自分を表現することは、人をどう変えるのか。音楽、アート、ファッションを通して“違い”を価値に変えるインクルーシブフェス「WEAVE!」の共同主催・荒牧しのぶが、参加者や関係者のストーリーから、自己表現が人生にもたらす変化を見つめる連載。
第2回に登場するのは、ジャズピアニストの Ai Furusatoさん。幼い頃からピアノに親しみ、12歳で、正規の学生としては史上最年少でアメリカ・ボストンの名門・バークリー音楽大学へ合格。現在は日本とアメリカを行き来しながら演奏・作曲活動を続けています。2026年5月、WEAVE!のLIVEステージでは、同じく10代の世界的ドラマー・YOYOKAさんと共演し、素晴らしい音楽で会場を湧かせてくれました。
そんなAiさんが今、公言している目標が、
「20歳までに、グラミー賞を獲る」
若くして、自己表現で世界への道を切り拓いてきたAiさんが、夢を叶えるために大切にしていること、そして未来への想いをインタビューしました。
Ai Furusato(古里愛)
ジャズピアニスト
12歳でバークリー音楽大学にプレジデンシャルスカラシップ(授業料全額免除)を得て合格し、同大学史上最年少で正規の学生として入学・在学中のジャズピアニスト。
3歳より川崎市麻生区の教室でクラシックピアノを始め、9歳でジャズに転向。ニューヨークでの演奏動画は300万回を超える再生数を記録し、国内外で注目を集める。2024年にバークリー音楽大学へ正式入学。
テレビ朝日『題名のない音楽会』をはじめとする各種メディア出演だけでなく、BLUE NOTE TOKYOで行われたBLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO “The All-Star’s Songbook”への客演、丸の内COTTON CLUBで開催される石若駿監督のJazz Momentum 2026、国際フォーラムでのラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2026などの大舞台を多数経験。
国内外アーティストとの共演・作品制作を重ねながら、作曲・レコーディングにも積極的に取り組み、Sony Music LatinとファッションブランドBERSHKAの共同プロジェクト”BERSHKA MUSIC”への選出、劇伴の提供など、多岐にわたる活躍で次世代ジャズシーンを担う存在として注目を集めている。
古里愛Instagram
https://www.instagram.com/aifurusato/
荒牧しのぶ
コピーライター|コンセプトプロデューサー
個人や企業のブランドコンセプト、ネーミング、ステートメント、インタビューなどを手がけるコピーライター。言葉になりきらない感性や経験をすくい上げ、その人や活動の“核”となる言葉へと編集する。
インクルーシブARTフェス『WEAVE!』では、共同主催としてブランディング・広報・コピーライティングを担当。音楽・アート・ファッションを通して、誰もが自分らしく表現できる場づくりに携わっている。
WEAVE!Instagram
https://www.instagram.com/weavejapan/
荒牧しのぶ Instagram
https://www.instagram.com/shinobu.library/
人間はみんな、ピアノが弾けると思っていた
――そもそもAiさんにとって、音楽ってどんなものだったんですか?
Ai:本当に小さい頃から、身近なものでした。母がミュージックバーをやっていて、自宅の下がお店だったんです。階段を降りたら誰かがピアノを弾いている環境だったので、小学校に入るまでは「人間は全員ピアノが弾けるもの」だと思っていました(笑)。
学校でピアノを弾いたときに「Aiちゃん、ピアノ弾けるの?」って言われて、「え、普通じゃないの?」って思ったくらい。だから、自分が特別なことをしている感覚はなかったですね。
音楽とピアノが、あたりまえの生活と共にあったAiさん。転機になったのは9歳。コロナ禍による休校で、自宅でピアノを弾く時間が増えたことだった。
練習量が増えるほど、自分が成長していくことを実感したAiさんは、学校が再開しても、「この環境を続けたい」「前の生活には戻りたくない」と、もっと音楽を学べる場所を探しはじめる。そこで偶然出会ったのが、ジャズだった。
10歳で見つけた、「どうしてもここに行きたい」
そんなAiさんが10歳で出会ったのが、アメリカ・ボストンにあるバークリー音楽大学。
5日間のサマープログラムに参加した際、本来は使用できなかった練習室を「練習したい」と相談したところ、学校側が使えるようにしてくれた。そんな経験から、やる気のある生徒に機会を与え、応えようとする学校の姿勢に惹かれたという。
――そこから、「できるだけ早くバークリーに行きたい」と思った?
