EVENT | 2020/10/29

最も資金調達に成功したスタートアップ企業の「女性創業者」を国ごとにマッピングしてみたら、ある分野が盛り上がりがわかってきた

文:赤井大祐
社長、経営者、会社創業者といえば中年以上の男性、つまり「おじさん」のイメージを持つ人が多いだろう。実際、...

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文:赤井大祐

社長、経営者、会社創業者といえば中年以上の男性、つまり「おじさん」のイメージを持つ人が多いだろう。実際、それは間違っていない。帝国データバンクによると、日本全国の社長の92.1%は男性であり、平均年齢は59.7歳とのことだ。

しかし今、世界ではそんなおじさんたちによって隠れていた女性たちの躍進が始まっている。『Business Financing』はそれぞれの国で最も資金調達に成功したスタートアップ企業の女性創業者を掲載したマップを制作した。その中でもアジア・オセアニア、ヨーロッパ、そして南米の3地域に絞って紹介してきたい。

アジア・オセアニア:調達資金220億ドル。世界一の女性創業者は中国に

アリババ(中国)の共同創業者の一人でもあり、ルーシー・ペンが手掛けるAnt Group(中国)は、なんと約220億ドル(2兆2000億円)もの資金調達に成功した。元々アリババの幹部としてその手腕を発揮していた彼女が手掛ける同社は、「Alipay」の親会社として、注目の集まるフィンテック市場をリードする存在となっている。

日本からは、平野未来氏によって2014年に創業されたCINNAMON AIが登場。ビジネス分野におけるAIサービスの提供を行う同社は30億円を超える資金を調達。平野氏は他にも政府のIT戦略本部会議に参加するなど、活躍の場を広げている。

ヨーロッパ:10億ドルの調達に成功したイギリスのフィンテック企業

2014年にヴィクトリア・ヴァン・レネップ氏らによって創業されたLendable(イギリス)は、機械学習技術を用いて与信判断を行うことで、公正な金利と即日対応を目玉に融資を行うフィンテック企業だ。同社はなんとこれまでに総額10億ドル(1000億円)を超える資金調達に成功し、レネップ氏は2018年に「Forbes Under 30」にも選出されている。

他にも2014年にゲーム制作企業Dazzle Rocks(フィンランド)を創業したステラ・ワン氏は約700万ドル(7億円)の調達に成功し、”ソーシャル世代”に向けたサンドボックスゲーム(「マインクラフト」に代表されるストーリーなどの目的を持たないクリエイティブ指向のゲーム)の提供を行っている。

南米:ブラジルを席巻するデジタル銀行サービス

ブラジルでアプリ管理型のクレジットカードや、デジタル銀行サービスの提供を行うフィンテック企業Nubankの共同創業者クリスティーナ・ジュンケイラ氏は約11億ドル(1兆1000億円)の調達に成功している。同氏は、「男女平等やインクルージョン(障害や人種、性別などに関係なく平等に機会を与え、差別などを取り除いていくこと)といった観点から私たちがとってきた選択は、私たち(女性)が最初からずっとここにいた、ということを明らかにしました」「多様性、包摂性といったものを尊重できない昔ながらの企業の多くは、若い優秀な人材をなかなか手に入れることができず、不愉快に思っているでしょうね」と、現代における多様性などの価値観の重要性を語っている。

昔と比べ、ビジネスの領域においても、少しずつ女性の存在感は増しているが、現在も「女性だから」という理由で能力やポテンシャルを見限られてしまうケースは決して少なくないだろう。今後、ビジネスだけでなくあらゆる場所で性別や年齢の壁が取り払われていくことに期待したい。


全国女性社長分析(2019 年)(帝国データバンク)

全国社長年齢分析(2019 年) (帝国データバンク)