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YouTubeの情報商材詐欺が空前のブーム? 消費者を救う集団訴訟プラットフォーム「MatoMa」
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  • 2019.12.13
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YouTubeの情報商材詐欺が空前のブーム? 消費者を救う集団訴訟プラットフォーム「MatoMa」

今後、AIの進歩によって失われる職業として、よく税理士や弁護士が挙げられる。旧態依然としたビジネスモデルのままで、あまり革新がないことが、その要因のひとつだろう。

そうした背景をよそに、「IT」と「リーガル(法律)」を組み合わせた集団訴訟プラットフォーム「MatoMa」が注目されている。たとえば少額の詐欺被害でも、同様の被害者同士が大勢結託し、訴訟を有利に運ぶためにつながりを作るのがこのサイトの趣旨だ。

運営元は弁護士法人あまた法律事務所。代表弁護士の豊川祐行氏に「MatoMa」運営の経緯や今後のビジョンについて話を伺った。

取材・文・構成:庄司真美 写真:神保勇揮

豊川祐行

弁護士法人あまた法律事務所 代表弁護士
集団訴訟プラットフォーム「MatoMa」運営者

早稲田大学法学部卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。2015年9月に司法試験合格後、東京弁護士会にて弁護士登録(登録番号54311)。都内法律事務所にて勤務後、2019年6月弁護士法人あまた法律事務所を設立。2019年7月、社会生活の中で悩める数多(あまた)の人々を救いたいとの思いから事業譲渡により集団訴訟プラットフォーム「MatoMa」を運営。

「集団訴訟プラットフォーム」という新しいサービスへの軋轢

弁護士法人あまた法律事務所 代表弁護士で、集団訴訟プラットフォーム「MatoMa」運営者の豊川祐行氏

―― 「MatoMa」の前運営元が非弁行為を指摘されている中で、その後、2019年7月に事業譲渡で運営を引き継いだ経緯について教えてください。

豊川:当時、「MatoMa」を運営していた弁護士の今井健仁先生にご紹介で知り合い、「MatoMa」という事業でさまざまな消費者被害を解決していきたいという理念を聞いて共感しました。私自身、これまでの弁護士活動では、企業や組織のサポートをする顧問業務よりは、借金問題や詐欺被害といった個人のトラブルを解決するお手伝いを数多く手がけてきた経緯もあります。

そうした意味でも、より多くの消費者被害から救えるプラットフォームを運営することにとても共鳴するところが多くて、ぜひやらせていただきたいと思いました。

―― 通常の弁護士業務から考えるとチャレンジングな試みですよね?

豊川:もちろん、考えることはさまざまありました。当時、「MatoMa」の事業は株式会社が運営していたため、非弁行為や斡旋行為に当たるのでは?ということでネットでも叩かれていました。でも、少なくとも弁護士の僕がやっている弁護士法人として運営すれば、その問題は発生しないと考えました。

それ以外にも、いろいろとクリアしなければいけない問題が出てきました。たとえば、弁護士としてこの事業をする以上、「MatoMa」を通じてご依頼をいただくことも多々あり得るため、事務所の広告媒体という側面を併せ持つことになります。そうなると、弁護士が発信する広告としてもどこまでが適正なのかという問題が出てきます。なにしろ新しいスタイルなので、明確に弁護士会の規定はありません。

―― 法曹界は堅いイメージがありますが、やはり新しいことを始めると、どうしても軋轢が生じてしまうのでしょうか。

豊川:ご存知のとおり、弁護士会は非常に堅い業界です。なかにはこうした新しいプラットフォームに異を唱える先生もいらっしゃるでしょう。そういう人たちにも理解してもらえるような仕組みを作り、強化していかなければと思っています。

集団訴訟プラットフォーム「MatoMa」HPより

―― 今年7月に新たに事業を受け継ぎ、リ・ブランディングしている状況だと思いますが、特に気を遣っている点はありますか?

豊川:詐欺被害の場合、弁護士を使って相手方に内容証明を出して訴訟の運びになっても、被害金額を回収できないことも多々あります。ユーザーにはそうしたリスクを事前に説明するようにしています。その一方で、お金を騙し取られてお金に困っている方も多いので、被害者の方になるべく負担がかからないように、今は詐欺被害の依頼については、着手金はゼロ~数万円程度で弁護を引き受けています。

―― 着手金ゼロ~数万円というのは、業界としては画期的なのですか?

