CULTURE | 2020/06/22

マスクのフィルター効果をアップさせる画期的ゴムバンドを、Appleの元エンジニアらが開発

文:滝水瞳
世界各国で新型コロナウイルス対策の外出制限が緩和される中、第2波を防ぐために欠かせないアイテムの1つがマス...

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文:滝水瞳

世界各国で新型コロナウイルス対策の外出制限が緩和される中、第2波を防ぐために欠かせないアイテムの1つがマスクだ。しかし、うまく顔にフィットしない場合、隙間からウイルスが侵入し効果が薄れる可能性がある。

そんな問題を解決しようと、Appleの元エンジニアが医療用マスクのフィルター効果を高めるゴムバンドを開発した。

開発したのはAppleの元エンジニア

米カリフォルニア州サンフランシスコの非営利団体「Fix The Mask」が考案したゴムバンド「Brace」は、装着したマスクの上から口周りを囲うようにあてがい装着することで、マスクと顔の隙間をできにくくすることが可能だ。ウイルスの侵入を防ぐ「フィルター効果」を高め、医療従事者らを守ることにつながるという。

開発したのは、AppleでMacの設計をしていた元エンジニア、サブリナ・パースマンさん(28歳)。このゴムバンドは誰でも手軽に使えるよう、団体のウェブページで型が無料で公開されているのでチェックしてほしい。

ポイントは密着性

パースマンさんは今年3月、義兄が働いている病院で医療用保護具が不足したことを知り、地元の店から性能が良いとされる「N95マスク」400枚を調達した。しかしウイルス感染が広がり、注文3日目にはマスクが調達困難に。社会がマスク不足に陥ると悟ったパースマンさんは、自らマスクを開発しようとAppleの元同僚らとともに同団体を設立した。

パースマンさんらはまず、N95マスクの研究から開始。分解してみたところ、素材のフィルター効果は一般的な医療用マスクとほぼ同様であることが判明した。決定的な違いは、顔との「密着性」であることを突き止めた。そこで、一般的な医療用マスクもしっかりと顔に密着すれば、N95 マスクと同等の性能が期待できると判断できた。

まず、パースマンさんらは3つの輪ゴムをチェーン状につなげ、真ん中の輪ゴムを口周りに装着するだけのシンプルな方法を発案。米アイオワ大学との研究で、使用した被験者全員がその密着性を確認し、N95マスクと同等の効果があると結論付けた。さらにその研究結果を生かし、工業用ラバーシートで作るこのゴムバンドを開発した。

現在このゴムバンドは、CDC(米疾病対策センター)とNIOSH(国立労働安全衛生研究所)にも検証を依頼している。米国内でN95マスクが品切れになる中、口元がゆったりとした医療用マスクを使っていた医療従事者らにとって最適なアイテムとなりそうだ。

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