の今後の開催予定は、FINDERSのイベント予告記事、もしくはFINDERSのFacebookページからチェックしてもらいたい。


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