AIで作った台本1,920本のうち3割強が再生数1万回超を記録
TikTokの台本づくりを丸ごとAIに任せてよいのか、それとも伸びなくなるのか。中小企業のSNS運用を支援する株式会社ノックデザイン(大阪市)は、自社ブランド「ニチヨウビ」で運用するTikTokアカウント40件の投稿データを分析し、この問いに自社データで答えを示した。2026年3月から8月にかけて投稿された、AIを活用して作成した台本1,920本のうち、640本(33.3%)が1本あたり再生数1万回以上に到達していたという調査結果を公開している。
同社がTikTok運用で使う再生数の4段階評価のうち、1万回以上は最上位の水準にあたる。つまりAIを使って作った台本でも、3本に1本以上は「バズる」域に届いていたことになる。AI任せの台本は本当に使えるのかという現場の不安に、実績を伴う一つの答えを示したデータといえる。
ただし同社が強調するのは、この数字そのものよりも、再生数が伸びるかどうかを分けている要因である。日々の運用から得た見立てとして、同社は「初期設計」(誰に・何を・なぜ・どんなコンセプトで発信するか)と「誰が言うか」(その内容を誰が・どんなキャラクターで・どんな言葉で話すか)という2点が定まっているかどうかが、AIを活用した台本の成否を左右すると説明する。この2つが曖昧なままAIに丸投げすると、「どこかで見たような、誰のものでもない台本」になりやすいという。
AIに任せる5工程、人が担う3工程という分業の線引き
同社が公開した判断基準では、AIに任せてよい工程を5つ、人が担うべき工程を3つに整理している。AIが得意とするのは、競合や伸びている動画の傾向整理といったリサーチ・分析、構成の叩き台やバリエーションの量産、長尺動画からの要約・転用、企画の壁打ち相手、そして薬機法・景品表示法などに触れそうな表現のチェックである。特に構成案を複数出させてから人が選び磨く使い方は、同社が最も効果を感じている工程だという。
一方で、アカウントの初期設計、現場にしかない一次情報、演者の話し言葉への変換という3つは、AIに任せていない。AIの出力はあくまで「書き言葉」であり、方言や語尾の癖、口癖といった「誰が言うか」の価値を生むディテールは、文章として整えるほど削ぎ落とされてしまうためだ。実際の制作フローは、企画の準備としてAIに材料を整理させ、壁打ちを経て人が企画を決め、台本の叩き台をAIに作らせたうえで人が一次情報を足して仕上げるという8工程で構成されている。AIが単独で完結する工程は一つもなく、AIの下ごしらえと人の判断が往復する設計になっている。同社はまた、AIに「バズる台本を書いて」と指示だけして出力をそのまま使う、台本の量産自体が目的化するといった運用のありがちな失敗も指摘しており、AIの出力を鵜呑みにしない姿勢が前提になっている点は共通している。
同社はこの往復によって浮いた時間を、AIには担えない初期設計や一次情報の収集に再投資しているという。実際、支援先の作業服セレクトショップやアパレルブランドでは、台本は流れと大枠だけを用意し、細部は出演する社長や店長が自分の言葉で肉付けするスタイルを採っている。40ヶ月以上にわたって運用を継続しているアパレルブランドのように、長期で成果を出し続けているアカウントほど「自分の言葉で話している自然さ」があるというのが、現場で積み上げてきた実感だ。AIをどこまで任せてよいか判断に迷っている担当者にとって、台本制作の分業ラインを考え直す手がかりとなる調査である。
調査主体:株式会社ノックデザイン(SNS支援ブランド「ニチヨウビ」)
調査期間:2026年3月1日〜2026年8月31日(この期間に投稿した動画が対象)
調査対象:自社運用のTikTokアカウント40件、AIを活用して作成した台本による投稿動画1,920本
調査方法:2026年10月6日時点の各動画の累計再生数を集計し、1本あたり再生数10,000回以上の本数・割合を算出(広告配信による再生を含む場合あり)
主な結果:1,920本のうち640本(33.3%)が1本あたり再生数10,000回以上
公式サイト
https://nock-design.com/nichiyobi/blog/tiktok-ai-script