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仮想通貨界隈がなにやら騒がしい。ブロックチェーン技術が内包するリスクも表面化してきた。
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  • 2018.06.20
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仮想通貨界隈がなにやら騒がしい。ブロックチェーン技術が内包するリスクも表面化してきた。

Photo By Shutterstock

仮想通貨に対する信頼が揺らいでいる。繰り返される取引所からの流出被害や不正な価格操作疑惑、51%攻撃など、ここにきて多くの懸念材料が揃ってきてしまった。国際決済銀行(BIS)も、17日に公表した年次経済報告の一部で、仮想通貨には根本的な欠陥があるとの認識を示している。市場は打開策を提示できるのだろうか。

文:伊藤僑

またも取引所がハッキング被害に

このところ仮想通貨が軒並み値下がりしている。

その要因のひとつと言われるのが、韓国の仮想通貨取引所「コインレール(Coinrail)」で発生したハッキング被害だ。盗まれたのは数種類の“ERCX20型トークン(ブロックチェーン上で発効した独自コイン)”で、その被害額は4,000万ドル(約44億円)相当といわれる。

盗まれたのが“ビットコイン(BTC)”ではなくマイナーコインだったので、影響は少ないという見方もある。しかし、5億3千万ドル(580億円)相当の“NEM”流出被害にあった日本の大手取引所「コインチェック(Coincheck)」の事件や、1700万XRB(200億円相当)の“Nano”が盗まれたイタリアの取引所「BitGrail」の事件の衝撃から、やっと立ち直りつつある中で起こった流出被害だけに、市場全体への心理面の影響は少なくなさそうだ。

仮想通貨のセキュリティ推進に取り組む「CryptoAware」によると、2018年のハッキング被害はすでに11億ドル(1,216億円)に達しているという。仮想通貨業界全体における不正アクセス対策が不十分なままでは、投資家の仮想通貨に対する購入意欲はますます低下してしまう恐れがある。

トレーダーによる価格操作の疑いも

Bloombergの報道によれば、米司法省はトレーダーによる価格操作が行われている疑いがあるとして捜査に着手したという。今後は、市場の監視も大幅に強化される見込みだ。

米司法省が重点的に捜査しているのは、他人になりすまし見せ玉などによって価格を操作する“仮想通貨スプーフィング”や、同一銘柄の売買を繰り返して出来高が膨らんでいるように見せかける“ウォッシュトレード”などの違法な手口とされる。

捜査には商品先物取引委員会(CFTC)も協力しており、これら価格操作疑惑をめぐる捜査が、仮想通貨続落の原因になっていると指摘する声もある。

ブロックチェーン技術を脅かす51%攻撃

仮想通貨の基盤となっている“ブロックチェーン技術”が内包するリスクも表面化してきた。

ブロックチェーン技術では、複数の端末が一斉に取引を検証する仕組みのため、不正な取引を行うことができないはずだった。

だが、悪意ある者がネットワーク全体の採掘速度の51%(50%以上)、つまり、取引を行っている端末(処理能力)の過半数を占めてしまった場合、不正が実行されてしまう恐れがあるのだ。このような攻撃は「51%攻撃」と呼ばれている。

51%攻撃によって可能になる不正行為には、「不正な取引の正当化」「正当な取引の拒否」「採掘の独占」がある。

正当な取引が拒否され、不正な取引が正当化されてしまったら、仮想通貨そのものの信頼性が失われてしまう。極めて深刻な問題といえるだろう。さらにやっかいなことに、現時点では51%攻撃に対する有効な対策はないのだ。

すでに今年5月には、51%攻撃による被害も発生している。標的となったのは「ビットコインゴールド(BTG)」で、51%攻撃によって、仮想通貨取引所から約1,750万ドル(約20億円)」が盗み出されたとされる。

また、中国のセキュリティ関連企業Qihooは、「イーサリウム(ETH)」も攻撃を受け、2,000万ドル(約22億円)相当のETH が盗み出されたと報告している。

それぞれの仮想通貨に対して51%攻撃を行うために必要なコストを算出し、公開している「51Crypt」によると、ビットコインゴールドに対して51%攻撃を1時間行うために必要なコストは3,858ドル(約43万円)。意外に低コストで攻撃できるようだ。

さすがにビットコインの場合にはずっと高額で、55万3,982ドル(約6,000万円)必要になるようだが、犯罪組織にとっては十分調達可能なコストといえる。

この問題は、セキュリティ上の欠陥や脆弱性に起因するわけではなく、ブロックチェーン技術の仕組みそのものに起因するため対策は簡単ではないだろう。しかし、仮想通貨の普及を進展させるためには、取引の安全性を確保するなんらかの手立てを講じる必要がある。

国際決済銀行も懸念を表明

年次経済報告の一部を公表する国際決済銀行のサイト

国際決済銀行(BIS)」は、17日に公表した年次経済報告の一部で、ビットコインなどの仮想通貨が、国際経済における真の交換手段としての役割を果たすには、あまりにも多くの操作や不正にさらされやすく、過剰な電力を消費し不安定だと指摘した。

また、コンピュータの分散型ネットワークを通じて発行、取引、記録の管理が行われる非集中的な性質についても、重要な強みではなく根本的な欠陥であるとの認識を示している(ブルームバーグ記事より)。

ビットコインなどの仮想通貨が、国際経済における主要通貨のひとつとして認められるには、まだまだ解決すべき課題が少なくないようだ。

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