LIFE STYLE | 2020/01/20

少女の幸せな日常が崩壊。第三次世界大戦リスクを受けて、シリア内戦をイギリスに置き換えた啓蒙動画が注目

文:手塚大輔
2020年1月4日未明から「第三次世界大戦」が世界中でトレンド入り。米国とイランの緊張が高まった。
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文:手塚大輔

2020年1月4日未明から「第三次世界大戦」が世界中でトレンド入り。米国とイランの緊張が高まった。

世界中が「第三次世界大戦になるのでは?」と危惧する中、SNS上ではある啓蒙動画が注目を集めた。

イギリスで内戦が起きた設定の啓蒙動画が6300万再生

その啓蒙動画とは、2014年に公開された「Most Shocking Second a Day Video」だ。イギリス内戦が起きたという設定で、イギリスをシリアに置き換えた動画だ。

この動画は、ロンドンで平和に暮らしていた少女リリーが大勢の人に囲まれ、8歳の誕生日を迎える場面から始まる。友達と遊んだり、おしゃれをしたり、平和で幸せな日々を送っている。しかし、そんな日常にも戦争の影が訪れる。

テレビやラジオは連日緊迫した戦況を伝え、大人たちは口論を始める。やがてリリーの住む街でも戦争が始まり、戦闘機が飛び交い、建物が破壊され、街には銃弾が飛び交うように。戦火を逃れるために、リリーと両親は難民キャンプに向かうが途中で父親とはぐれてしまう。母親と2人でたどり着いた難民キャンプでリリーは誕生日迎える。「お願いことをして」と母親に言われるが、リリーは何も語ることなく無表情のまま。

「今ここで起きていないことが、何も起きていないという訳ではない」というメッセージで動画は終了している。この衝撃的なこの啓蒙動画は、現在6300万回も再生されている。

2年後公開の続編では母親と離れ難民に

この動画から2年後の2016年、続編「Still The Most Shocking Second A Day」が公開された。

難民キャンプで友人を見つけ不安な中でも笑顔を見せるリリーだったが、難民キャンプにも戦火が及んだ。母親とリリーは海外に渡航することを決意。2人は危険な目に遭いながら港に辿りつくが、密航を斡旋する業者から高額な金額を要求され、やむなく母親はリリーだけを密航させることに。

不安と恐怖で小さなゴムボートに乗るリリーだが、ボートは沈没。奇跡的に海岸に打ち上げられ、小さな男の子と一緒に国境を目指すが、リリーを待っていたのは越境防止の有刺鉄線と、難民受け入れに反対する人々の罵声。なんとか支援団体の力を借りて入国したリリーは、家族がいなくなった誕生日を迎える。「今起こっている。ここで起こっている」というメッセージで動画は締めくくられた。

戦争は対岸の火事ではない

この動画は、イギリスの非営利団体「Save The Children」が制作したもので、同団体が救助した子どもたちの証言によって作られた。密航するボートが転覆する事故は実際に頻繁に起こっており、命を助けられたとしても子どもたちの心の傷は深刻だ。

2019年3月に同団体が発表した報告書によるとシリアでは、調査対象の子どもの3人に1人が頻繁に危機や精神的苦痛や孤独感を感じていることが明記されている。

最近、シリア内戦はめっきり報道されなくなった。しかし、今も苦しんでいる子どもたちは存在する。まさに「今ここで起きていないことが、何も起きていないという訳ではない」のだ。

もしも東京がシリアのように戦争に巻き込まれたら……。私たちも、対岸の火事ではなく戦争に苦しむ子どもたちを自分の身に置き換え、できることを実行していくべきだろう。