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旅人が「地域のシゴト」をすれば宿泊費無料。「TENJIKU(テンジク)」を仕掛けた株式会社SAGOJOに詳しく訊く
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  • 2020.01.03
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旅人が「地域のシゴト」をすれば宿泊費無料。「TENJIKU(テンジク)」を仕掛けた株式会社SAGOJOに詳しく訊く

TENJIKU吉野(ゲストハウス「三奇楼」)
© SAGOJO Inc.

取材・文:6PAC

新拓也(しん・たくや)

株式会社SAGOJO 代表取締役

立教大学経営学部卒。学生時代に半年間バックパッカーを経験し、アジアを中心に世界を旅する。旅メディア『Travelers Box』を設立し、7人の運営チームを編成。3年間の運営から旅行業界での繋がりを広げる。株式会社LIG在籍時は編集者としてコンテンツ制作に従事。コンテンツ制作の現場を学ぶ。2015年株式会社SAGOJO創業、現職。

無料滞在の対価として地域に労働力を還元

SAGOJOのトップページ
© SAGOJO Inc.

街中の至るところでWi-Fiが利用できるようになった昨今、カフェや喫茶店でノートパソコンを開いて仕事をしている人たちがいる光景は当たり前のようになってきている。一昔前は、こうした人たちに「ノマドワーカー」や「ドヤラー」などといったレッテルが貼られていたが、今ではこうした言葉も特別な意味合いを持たなくなってきているようだ。

ノマドワーカーと呼ばれていた人たちの多くは、日本国内や世界中を旅しながらIT関連の仕事などをこなしてきた。自身もそうしたバックグラウンドを持ち、「旅人」というノマドワーカー向けの事業を立ち上げたのが株式会社SAGOJOだ。

同社では旅人向け求人サイト「SAGOJO」を運営しているが、今年6月には「地域のシゴト」を行うことで無料宿泊できる旅人向けの新サービス、「TENJIKU(テンジク)」を立ち上げた。TENJIKUのビジネスモデルは、ユーザーが吉野町(奈良県)・京丹後市(京都府)・下関市(山口県)・熊野(和歌山県)・糸島市(福岡県)の全国5カ所にある、ゲストハウス、シェアハウス、食堂などからなる各拠点に無料滞在(滞在1回につき2〜5泊までで、2回目以降は1カ月まで可)できる対価として、自分の得意分野に合致した仕事を請け負い、滞在拠点周辺地域に対して労働力を還元するというもの。TENJIKUについてより詳しい話を同社代表取締役の新拓也氏に伺った。

SAGOJO代表取締役の新拓也氏
© SAGOJO Inc.

―― 旅人向け求人サイト「SAGOJO」はどんなサービス内容なのでしょうか?

新:「旅をする」=「時間やお金を消費して楽しさを得るもの(つまり遊び・娯楽)」という認識を変えられれば、もっと世の中に旅する人を増やすことができると考えたのが、サービス開始のきっかけです。旅をすることが社会の役に立つ(世の中に対して価値を生み出す)ことを証明しよう・形にしようという考えが「旅×シゴト」というコンセプトになり、「旅をすることがお金を稼げる/キャリアアップにつながる」という世界観を目指すに至りました。

© SAGOJO Inc.

この背景には、昨今の働き方/暮らし方における変化があります。例えば、特定の拠点に縛られることなく2拠点生活(デュアルライフ)を楽しむ方の数はますます増えています。またフリーランスという働き方においても、その人口と平均年収は年々増加傾向にあり、ランサーズが2015年から毎年行っている「フリーランス実態調査」によると、フリーランス市場規模自体も飛躍的に増加しています。こうした状況において、SAGOJOのサービスは社会に新たな価値を提供できるものと考えています。

2019年12月現在、SAGOJOのユーザー数は1万7000人を超えています。男女比はほぼ半々で、年齢層は10代から60代以上までと広範囲に及び、平均年齢は約32歳となっています。大手紙媒体・Web媒体での執筆/編集/ディレクション経験のある方や、写真・動画で受賞経験があるといった方、またインフルエンサーとしてInstagramで数万以上のフォロワーを抱える方など、幅広いスキルの持ち主が登録しています。一方で、経験の浅い状態からSAGOJOの難易度の低いシゴトにアサインされ、経験を重ねる中で難易度の高い案件に対応できるようにスキルをアップさせた旅人も多くいます。

―― 「SAGOJO」は旅人向けのクラウドソーシングサービスだと思いますが、他のサービスとは具体的にどこが違うのでしょうか?