はい。何が、ってうまく説明できないんですけど、5日間ですごく惹かれたんです。
どうしても今、あそこで学びたい。できるだけ早く行きたい。そのために勉強しなきゃいけないなら、それでもやる、と決めました。
Aiさんは当時、まだ小学5年生。
バークリー入学に必要な高校卒業資格を得るため、年齢にとらわれず学べる学校を家族で探し、中学卒業相当の学力を証明するところから、高校卒業までの勉強を進めた。ピアノの練習時間を削ってまで勉強する必要があるのか、両親の意見も分かれ、本人自身も迷ったという。
それでもAiさんを突き動かしたのは、「あそこに行きたい」という、自分自身の意思だった。1日12時間、ピアノに費やしていた時間を全てオンライン学習に当て、必死で机に向かったという。そして、最短で高校卒業資格を取得。
2024年1月、世界最年少の12歳で、目指し続けたバークリー大学への合格を手にしたのだ。
「ブルーノートに出たい」。じゃあ、どうすれば出られる?
古里家の家族会議で話すのは「できるか、できないか」ではなく、「やるためには、何をすればいいか」。それを象徴するのが、Aiさんが昔から憧れていたアメリカの名門ジャズクラブ『Blue Note』への出演でした。
――Blue Noteに出演するために、自分たちから動いたんですよね。
Ai:
「Blue Noteに出たい」という夢があったので、家族で「じゃあ、そこに行くためにはどうしたらいいのか」を話し合いました。
まずはブッキングの人に認めてもらうところからだ、という話になって。Blue
Note系列でやっているジャズセッションを調べて、私が飛び込みで行けそうなところに通いました。
何回か参加するうちに声をかけていただいて、スタッフの方に「ブッキングの方とお話させてもらえませんか」とお願いして。
「いつかBlue Noteにも出たい。その前に、まず系列店でライブをやらせていただけませんか」と話を持っていきました。
「出せば出すほど魅力」アメリカで得た自己表現の大切さ
そんなAiさんも、アメリカの人々の自己表現の強さには驚いたそう。
Ai:アメリカは、もう自己表現が半端ないです(笑)。他人のことを気にしないというか、とりあえず自分を出す。道を歩いている人が突然大声で歌い出すみたいなのも普通で、全然隠さない。「出せば出すほど魅力」みたいな国なんです。
――Aiさんには、その環境が合っていた?
Ai:
私はもともと、あまり自分を隠さないタイプだったので。初めてニューヨークのジャズセッションに行ったときも、部屋に入った瞬間に「自分に合ってる」と感じました。
日本のセッションだと、進行役の人が「次この人」「何の曲やりますか」ってちゃんと呼んでくれるんですけど、アメリカは全然違う。演奏が終わったら進行役の人が裏でお酒を飲んでいたりするので、自分からステージに行かないと一生演奏できないんです。
私はその話を聞いていたので、初めてセッションに行った時も「とりあえず呼ばれる前に行こう」と思って、自分からステージに行きました。
あと、うまい人が演奏するとものすごく拍手して褒めるんですけど、よくないとブーイングもあるし、途中で止められて「はい、あなた終わり」みたいに次の人が入ってくることもあって。いいことも悪いことも、思ったことを全部言ってくるんですよね。だから、自分が今どのくらいなのかもすごくわかりやすいです。
WEAVE!で感じた、「お客さんもイベントの一員」
そんなAiさんが、2026年5月に出演したのが、大阪で開催されたインクルーシブARTフェス『WEAVE!』。音楽LIVEだけでなく、ランウェイショー、アート、ダンスパフォーマンスなど、さまざまなジャンルの表現が同じ空間に混在するイベントだ。
――WEAVE!に出演してみて、何を感じましたか?
Ai:本当にいろんなものがあって、いろんな人が出ていて、「自己表現」というテーマがぴったりだと思いました。それぞれ、自分をどう見せたいのか、何を見せたいのかが、すごく伝わってきて。ランウェイも、一人ひとりの個性がそれぞれ出ていて、見ているだけでめちゃめちゃ楽しかったです。
――普段出演している音楽イベントとの違いはありました?
