文:神保勇揮
国際広告代理店のマッキャン・ワールドグループ内のグローバルチーム「McCann Worldgroup Truth Central」は、4月7日に「Truth About Culture and COVID-19 Wave 2(文化と新型コロナウィルスについての真実 第2回調査)」の調査結果を発表した。
同調査はGoogleサーベイ360を活用し、日本を含む世界14カ国(日本、カナダ、フランス、ドイツ、メキシコ、スペイン、英国、米国、コロンビア、トルコ、チリ、イタリア、アルゼンチン、インド)で実施した新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに関する各国・各世代の意識調査で、3月23日から30日にかけて各国の人口構成に相似した集団約1000人、合計約1万4000人からの回答を得た。
各国の調査人数と調査期間
なお、第1回の調査結果は下記の通り。
「日本政府のコロナ対策が整っている」と答えたのは18%、世界14カ国の政府対応は31%が評価。マッキャンWGの国際意識調査より
https://finders.me/articles.php?id=1815
「感染しても自分は大丈夫」と考えている人は24%に減少
まず、自分が新型コロナウイルスに感染する心配をしているかという質問に関して、3月中旬(3月12~21日)に実施した第1回調査時点では、36%の人(調査14カ国平均)が「例えコロナウイルスに感染したとしても、自分は大丈夫だと思う」と回答していたのに対し、今回の調査では「自分は大丈夫」と考えている人は24%に減少した。特に感染が急速に広がった欧米では米国が31%(前回調査58%)と大幅に少なくなったほか、カナダ29%(同54%)、英国27%(47%)など約半数の人々が楽観視していた国で、この2週間ほどで認識が大きく変わったことがわかった。
日本含め各国で軒並みメディア報道の信頼性が高まる
「自分が感染するかもしれない」という現実味が増すにつれ「メディアは不要にパニックを煽っている」と感じている人の数も減っている。前回調査では14カ国平均で42%だった同回答が、今回の調査結果では31%にまで減少した。日本は11ポイント減って45%(前回調査:56%)に。他国では米国35%(同50%)、イタリア24%(同29%)、スペイン23%(同29%)、ドイツ28%(同38%)、フランス34%(同37%)、英国34%(同53%)と各国で軒並みメディア報道の信頼性が高まりをみせた。
感染拡大への不安が60%から70%弱に
新型コロナウイルスの感染拡大に対して「とても心配している」「心配している」と回答した人は、前回調査では調査14カ国平均で53%だったのに対して、今回は14ポイント増加の67%となった。感染者数の拡大に伴って人々の不安が高まっていることがわかるという。
感染者数の増加した国別に「とても心配している」「心配している」の合計値を見ると、米国57%(前回調査:34%)、イタリア67%(同65%)、スペイン76%(同68%)、ドイツ59%(同54%)、フランス74%(同67%)、英国71%(同40%)、日本は64%(同51%)と3月末時点では、どの国でも感染拡大への不安が6割から7割の人々に広がっていたことがわかる。
大規模な経済対策・生活支援政策を打ち出す国では経済的不安が低下
新型コロナウイルスに対する懸念・不安は、感染による死亡者数の増加という人的な被害の増加と、失職や収入減による生活への影響の二つの面がある。
感染死亡者数の増加への懸念を挙げる人は14カ国平均で51%(前回調査:43%)と半数だった。国別に見ると米国で52%(前回調査:34%)、イタリア49%(同49%)、スペイン61%(同:47%)、ドイツ53%(同47%)、フランス61%(同49%)、英国59%(同52%)、日本43%(同31%)と各国とも10ポイントから20ポイント増加している。
失職や収入減による生活への影響への懸念や不安がある人は調査14カ国平均で26%(前回調査:25%)となった。日本では38%(同:5%)と4割近い人々が懸念を抱いているが、一方で経済政策や生活支援政策によって懸念や不安を抑えることに成功している国もある。米国では31%(前回調査:23%)、イタリア23%(同17%)、スペイン24%(同:9%)、ドイツ26%(同27%)、フランス13%(同17%)、英国29%(同20%)という結果となった。
日本では「完全なロックダウンの実施」への賛同が14カ国中最低
