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「新型コロナ感染者の個人情報」はどこまで公開されるべきか。日・中・韓政府それぞれに対応の違いも
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  • 2020.03.25
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「新型コロナ感染者の個人情報」はどこまで公開されるべきか。日・中・韓政府それぞれに対応の違いも

Photo By Shutterstock

伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。著書に「ビジネスマンの今さら聞けないネットセキュリティ〜パソコンで失敗しないための39の鉄則〜」(ダイヤモンド社)などがある。

感染者の個人情報を自治体はどこまで公表すべき?

少し前に、新型コロナウイルスの感染者について「ご家族のご意向により、同感染者に関する情報は一切公開することは出来ない」というある県知事の発言をニュースで耳にした。メディア向けに本名や住所を明かす必要はなくとも、感染後の勤務状況や、行動歴から導き出せる濃厚接触者の有無については感染拡大を防ぐために必要なのではないかと疑問を感じたので、自治体が発表している感染者の個人情報について調べてみた。

神奈川県の場合

千葉県の場合

神戸市の場合 

こうして各自治体が発表している感染者の個人情報の内容を見てみると、多少の違いはあるもののほぼ似通ったもの(年代、性別、居住地、職業、症状・経過、行動歴・海外渡航歴、濃厚接触者情報)であることが分かった。

国内で感染者が出始めたころには、対象者の年齢や性別すら隠す事例があったり、逆に乗車した列車の座席位置まで発表する事例があったりと、情報公開内容はバラバラだったが、全国に感染が拡大した現在では、ほぼ統一されてきているようだ。

行動履歴から判明した具体的な場所情報が公開されるのは、ライブハウスやスポーツクラブなどクラスター(集団感染)が確認された場合に限られている。これは、感染した個人が特定されることで、その人や家族などに不利益が生じることが無いように配慮した、個人情報の保護を重視した結果なのだろうと推定される。

行動履歴を活用して感染リスクを低減する韓国・中国

これとは対照的に、各感染者の行動履歴を詳細に公開しているのが韓国だ。政府機関が詳細な感染者のプロフィールを紹介しており、行動履歴を地図上に詳細に表示する民間発のアプリも複数開発されて人気を博しているという。しかしその後、アプリプラットフォーマーであるAppleやGoogleが「政府機関や公的な保健機関、またはそれらと提携したアプリ以外は許可しない」という方針を示し、3月24日時点ではこれらのアプリストアではダウンロードできない模様だ。

中国ではアリババグループが開発している「健康コード」を使って市民の健康状態と行動を管理している。感染が確認された者の行動履歴と各人の行動履歴を照らし合わせることで、感染のリスクを判定するアプリだ。これを見せなければ企業や居住区などに入れない仕組みで、「赤」が表示された場合は14日間、「黄色」が表示された場合は7日間の自宅待機および健康状態の提出が求められる(問題ない場合は「緑」が表示される)。その活用は、すでに全国100都市に広がっているようだ。

感染リスクの低減に、感染者の詳細な行動履歴が役に立つことは間違いないだろう。ただ、詳しい行動履歴を公開すると、感染者の日常の行動範囲から職業や住所などを特定されるリスクが生じてしまう。感染リスクの低減と個人情報の保護、この2つをうまくバランスさせることが大切なようだ。

感染者の個人情報を政府機関にどこまで提供すべきか

これまでは「感染リスクを低減させるために、感染者の個人情報をどこまで公開すべきか」について述べてきたが、もう1つ、「感染者の個人情報を政府機関にどこまで提供すべきか」という視点も忘れてはならないだろう。

イスラエルでは、感染が判明した者の行動を監視するために、感染者の携帯電話の位置データを追跡。同国の公安庁は、このデータを用いて感染者と接触があった人に連絡するという。この追跡には裁判所命令は必要ないとされる。

先述の「健康コード」によって市民の健康状態や行動履歴を管理する中国でも、当然ながら感染者の個人情報は政府機関が詳細に把握しているはずだ。

また韓国では、政府が自宅隔離を命じられた感染者を監視するためのアプリを開発している。その開発目的は「担当職員に健康状態を報告させるため」だというが、勝手に外出しても把握できるように、感染者の位置情報をGPSで追跡する機能も備えているという。

このように、「感染リスクを低減させるためには、あらゆる手段を用いてでも感染者の行動を政府機関が常時把握しておく必要がある」と考える国がある一方で、日本のように、「外出は控えるように要請し、1日に1回程度、自宅に体調の確認電話を入れる程度」という緩い対応をしている国もある。

個人情報保護の観点からは、日本の対応は正しいと思えるのだが、要請を無視して勝手に出歩くことも出来るので、どうしても感染を拡大してしまうリスクが伴う。

すでに日本でも、要請を無視して外出し感染を広げている者が出ていることを考えると、韓国のようにGPSを用いて感染者の行動管理をすることも容認されるべきなのかもしれない。


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