新:旅人に仕事を依頼することの強みとして「移動する」=「現地を実際に訪れる」ことが挙げられます。例えばトラベルグッズやカメラのメーカー、あるいは交通関連の企業などがオウンドメディアのための記事を必要とする場合、説得力あるアウトプットのためには移動=旅することそのものが価値となります。自治体がPRを行いたいといった場合にも、実際にその地を訪れる旅人による外者(ソトモノ)視点からの新鮮な切り取り方・新たな観光資源の発掘などが期待できます。

同時に、コスト感・スピード感においても強みがあります。スポット情報を収集するような場合、全国(または世界)を旅したSAGOJOの旅人は、過去の経験を含め膨大な情報を蓄積しています。また多くの人が現在進行形で旅をしているため、遠方を実際に訪れる案件などにおいても適切なマッチングによりコストを抑え、かつ素早く案件に対応することができます。

新しい「旅×シゴト」の形を提示

SAGOJOユーザーが制作した、北海道利尻富士町の移住促進ムービー

―― 旅人が「地域のシゴト」をすれば宿泊費無料というコンセプトの「TENJIKU」を開始した動機を教えて下さい。

新:少子高齢化・過疎化が進む中、多くの自治体はこれに伴う問題の解決に尽力しています。これに対してSAGOJOは、「旅=移動」そのものの持つ価値により貢献できると考えています。移動・多拠点生活・自由度の高い働き方といった概念と親和性の高い旅人を結びつけ、地元の人・コトに親しんでもらうことで、地域は「担い手不足の解消」や「関係人口の創出」という大きなメリットを得ることができます。

SAGOJOの旅人に対するメリットとしては、わかりやすく発揮できるような特別なスキルを持ち合わせていなくとも、移動して地域に親しみながら地域の手伝いをしたり体験をSNSで発信したりすることで価値を生める機会の創出が挙げられます。

TENJIKUは、無料宿泊のために旅の時間の一部を労働に充てるという観点ではなく、旅人と地域の方々が交流・協働を通して得る相互的な体験や関係性そのものを価値として生み出すことを意図しています。一方で利用ユーザーの自由な旅体験を阻害することのないように十分な時間を担保し、新しい「旅×シゴト」の形を提示することを意図しています。

―― TENJIKUを実施するにあたり、地域や地方自治体などからの要望はどういったものがありますか?

新:「宿泊拠点の運営お手伝い(掃除など)」、「地域のリノベプロジェクト(DIY)のお手伝い」、「地域のお祭りの準備」、「農作業のお手伝い」、「学童の子どもたちの先生」など様々です。単純に手を貸してほしいという依頼もあれば、新しい企画などアイデア・発想力を求められることもあります。

最近は各地域から、広い年代の多様な方とコミュニケーションが取れて楽しい、自分自身にも発見があると言ってもらえていますし、自治体担当者もそういった形で「地域がより元気になれば」と期待を寄せてくださっています。

―― TENJIKUの現在の稼働状況はどうなっているのでしょうか?

新:応募者の総数は150名以上でした。夏は特に応募が多く、満室によりお断りせざるを得ない旅人も多く出ました。拠点は今年度中に6~7つ程度できればと考えています。まだまだ拠点数を増やしたいので、興味ある方はぜひ問い合わせください!

地元の人と旅人が得意なことを協力しあいながら、同じ目的に向かう体制が必要

―― 御社のクライアントは、地方活性化を目的としているところが多いのかなと感じます。一番求められているものは何なのでしょうか?

新:SAGOJOに対する地域からの依頼内容は非常に多様ですが、おおむね「観光PR」と「関係人口の創出」の2つに集約されます。主に「地域に今ないスキル」と「地域を客観視して捉える視点」を旅人が提供していると考えていて、それに加えてSAGOJOが「課題・目的と合う旅人をきちんとスクリーニングして送客」できる価値を付加しているイメージです。

それぞれの得意な面を活かしつつ、地元の人と旅人が同じ目線で協力しあいながら取り組んでいける体制が必要だと思います。ちなみに旅人は、そういった形で地域と関わることをとても望んでいるように感じています。

―― 御社の提供するサービスでは、日本人の地方訪問者数を増やしていく流れが見て取れます。外国人の地方訪問者数を増やす仕組みなども今後予定されているのでしょうか?

新:仕組みというより、従来事業の拡大という形で捉えています。たとえば従来のマッチング事業でも、「地方や地方をめぐるのに便利な制度などについて、外国人目線でPRしてほしい」といった案件は存在します。実際、SAGOJO登録ユーザーには、割合はまだ少ないながら外国人の方も一定数います。

また当社サービスの「GuruGuru Guide」においても、旅好き(旅人の気持ちがわかる/外国人の友達が多い人)の日本人が、さらにローカルな地域へ外国人を案内できるようにするという狙いがあります。この場合ガイドは日本人ですが、「外国人視点への理解が非常に深い日本人」といえるかと思います。またこれらが発展することで、「SAGOJOの旅人と外国人がペアになることで、地域に対してインバウンドの提案ができるようになる」といったことも目指していきたいと考えています。

―― TENJIKUの次はどういった仕掛けを予定されているのでしょうか?

新:引き続き「旅そのものや、旅することの価値の高さを世の中に証明していけるようなサービス」、そして「一部の人たちだけでなく、誰もが旅×シゴトを実践できるようになるサービス」を提供していきたいと思っています。

今動いていることを少しだけお話しすると、ゲーミフィケーションの要素を取り入れつつ「旅×シゴト」の裾野を広げ、ミッションをこなしながら旅するような、より楽しめるUXを提供するべく企画を進めています。これは、今までSAGOJOに応募できなかった人も気軽に参加できるようなサービスになるはずです。


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