文:岩見旦
多くのホームページで掲載されているウェブ広告。ユーザーがクリックすると、サイト運営者に手数料が入る仕組みだが、実際目障りな存在でもある。
広告ブロックをインストールしている人も多いのではないだろうか。そんなウェブ広告が驚くべき進化を遂げていると、注目を集めている。
コーヒーカップがスポンサー企業の商品に
中国のIT大手のテンセントは、有料会員数9690万人を誇る動画配信サービス「テンセント・ビデオ」において、動画の中にスポンサー企業の商品や看板を自然な形で合成する試みを始めた。
例えば、動画に登場する俳優が持っているコーヒーカップがスポンサー企業の商品に変わったり、交差点にそれまで無かったデジタルサイネージが立てられ、そこに広告を流したり、走っている白いバスに広告のラッピングをしたりといった具合だ。
この技術があれば、サイトや動画に広告を配置する必要がなくなり、動画自体で広告が完結する。中国のITコンサルタント、マシュー・ブレナン氏は「広告ブロックはより高い能力が求められるようになることは確かだ」と指摘した。
同じ動画でもユーザーによって広告が変化
テンセントはこの広告を実現するため、コンピュータビジョンと人工知能(AI)を活用する英国のMirriAdとの提携し、新しい技術の開発に取り組んできた。MirriAdのAPIを使用することで、年齢や性別などの情報に基づいたターゲットユーザーに、簡単かつ迅速に自動的に動画内の広告を合成することが出来るとしている。つまり、同じ動画でもユーザーによって広告を切り替えることが可能だ。
MirriAdのCEO、ステファン・ベリンジャー氏は「テンセントと提携して、この新しい広告フォーマットを中国のスポンサー企業に提供できることを嬉しく思っています。私たちの目標は、世界中の大手放送局やデジタルプラットフォームと組んで、スポンサー企業が熱心な視聴者とつながるのに役立つ新しいビデオ内広告を作ることです」と声明で述べた。
現在テンセントは動画内に広告を合成する技術を試験的に導入しているが、もしこの試みが成功した場合、世界中のビデオプラットフォームがこの技術の採用を熱望する可能性がある。近い将来、私たちは動画の中で知らず知らずの内に、隠れた広告を見ることになるのかもしれない。