豊川:一般的には、依頼時に10~20万円以上の着手金を取る法律事務所が多数です。ただ、集団で戦うことがひとつの「MatoMa」のサービスの特徴で、集団で請求することで請求額が大きくなっていきます。

一般には着手金に加えて30〜40%の報酬金をとるほか、実費や日当などでさらに費用をとる事務所が多いと思います。最終的にどれくらい回収できるかにもよりますが、ある程度まとまった金額が返還されるので、報酬金はそこから原則25%でお受けしていて、これもリーズナブルな方だと自負しています。

被害者数がオープンに可視化され、詐欺業者へのプレッシャーに

――「MatoMa」の具体的な機能と訴訟までの流れを教えてください。

豊川:仕組みとしては、「MatoMa」のプラットフォームに、被害者の集まりとして「マトマリ」を作成いただきます。誰かが立ち上げたものに参加することもできます。そこで被害について広く呼びかけたり、掲示板で情報を公開したり、SNSで拡散したりして盛り上げてもらいます。新規でマトマリを作る場合は、自分が被害に遭った証拠をアップロードしてもらい、詐欺を働いた会社はどんな会社で、商材をこんな謳い文句で売っていたということを具体的に提示し、同じ詐欺被害の仲間を増やしていく流れです。

集団訴訟プラットフォーム「MatoMa」には、さまざまな被害者による「マトマリ」が作られ、被害状況や証拠の情報共有が行われる

―― オープンなプラットフォームを運営する上で、運営側として規制は設けていますか?

豊川:弊所である程度審査が必要ですし、個人誹謗中傷レベルのマトマリが出てしまうと、それはそれで問題ですので、その点は神経を使ってチェックしています。

―― 被害人数や被害総額がこれくらいなら訴訟の流れに持ち込むという基準はありますか?

豊川:明確に決めているわけではありませんが、一般的な弁護士業務と見るポイントは同じです。被害総額や人数の多さというよりも、相手方がどんなところなのか、証拠がちゃんと揃っているか、裁判で勝算があるかどうかで見ています。

―― 被害人数や被害額がこんなに大きいというオープンプラットフォームのアピール材料が、後々訴訟になった時に有利に働くことはありますか?

豊川:まだ運営し始めて数カ月なので、今はまだ手探りなのが正直なところですが、現時点での成功事例でいえば、返金請求額の100%を返金できた事例も出てきました。もちろん、被害者の数が多いことで相手方に与える一定のプレッシャーの効果もあると考えています。

―― 同類のプラットフォームの先陣に「enjin」がありますが、運営や管理について何か意識した点はありますか?

豊川:「enjin」さんは株式会社が運営し、被害者を募って弁護士にも集まってもらう仕組みを採っていると思いますが、差別化という意味では、うちは弁護士の私が営む法律事務所で「MatoMa」を運営しているので、根本的な柱が違うと思っています。

それから「MatoMa」自体、もともと情報商材などの詐欺被害が増える現状を社会問題とみなし、困っている人を助けたいという思いから立ち上げられた経緯があります。一方で、弁護士に頼みたいけど頼み方が分からない、費用が高いから頼めない被害者もたくさんいました。依頼人1人に対して弁護士が依頼を受けてしまうと、作業量と報酬額の採算性から、どうしても受けられないケースも多くありました。その点、同様の被害者の弁護をまとめて受けることで交渉も1回で済み、依頼者の弁護費用も安く済むことになります。

「MatoMa」で詐欺被害の人数や状況が表面化して、警察を動かす

―― それにしても現在、「簡単に儲かる」ことを謳い文句に、実にさまざまな情報商材や投資サービスが溢れていますが、なかにはかなり胡散臭いものも多いですよね(笑)。

豊川:相手方が一番恐れているのは、社会問題化して警察に捕まることです。情報商材業界は、ものすごく振り切って「絶対に儲かる」などという謳い文句を掲げていて、誇大広告として完全にアウトなところが多くあります。なぜこんな胡散臭いビジネスが取り締まられないの?と思われるギリギリのところで荒稼ぎしているわけです。

事件が悪質だということを世間に周知され、なぜ警察は動かないの?という風向きになり、ようやく警察が動き出す流れが多いです。その点、集団訴訟の強みを使って被害額を回収できるのは、「MatoMa」も他社プラットフォームも同じだと思います。

近年の消費者詐欺トレンドは、FXやICOなどの為替取引や仮想通貨

―― 「MatoMa」を拝見しましたが、あきれるほどさまざまな詐欺事件があって驚きました(笑)。近年の“詐欺トレンド”のようなものはありますか?

