領土や資源を中国に切り売りするタジキスタン
タジキスタンは中央アジア最貧国。金、銀、石炭などの鉱物資源があるが、中国からはエネルギー支援を受けたり、石炭火力発電所の建設支援を受けるなど債務が増大。その結果いくつかの鉱山利権を中国企業に明け渡している。現在少なくとも350社の中国企業が同国に進出しており、国内に移住した中国人も多い。
タジキスタンは2011年に数億ドルもの債務を放棄する代わりに約1000平方キロメートルの土地を中国に譲渡したりと、いわば資源の切り売りを行なっている。現在は中国と戦略的パートナーシップを結び、他の農地も中国企業にリースするなど関係を強めている。
タジキスタンはその立ち位置から、アフガニスタンからの麻薬、武器、テロリストなどの流入を防ぐ「防波堤」ともなっており、最近は中国と合同でドローンを使ったテロ対策訓練も行っている。中国にとっては治安維持の面でも協力し合う非常に重要な隣国となっている。
ウズベキスタンー悲願の国内鉄道路線を中国の力で開通
かつてシルクロードの拠点・文明の中心とも言われたウズベキスタンも天然ガスなどの地下資源が豊富であり、綿花の輸出も盛んな国だ。中国の依存度は意外と低いものの、経済と鉱物資源をヨーロッパよりも中国へ開放していく姿勢を見せている。
そんなウズベキスタンも中国のインフラには頼りきり。隣国タジキスタンとあまり仲の良くないこの国は、首都タシケントとフェルガナを結ぶ「タジキスタンを通らない鉄道路線」を建設する悲願のために中国国有企業の力を借りた。この路線の建設工事は標高2000メートルを超えるカムチック峠にトンネルを掘るという難作業だったが、中国から建機や技術者を投入して19.2kmに及ぶ中央アジア最長となるトンネルを開通させたのである。
ウズベキスタンは中国と国境を接していないため、経済を活性化させる安価な輸送ルートを持ちたがっている。現在、隣国キルギスを経由して新疆ウイグル自治区のカシュガルにつながる「中欧班列」(西3通道)などの鉄道路線を計画中。しかし中には技術面や資金面の問題、ルートの意見相違などにより25年間も作業が進まない路線も存在する。
中国企業の助けにより建設されたウズベキスタン鉄道路線/中国に譲渡されたタジキスタンの領土
トルクメニスタンー輸出向け天然ガスの100%が中国へ
鉱物資源はそんなに多くないものの、石油、天然ガスの埋蔵量が多いトルクメニスタンは長らくその供給ルートをロシアに限定してきたが、近年は中国シフトが顕著である。
中国政府は油田開発に30億ドルを融資するなど中国資金の流入が加速中。特に世界第4位の埋蔵量と言われる同国の天然ガスの輸出先は、なんと100%が中国という完全な中国依存型の経済構造となっている。
中国とは持ちつ持たれつの関係に
かつては「トルキスタン」と呼ばれ、大英帝国とロシア帝国の「グレート・ゲーム」に巻き込まれた過去を持つ中央アジア各国は現在、豊富な地下資源を活用しつつ中国と取引を行い、持ちつ持たれつの関係となっている。
今後、中国経済の変化によって各国の中国依存度は調整されるかもしれない。しかし最先端技術に欠かせない鉱物資源が中央アジアから引き続き採掘され、その需要が続く限り中国は重要なお得意様であり続けるのだ。