文:赤井大祐
ソフトバンクのPepper が 普及し、自動運転車のテスト走行が実施されるなど、いよいよロボットと人間の共生も現実味が出てきた。しかし、実際にロボットと生活を送るとなると、技術的にも制度的にも、そして心理的にもまだハードルがあるかもしれない。
そういったハードルをクリアするべく、東京都が始めたプロジェクトが「Tokyo Robot Collection」(以下TRC)だ。
ロボットは「人の代わり」になりうるか
TRCは、「未来は東京で創られる。」という事業コンセプトの元、東京都が主導し、ロボット分野に代表されるさまざま先端テクノロジーのPRを行っている。
このTRCの一貫として、8月21日から23日の3日間、竹芝客船ターミナルで、実証実験「街全体のロボット実装化に向けた実証」が実施された。
今回の実証実験では、6グループ、計7体のロボットが登場。これから超高齢化社会に突入し、労働力の減少という課題を抱える日本において、交通・警備・清掃・接客などの業務をロボットで代替していくことは可能なのかをイベントの来場者に体験してもらった。
中でも編集部が注目した3体のロボットを紹介する。
遠隔でオペレーターと会話できる「Sota®(ソータ)」
遠距離にいるオペレーターがマイクに向かって話した内容を、ロボットが代わりに話してくれるコミュニケーションロボットが「Sota®(ソータ)」だ。開発したのはサイバーエージェントと大阪大学。
リモートワークによる心身負担の軽減が期待されており、接客業での活躍が期待されている。ロボットの声は性別を判別しづらいように男性の声をピッチ編集したものが使用。「ロボットらしい声」を目指したという。
たこ焼きや唐揚げ串を料理する「Octo Chef」「Hot Snack Robot」
会場でひときわ注目を集めていたのは、コネクテッドロボティクスが開発した調理ロボット。たこ焼きを作る「Octo Chef(オクトシェフ)」と、唐揚げ串を揚げる「Hot Snack Robot」があれば、メインの調理はロボットに任せ、人的リソースを減らせる上に、その分お客さんに丁寧な接客が可能になるだろう。
空気を入れるだけ。携帯可能なモビリティ「poimo」
「poimo(Portable and Inflatable Mobility)」は携帯可能なモビリティだ。使用する際は写真奥のようなバイクのような姿になるが、中の空気を抜くことによって写真手前のような折りたたみ可能なサイズとなる。メルカリと東京大学の共同開発によって誕生した。
「ファーストマイル」「ラストマイル」と呼ばれる自宅から駅、駅から目的地など、公共の交通機関が届かない範囲の移動手段としての活用が期待されている。こちらはまだプロトタイプとのこと。空気を入れて膨らませるというシンプルな仕組みなので、既存の乗り物にとらわれない柔軟な形を実現できそうだ。
どんなに便利なロボットも、法制度が整わなければ活用できない
こうした先進的なロボットをすぐにでも導入したい企業や自治体は多いかもしれないが、現在の法制度において導入することは必ずしも容易ではない。TRCを担当する、東京都の先端事業推進担当課長の前林一則氏は「例えば今回展示した中では、人に自動で追従して荷物を運搬してくれるロボット『サウザー(THOUZER) 』は現行法上、公道での走行はできません。ではナンバープレートやウインカー、バックミラーを付けなければいけないか?ということを考えると、現在の物差しでの対応を考えていくのはあまり現実的ではないでしょう。そうした制度上のハードルを突破するためにも、こういった取り組みを通して課題点を洗い出し、国にかけあっていくことが使命だと考えています」と語った。
東京都が「Tokyo Robot Collection」を通してどういった東京を実現してくれるのか、今後も注目していきたい。