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過去20年「変われない日本」だったからこそ、「アフターコロナ」の希望がある(前編)【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(0)
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  • 2020.04.17
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過去20年「変われない日本」だったからこそ、「アフターコロナ」の希望がある(前編)【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(0)

時代が一巡して、「あたらしい意識高い系」の活動が増えてきた

―― 倉本さんが外資コンサルの世界に身を投じた2002年というと、日本でも金融危機があってリストラの嵐が吹き荒れ、バブル崩壊後もうっすらと残っていた“ジャパン・アズ・ナンバーワン”的な自信が完全に打ち砕かれ、“構造改革”が天からの啓示のように重用されていた時期ですね。

倉本:そうそう。だからあの時期は、まだ世間には「日本的なもの」に対するプライドがアチコチにあって、なんとなく惰性でこのまま繁栄し続けられると普通の人は思ってたけど、外資コンサルにいるような人は「この遅れた日本のやり方を根底から覆して改革してやる!」みたいな気分の人が多かったです。

でも逆に、あれから20年経って、今度は日本中で「日本ってもうダメだよね」みたいな感じの空気が蔓延するようになった反面、逆にマッキンゼーにいるような人が「いや、日本のこういうところは欠点ではなく美点なんだ。問題はどうやってその長所を活かすかが大事なんだ」とか言い始めているところがあって、時代が一巡したなって思いますね。

世間で「まだまだ昔の延長で惰性でなんとかなる」という空気が大半だった2000年代前半のあのタイミングで「もう今まで通りじゃダメだ、目を覚ませ」みたいなもの言いは確かに必要だったと思いますけど、今は状況が逆なので「単に欧米のマネをするだけじゃなくて、自分たちのいいところを自覚してもっと活かしましょう」、「しかし一方でこれはズルズル続いちゃってますけど、悪影響が出ているから止めちゃっていいですね」というようなことをちゃんと選り分けて考えていこうという、「あたらしい意識高い系」とでも言えそうな人たちがチラホラ出てきました。

つまり「ローカルに昔からあるもの」を「グローバルな抽象的基準」で上から目線でぶっ叩いて「ダメだねえ」みたいな感じで覆そうとするのが「古い意識高い系」だとすると、そうじゃなくて、短所と長所は表裏一体だから、その「長所」をグローバルな環境変化の中でどう活かしていったらいいのかを考えないといけないんだ、そうすることでやっと「短所」に見える部分も是正できるようになるんだ…というような発想をするのが「あたらしい意識高い系」ってことですね。

SNSの暴走で、「古い意識高い系」の攻撃的な盛り上がりがかなり目立つ時代背景にはなってはいますが、一方でネットを離れたところでのいろんなチャレンジとしては、そういう「長所伸展型で、古い社会を全否定せずにうまく活かしていく」ような「あたらしい意識高い系」が徐々に出てきているのが今だという風に思っています。

メディアの一時的流行から離れたところでないとできない活動もある

―― 倉本さんの文筆家としてのデビュー作は2012年に出版された『21世紀の薩長同盟を結べ』(星海社)です。今に至るまでの8年間はどんなことを考えて活動をされてきたのでしょうか?

倉本:当時なりに必死になって書いた本だったし、物凄い熱烈なファンになってくれた人もいたんですが、ただ大枠で言えば時代のムードに対して早すぎたなと感じていました。

「物書き業」を本業にしてしまうと、長期的に見るとあまり本質的でない出版業界の時々の流行に必死に参加し続けないといけなかったりするんですが、そういう風に「論壇芸人」みたいな感じの仕事をしていてもあまり意味のある変化は起こせないですし、一度距離をおいて実力をたくわえたほうがいいな、と思いまして。

同時に、あの本を凄く熱烈に受け入れてくれた一部のファンの人がけっこういたので、そこから関係ができたいろんなクライアントと、個人経営のコンサルタントとして直接仕事をしているほうが有意義だなと思って、そうしていたら10年ぐらい経ってしまったという感じです。

―― 今も個人でコンサルをされているということですが、どういうプロジェクトがあったんですか、その間に。

倉本:製造業や農業クライアントが言っていることを深く知ったり、若い世代のチャレンジしている人たちとのつながりができたり、付き合う人の幅がより広がった感じですね。

あと、僕は月額1万円、メールの“文通”というかたちでコーチングみたいなこともやっているんですが、利用者には「自分が理想としている教育はこれじゃなかった」ということで小学校教師をいきなり辞めて地域の学習塾を始めたら、一気にキャンセル待ちが続出する大盛況になった女性がいたりします。

その人は「今風に活躍しそう」なタイプではなかったのにそんな展開になったので、やはり「今のメディア的流行」で「現場の人」を裁きにかかるんじゃなくて、「人それぞれのほんとうの長所」をちゃんとエンパワーしていくことを基本にして、すべてを考えていくことが大事なんだな、という風に思い知らされる体験でした。

そういう現場レベルの「長所伸展」をやっていくには、「出版業界」的なものの一時の流行に必死に後追いするようなことからはとりあえず距離を置かないといけなかったんですよね。

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