障がいのあるアーティスト、学生デザイナー、ニット職人が共創
自閉症のアーティスト、ファッションを学ぶ学生デザイナー、そして熟練のニット職人。異なる才能が集まった東京ニットファッション工業組合 (TKF) が主催する 「次世代クリエイター育成プロジェクト」 の発表会が、2025年2月16日に東急プラザ原宿で開催された。このプロジェクトは、障がいのあるアーティストと学生デザイナー、そしてTOKYO KNITブランド認証企業によるトリプルコラボレーションによる画期的な取り組みだ。
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境界を超えるアートの力
プロジェクトには、一般社団法人AOAartが支援する11歳〜16歳の自閉症の青少年アーティスト4名(HIMAWARI 16歳、YAMATO 12歳、KAN 11歳、YUUSEI 14歳)、文化服装学院のニットデザイン科2年の学生5名、TKFの認証企業4社(株式会社川島メリヤス、百瀬繊維株式会社、伊東メリヤス工業株式会社、株式会社ニードル)が参加、彼らの共創から生まれた5つの作品がランウェイショー形式で発表された。
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1作目「フルーツ」は、アーティストHIMAWARI(16歳)と学生デザイナー笹目歩美さんのコラボレーション。株式会社川島メリヤスが制作を担当した。原画のカラフルでポップな世界観をニットに落とし込んだ作品で、認証企業の匠の技が光る繊細な仕立てが特徴だ。
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2作目の「無題」は、アーティストYAMATO(12歳)と学生デザイナー佐藤望乃さんの作品。百瀬繊維株式会社が制作を担当した。女性がピンク、男性がグリーンという固定概念を覆し、逆の色彩を採用。ニットでありながら着心地のいいセットアップに仕立てられている。
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3作目「ゆきだるま」も、HIMAWARIさんの原画をもとに、学生デザイナーのハンショクセイさんがデザイン。伊東メリヤス工業株式会社が制作を担当した。「ゆきだるま」という作品名でありながら、白ではなくピンク、パープル、ブルーなどカラフルな色を採用している点が、既成概念を覆す表現として注目を集めた。
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4作目の「ぼうにぶらさがるナマケモノ」は、アーティストKAN(11歳)と学生デザイナー宮本康平さんのコラボレーション。伊東メリヤス工業株式会社が制作を担当した。原画にある"棒にぶら下がっている"様子をディテールで再現し、着心地の良さにも配慮した作品となっている。
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5作目「きけんせいぶつ」は、アーティストYUUSEI(14歳)と学生デザイナー竹内奈々さんの作品。株式会社ニードルが制作を担当した。危険生物をカラフルに表現した原画から、デザイナーが独自の解釈を加えて服に落とし込んでいる。
創作の過程こそが最大の学び
このコラボレーションの実現には、2024年11月30日に開催されたワークショップが重要な役割を果たした。アーティスト、デザイナー、TKF認証企業が一堂に会し、チームに分かれてブレインストーミングやスケッチデッサンを行った。学生デザイナーの竹内奈々さんは、「アーティストYUUSEIさんの迷いのない筆の早さが印象的であり、感動しました」とコメントしている。また、これらのアート作品が単なる展示にとどまらず、作品の一部は実際に着用可能な服として商品化され、TKFのECショップ「TOKYO KNIT ONLINE STORE」にて2025年2月下旬から販売される予定だ。
主催したTKFは、「障がいは特別なものではなく、日常の一部である」 という理念のもと、本プロジェクトを推進。多様なバックグラウンドを持つクリエイター同士が協働するこの取り組みは、障がい者アートの社会的な認知向上だけでなく、誰もが自分らしく生きられる共生社会の実現を目指すもので、個性を尊重し合う社会のあり方を問いかけている。
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次世代クリエイター育成プロジェクト発表会
開催日:2025年2月16日(日)
開催場所:東急プラザ原宿
主催:東京ニットファッション工業組合(TKF)
販売サイトTOKYO KNIT ONLINE STORE(2025年2月下旬発売予定)https://shop.tokyoknit.jp/