お客さんもイベントの一員になってくれているというか、演奏者とつながってくれている感じ。演奏していても、「ちゃんと見てくれている」「つながっている」というのをすごく感じました。一体感がありましたね。
あと、「大阪ってニューヨークみたいだよ」って知り合いの人に言われてたんですけど、それも体感しました(笑)。演奏後、いろんな人が話しかけてくれて、イベントの雰囲気もあったのかもしれませんが、とてもフラットな空気でした。
叶えたい夢と、叶えた夢を、毎日声に出す
Aiさんには今、公言している夢がある。
「20歳までに、グラミー賞を獲る」
Ai:5歳の頃から「世界一のピアニストになりたい」と言い続けてきました。でも、「世界一」って何なのか。一番有名な人なのか。一番ファンが多い人なのか。それでは曖昧だから、今は、具体的な目標の一つとして「グラミー賞」を掲げています。
――WEAVE!出演時のインタビューでも、夢を口に出すようにしてるって言ってましたよね。
Ai:
夢や目標を口に出すって、すごく大事だと思ってます。その言葉を聞いてくれた人が、その先に支えてくれたり、協力してくれたりするかもしれない。だから、自分が持っている目標はできるだけ言うようにしています。
家には、自分の目標を書いた計画表があって、それを毎朝、毎晩、叶った自分を想像しながら声に出して読んでいます。
12歳でバークリーに入ることも、「無理なんじゃないか」と思っていた時期もありました。でも、本当に実現できた。だから「私、無理だと思っていたこれができたんだから」って、自分への勇気になる。
今まで叶えてきた目標と、これから叶えたい目標をセットで読んでいます。頭の中にあるだけより、口にしたほうが入ってくるんですよね。
グラミー賞の先にも、叶えたいことがいっぱいある。
――グラミー賞という大きな目標がありますが、他に今後やっていきたいことはありますか。
Ai:
あります。グラミー賞は20歳までの目標なんですけど、その先は教育にすごく携わりたいと思っています。
私は若くしてアメリカに来て、大学に入ったからこそ、ほかの学生が経験していない難しさも感じてきました。だから、もっと若い年齢で音楽を学びたい人や、若い才能をサポートできる場を作りたいです。
――Aiさんが教える、ということですか?
Ai: 教えるだけじゃなくて、場を作りたいです。まだ具体的には決まっていないんですけど、何かしら学校のようなものを作りたい。私は本当に両親のおかげでここまで来られたので、今度は自分が、そこで学ぶ生徒たちにとって両親のような存在になれたらと思っています。できることは、いろいろサポートしたいです。
――そう考えると、グラミー賞も通過点なんですね。
Ai:
そうですね。グラミー賞は今の目標であって、その先に叶えたいことはいっぱいあります。
グラミー賞を獲ったあとも、世界一のピアニストを目指したいですし、ひとつ夢が叶ったら、また次の目標を探して、どんどん上がっていきたいです。
取材時15歳。「20歳までにグラミー賞」を目指していることだけでも驚かされるが、すでにその先の未来まで描いている。
Aiさんのストーリーに一貫してあるのは、夢を口にし、そこから行動をはじめること。
調べる、人に会う、話してみる、自分の意思を伝える。
夢が現実に変わっていく過程は、案外こういう小さな自己表現の連続なのかもしれない。
世界へ挑戦を続けるAi Furusatoが、原点の地・川崎で凱旋公演を開催。
かわさきジャズ2026
Ai Furusato – Piano Solo & Trio
2026年11月3日(火・祝)、Ai
Furusatoさんの凱旋公演がカルッツかわさきで開催されます。
1stセットはピアノソロ、2ndセットはトリオ編成。Special
Guestにシンガーのakikoさんを迎え、現在のAi Furusatoさんの表現をたっぷり味わえるステージです。
日時:2026年11月3日(火・祝)
開場 15:00/開演 16:00
会場:カルッツかわさき
ホール
料金:一般 4,800円/U-18 3,000円ほか
公演詳細・チケット情報
https://culttz.city.kawasaki.jp/performance/45306/
次年度WEAVE!は2027年5月22日開催予定
イベント詳細、チケット販売については決まり次第Webサイト、SNSにて告知いたします。
最新情報が届く公式LINEにもぜひご登録ください。
WEAVE!公式WEBサイト
sub.torico.me/p/weave
WEAVE!Instagram
WEAVE!公式LINE