新型コロナウイルスの感染拡大防止について、自国政府の対応体制が「整っている」および「とても整っている」と回答した人は、14か国平均では30%(前回調査:31%)とほとんど変わらなかった。日本では前回調査から4ポイント下がり14%(同18%)となった。同質問で前回調査より対応体制の評価が高まったのはインド64%(同55%)、ドイツ33%(同25%)、英国26%(同20%)、カナダ44%(同40%)だった。
また、感染拡大防止のために「完全なロックダウン」政策を実施すべき、という意見に賛同する人は14カ国平均では約4割だったが、日本は調査対象国中では最も低い24%となった。
「人の集まる公共の場を避ける」という人は14か国平均で73%
世界中で感染防止に向けた取り組みを進める機運はますます高まっている。感染防止のために「人の集まる公共の場を避ける」という人は、調査14か国平均で14ポイント増の73%(前回調査:59%)となった。日本は前回調査の45%から8ポイント増の53%という結果となった。
各国別では、3月下旬時点で「外出禁止」などの規制を強めている国では着実に意識が高まっている。国別では米国75%(同49%)、イタリア70%(同68%)、スペイン73%(同73%)、ドイツ75%(同65%)、フランス79%(同77%)、英国84%(同32%)と欧米諸国は7割以上の人々の行動が変わっている。
危機の時代に企業はどう振る舞うべきか
世界の半数の人(および本調査を実施したほぼすべての国の過半数の人)は、今回のパンデミックで「世界は根本的に変わる」と感じているという。しかしその長期的影響の全てがマイナス面なわけではない。パンデミックの暗い側面については広く認識されているものの、多くの人は、家族やコミュニティとのつながりを再確認するなど、この時間を前向きに活用しようとしているという。
今回の調査では、具体的に下記のような傾向があったという。
・3人に1人が「今回の出来事をきっかけに、大切な人たちとの距離が縮まった」とすでに感じている
・3人に1人が「いつも以上に人と人が助け合うようになっている」と感じている
・10人に6人が、今回の出来事は「人生で本当に大切なものを考える機会になる」と考えている
・17%の人が、これを機に新しい趣味を始めている
・18%の人が「人々の信仰心が厚くなる」と考えている
・46%の人が「二酸化炭素排出量が減る」と思っている
今回の結果を受け、マッキャングループのマネジメント層は下記のコメントを寄せた。
「今は、政府や医療の専門家だけでなく、企業の行動と情報発信にも大きな関心が集まっています。これは企業にとって、消費者からの評価を得ることができる稀かつ極めて重要な機会と言えます。企業は、引き続き消費者とのコミュニケーションの中で、消費者の “心情をよく心得た味方”としての適切な表現を用いるよう注意することが大切です。決して現在の特異な状況に便乗していると思われてはなりません。人々がソーシャルディスタンス(社会的距離)を取る必要がなくなった後も、この時期に消費者とともに学んだ価値観や考え方を生かすことが重要です。私たちはクライアントの皆様に消費者の生活の中で意味のある役割を果たし続けるための助言と支援をしています」(マッキャン・ワールドグループの会長兼CEOのハリス・ダイアモンド)
「この調査では、人々が目に見えない恐怖とどの様に向き合い、どの様に克服していくかという意識と行動の変化をリアルタイムで追っています。人々はただ懸念と不安を覚えるだけでなく、パンデミックによって体験することになった新しい社会規範と生活の中で、自分たちが本当に豊かで幸せになるために大切なものは何かを考えています。私たちは生活者とともに、生活者の視点で、生活者の為の知恵を見つける努力をしています」(マッキャン・ワールドグループ(日本)の代表取締役社長 兼 CEOであるアントニー・カンディー)
「本調査では、日本においても他国同様に不安が一段と高まっていることがはっきりと見られます。日本における不安としては、「仕事を失う・経済的に苦しくなる」が個人的な懸念として、今回調査した他の国と比べても最も高い。また、心配事として「生活必需品が足りなくなる」も世界の中で最も高くなっています。ブランドとしては、自社の本業を通じた商品の安定供給、および、従業員のサポートということが、日本では大事なポイントになっていくでしょう。なお、政府によるフルロックダウンが必要だと考える人は、日本が最も少なく24%になっています」(マッキャンエリクソンのプランニング本部長である松浦良高)