BUSINESS | 2026/11/06

足場が、アートの骨格になった日 ― とび職人が魅せた建設技術の可能性

躯体サブコン・エルラインが、MYAF2026の作品施工を担当

FINDERS編集部

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無作為に組まれた単管パイプが、音の生態系を支える

建設現場で建物を支える足場の技術が、アート作品の“骨格”としてその存在を現した。アートフェスティバル「MEET YOUR ART FESTIVAL 2026」(MYAF2026)が、過去最多となる6.1万人超の来場者を迎えて閉幕した。躯体工事を手がける株式会社エルラインは、SUSTAINABILITY PARTNERとして参画し、会場各所で足場材の提供と施工を担った。

普段は建物を支えるための資材と職人技が、4日間にわたりアーティストの表現そのものを支える構造として、多くの来場者の目に触れることとなった。アートエキシビション「REFLUX たちのぼる兆し」に出展されたevala氏とRyu Ika氏の2作品では、作品の骨格となる単管パイプの構造をエルラインのとび職人が直接手がけている。

evala氏が手がけた《Sprout “Coloratura”》は、無数のスピーカーが空間に音の生態系をつくる立体音響インスタレーションである。シリーズ最新作となる本作には、ソプラノ歌手・田中彩子氏による超高音域を含む声が空間を行き交う。スピーカーを取り付ける前段階として、エルラインの職人は単管パイプを空間全体に無作為に組み上げる工程を担当した。水平・垂直を正確にそろえる普段の足場施工とは逆に、あえて規則性を崩して組むことで、整然とした構造とは対照的な、生き物のようにうごめく独特の違和感を空間に宿らせている。

evala氏は「ミリ単位で細かく設計する建築ではなく、いわゆる櫓のように水平・垂直ではないやり方で、“こんな感じ”というイメージのスケッチを送っていた。職人たちがそれを見ながら“こういう感じかな”と生き生きとやっている姿が新鮮で面白かった。単管パイプは移動もできるので、美術館や劇場の外に出ていく移動型の作品がつくれるのではないかという可能性を強く感じた」と語っている。

《Sprout “Coloratura”》の空間
  あえて規則性を崩して施工するエルライン職人

祈りを受け止める構造体にも、職人の手が入る

Ryu Ika氏による《Precious promise》は、モンゴル民族の信仰を象徴する道標“オボー”に着想を得た空間構造物である。来場者が青い布を結びつけることで、場には人々の祈りが幾重にも積み重なり、会期を通して作品そのものが変化していく仕組みになっている。この作品の骨格となる単管パイプの構造も、すべてエルラインの職人が施工した。

普段は建物を支えるための構造が、4日間で訪れた人々の祈りを受け止める構造へと役割を変えている。Ryu Ika氏は「スケール感のある作品をつくりたいと考えていたときに、エルラインに単管パイプを使った施工を相談した。金属のマットな質感とひんやりとした冷たい印象が、作品の世界観をより一層引き立ててくれたと感じている」とコメントしている。

《Precious promise》(Photo by tatsuki nakata / Ryota Haraguchi)

使い終えた足場材は、次の建設現場へと巡っていく

REFLUXの2作品に加え、ストリートエリアをはじめとする会場各所でも、単管パイプの提供と施工が行われ、フェスティバル全体の空間づくりを足元から支えた。使用された資材は単管パイプやクランプなど、エルラインの資材センターが保有するものである。

今回使用した足場材は、会期終了後の10月13日に解体・搬出され、エルラインの資材センターへ戻されたうえで、次の建設現場で再び使用される。現場から現場へと形を変えて使われ続ける足場材の特性を生かし、廃棄を抑えた空間づくりを実践した点も、この取り組みの特徴である。

建設業の技術や資材が、アートという異なる領域の表現を支える構造として生かされたことは、ものづくりに関わる人々にとっても新しい視点を与えてくれる。普段は建築の裏側に隠れている足場という存在が、異業種の表現や体験をどのように支えられるのか、その可能性を考えるきっかけとなる取り組みである。

夜のストリートエリア(Photo by tatsuki nakata / Ryota Haraguchi)
ストリートエリアで単管パイプを組むエルラインの職人

MEET YOUR ART FESTIVAL 2026(MYAF2026)
参画形式:SUSTAINABILITY PARTNER(足場材の提供および施工)
施工協力作品:evala feat. Ayako Tanaka《Sprout “Coloratura”》/Ryu Ika《Precious promise》
その他施工:ストリートエリアほか会場各所への単管パイプの提供・施工
提供資材:単管パイプ、クランプほか(エルライン資材センター保有資材)
来場者数:6.1万人超(主催者発表)
資材撤去:2026年10月13日に解体・搬出し、資材センターへ戻した上で再利用
運営会社:株式会社エルライン(東京都品川区東品川2-1-11 ハーバープレミアムビル5階、代表取締役社長 浅野勝人、設立2008年12月16日)

公式サイト
https://lline-group.co.jp/