豊川:投資系は昔から多くありますが、なかでもFXやバイナリーオプションなどの為替系の自動ツールが増えています。それから最近はAI関連が流行っていて、AIを使ったトレーダーロボットと謳って販売するケースがあります。また、去年はICOがすごく流行っていて、仮想通貨関連の被害者が多い傾向にありました。

――「MatoMa」での最近の成功事例について教えてください。

豊川:和解条件の関係で詳しくは言えませんが、中には100人単位で1人の被害総額が200〜300万円の案件を解決した事例もあります。

それから情報商材関係だと、現在進行中のものでも50〜100名単位で和解交渉が成立しそうなケースもたくさんありますね。情報商材ではカード決済を行っている人がほとんどなので、カード会社にチャージバックの申請を出すことで、多くの方に返金することができました。これは知らない人も多いのですが、詐欺に遭ったことを伝えれば、カード会社から決済したお金を返金できる可能性もあります。

―― あまりにも被害者が多いことで、カード会社の動きに変化はありましたか?

豊川:「MatoMa」経由で情報商材の詐欺被害のチャージバック申請をたくさんしていたら、事態を重く見たカード会社が、情報商材の決済は扱わない措置をとったり、審査自体を厳しくしたりするようになりました。これまで決済代行会社にとって、情報商材は売れるので儲かるジャンルでしたが、問題が表面化し、審査が下りづらくなったことでも、被害を未然にくい止めることができています。引いては、詐欺を働く悪徳業者が衰退する方向に徐々に追い込むことにつながればと思っています。

「逃げるが勝ち」の悪徳業者を法とITの力で白日の下に晒す

―― 悪徳業者にはどのようにアプローチをかけていくのですか?

 豊川:たとえば情報商材詐欺の場合、法的には特定商取引法に抵触します。まずはサイト上の販売会社名と代表者名、電話番号を突き詰めて、登記簿に記された代表者を調べて、会社と同時に代表者も訴える流れになります。

情報商材の場合、代表者は名義貸しをしているだけのケースも結構あるので、代表者を追い詰めても交渉できないこともあります。その場合、情報商材の動画で矢面に立っている人物、販売者、マーケティングを仕掛けた人物などを幅広く当たって、最終的に裏に潜む人物を特定して訴えると、暴かれたことに驚いて、返金の流れになる感じですね。

―― たとえば今注目の「マトマリ」では、「佐藤愛子、清水聖が販売した“Mate Club”について」は108人が登録し、被害総額は1800万円を越えていますよね(2019年12月6日現在)。どのようなステップで訴訟に持っていくのですか?

豊川:「Mate Club」は最近和解で済んだ案件ですが、訴訟になった場合、「マトマリ」が立ち上がり、だんだん人数も証拠も集まって裁判で勝てる勝算がある段階まで来たら、参加者全員と連絡を取って、弊所でしっかりと面談を行います。

そして全員から委任状をいただいたら、正式に動き出します。初めは相手方と和解交渉するかたちで通知を出して、返金要求しますが、それだけだと逃げてしまうケースが多いんです。逃げ得になられてはマトマリの意味がないので、粛々と訴訟に持ち込むかたちです。

―― 訴訟費用も高額になるのではと思いますが……運営が心配になってきました(笑)。

豊川:訴訟費用もなるべく依頼される方に過度な負担がかからないように設計しています。おかげさまで、最近は和解できる案件も増えてきたので、事業としては安定してきています。

今後ますます増えそうな気配のYouTubeを使った「詐欺動画」

―― 人数に比例して被害額も大きくなるから、その分報酬額も大きいわけですね。これまで、あきれた手口の詐欺案件や印象的だった案件はありますか?

豊川:情報商材の仕組みや売り方を知ったのはだいぶ昔ですが、昔は一対一の対面で会ってお金を引っ張る詐欺がほとんどでした。ところが、今はYouTube動画などで商材を販売するという、テレビショッピングと同じ仕組みが大半です。一対多数で販売することで、どんどん詐欺被害者や金額が増えていく仕組みは、非常に巧妙かつ悪質です。

しかも、その動画の作りも年々巧妙化しています。あたかもテレビ番組で有名人や偉い人が紹介されているかのごとく、「この人についていけば本当に儲かる」といった見せ方をしていることに、あらためて衝撃を受けましたね。今後は情報商材に限らず、YouTube動画や各種動画配信媒体を駆使した詐欺被害がいろいろな方面で出てくるのではないかと考えています。

―― ITの恩恵を利用した「詐欺動画」が今、トレンドなわけですね。

豊川:トレンドですね。特にYouTube動画は対面の次くらいに説得力があるツールになっています。そして、これがまた出てくる人の経歴ももっともらしいのが多いんですよ(笑)。

ただこの前、最近和解が成立したある情報商材界の大物が、緊急会見というかたちで情報商材界を引退するという動画をアップしていました(笑)。結構な大物だったので、引退まで追い込んだことに手応えを感じたのですが、実際のところはよくわからず、また後釜が出てきそうな気配もあります。次回詳細を発表すると言っていましたが、そうした引退詐欺的な売り方は情報商材界ではよくあることなんです。

―― 敵も手強いですね(笑)。逆に立件や解決が難しい事例はどんなケースですか?

豊川:相手方が特定できなかったり、海外に逃亡していたりしているケースですね。あとは資産がなくて返金が難しそうなケースです。その点、警察は相手方が行方をくらましても捜査網で逮捕することができますから、警察と連携して事件解決を目指していく、というケースはよくあります。

――「MatoMa」で多くの人が被害を公開したり、声を上げたりすることで問題が表面化すれば、警察を動かすことにもつながるわけですね。

豊川:はい。まずはいろいろな人を巻き込むことで、相手方をテーブルにつかせることができれば、一歩前進できます。今後、「MatoMa」を発展させて、多くの人に知っていただくなかで、「MatoMa」がいかに怖いかということを、悪徳業者に思わせる存在になれればいいなと願っています。

――「MatoMa」のマトマリでは、詐欺の首謀者と目される具体的な名前も上がっています。それだけでもインパクトがあって首謀者は焦ると思われますが、首謀者側からクレームが来ることはありますか?

豊川:やはり削除請求は来ますね。

―― でも、屈しないわけですよね?

豊川:法に則って、粛々と「マトマリ」の立ち上げ人の方々に期間を設けて意見聴取し、証拠を確認した上で判断しています。その結果、非公開になるものもあれば、公開を続けるものもあります。うちとしてはあくまでもプラットフォームを運営する立場なので、そういう意味では第三者的な立ち位置として淡々と進めています。

―― 仕組みとしては、マーケットプレイスというカテゴリーなのですか?

豊川:原則はそうですが、弁護士が運営する点がこれまでにはない新しい部分なので、そこは明確な仕分けは難しい部分があります。ただ、弁護士がバックにいるところが、「MatoMa」の強みであり、ユーザーにとっても心強い点だと思います。

でも、未だに「本当に大丈夫なの?」という問い合わせもありますね。相談料・登録料はゼロ円でやっているのに、「MatoMa」にアカウントを作ってマトマリを作成したら、それだけでお金を取られると思っている人もいます。

―― 最後に、今後注力していきたいことについてお聞かせください。

豊川:せっかく集団訴訟プラットフォームをやるからには、消費者問題を幅広くカバーし、日本最大級のプラットフォームに成長できたらと思っています。詐欺被害の分野にこだわる必要はないと思っているので、何か集団で被害に遭った方が出てきた時に、その問題を「MatoMa」で解決しようという認知が世の中に広がるといいなと考えています。


インターネットやSNSの進化、動画共有サービスの広がりとともに、近年急増する詐欺とその被害者。

ITを利用した集団訴訟プラットフォームは、その救済策としてこれからもさまざまな可能性を秘めていると感じた。そうした社会問題に立ち向かう豊川弁護士のこれからの活躍に期待したい。


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