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EVENT | 2023/03/28

「世界初の有機EL開発者」含む企業出身研究者が多数活躍 山形大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンター

文:伊東孝晃
トップ企業から移籍した研究者が集い、最先端技術を結集



山形大学では2000年代初頭より有機...

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文:伊東孝晃

トップ企業から移籍した研究者が集い、最先端技術を結集

山形大学では2000年代初頭より有機エレクトロニクス及び有機材料の国際的教育・研究拠点の構築を目指した体制を敷いており、2003年に山形県とNEDOの支援による研究所を米沢に設けて以来、JST地域卓越研究者戦略的結集プログラムや文科省地域イノベーション戦略支援プログラム、JSTセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムなどに参画。2016年以降は大学全体で、当分野に関係する教職員、研究員、学生の人数規模が約500名に拡大し、基礎研究から社会実装に至るまでの行程に一貫して取り組んでいる。

2013年に設立された山形大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンター(INOEL)は、 世界をリードする有機エレクトロニクスの研究拠点として

・有機EL
・有機トランジスタ
・有機太陽電池
・フレキシブル基盤技術
・インクジェット
・次世代電池

という6つの領域でビジネスにリンクした実用研究を行っている。産業、事業への貢献をファーストプライオリティの一つに据えるという産学連携の新機軸を打ち出したINOELの取り組みについてセンター長を務める佐野健志氏、副センター長の硯里善幸氏に伺った。

佐野健志氏(写真左)、硯里善幸氏(写真右)

「当センターでは世界で初めて有機ELを用いたディスプレイの製品化及び量産化に成功した企業の開発メンバーの教員をはじめ、プレイングディレクターの役割を担う事業化経験豊富な教員が多数在籍し、ニーズファースト型や、革新的なプロセス・デバイス技術をベースとした応用研究を実践しています。施設内には1200㎡のクリーンルームを有し、研究に必要な設備が民間企業の研究部門等と比べても遜色ないほどに揃えられています。同じ山形大学内の有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)有機材料システムフロンティアセンター(FROM)、実証工房:スマート未来ハウス(MIHO)などとも連携し、関連するセンター群が一体となって運営されていますが、INOELは産学連携や競争的資金によるプロジェクト等を元に、自主独立採算運営を実現しているのもアピールポイントです」(佐野氏)

数多くの企業と連携し、成果を挙げるコンソーシアム

INOELでは、開発テーマによって、多数の民間企業と共同研究を行うコンソーシアムを展開。科学技術系の産学連携の一事例として表彰を受けるなど、アクティビティの高さが認識されており、ドイツの企業や研究機関とも連携している。グローバルな活動も視野に入れ、すでに複数の応用研究が学術的な面でも世界的な評価を獲得している。

「コンソーシアムは現在、いくつかのチームが稼働しており、研究分野は有機エレクトロニクスを中心に、フレキシブルエレクトロニクスや、インクジェット技術など多岐にわたります。それぞれ製品開発や実証実験、シンポジウムの開催などで成果を挙げています。その他、研究開発の具体例として、次世代太陽電池では電荷輸送層の改良により変換効率20%を実現(佐野健志)、印刷によるウルトラ・ハイバリアや有機ELパネル(硯里善幸)の研究をしています。森下正典先生が開発したリチウムイオン電池は超薄型で柔らかく、安全性が大幅に向上したことで話題となりました。水上誠先生は世界で初めて塗布型の有機トランジスタバックプレーンで駆動するフレキシブル有機ELディスプレイを開発して、こちらも大きな注目を集めています。仲田先生、向殿先生、結城先生、古川先生らが担当するフレキシブルエレクトロニクスの産学連携コンソーシアムは、内閣府の第15回産学官連携功労者表彰で科学技術政策担当大臣賞を受賞。山形大学全体で見ても、JST A-STEP機能検証フェーズに2015〜2019年で全国1位となる40件の研究が採択され、当大学における取り組みの充実ぶりが実証されました」(佐野氏)

カーボンニュートラル、GX対応にも挑戦

INOELや山形大学の研究拠点は企業出身者が多数在籍していることから、ビジネスを視野に入れた展開に秀でているのが特色。コンソーシアムを通した企業間の連携で、さらなる技術革新にも期待がかかる。

「年に2回は展示会への出展を行い、さまざまな企業やお客様と意見交換をしています。INOELのコンソーシアムに加盟している企業間でもフェーズによっては連携を持ちたいという要望があり、例えば技術の垂直連携が期待されるケースもありますので、産学連携が今後さらに充実してくことになるかと思います」(佐野氏)

数々の成果を見せているINOELが次に目指す到達点として、有機エレクトロニクスのブラッシュアップや、低炭素・脱炭素に寄与する技術開発、デジタルマニュファクチャリング、SDGsへの対応は、目下の大きな課題となっている。

「我々、研究者の拠点も企業から大学に移り、求められる水準が上がっています。日本のエレクトロニクス産業が得意としていた半導体やパネルの生産の一部が海外に流れてしまって、次にどこへ向かうべきかを考えなければいけません。有機エレクトロニクスについても、次世代技術や分野への展開も含めて次のフェーズへ移行する段階です。GX(グリーンイノベーション)を意識し、製造時にCO2の排出量が少ない太陽電池やディスプレイなど、環境負荷を下げるデバイス開発がより強く求められるかと思われます。現在、3Dプリンタや最新のインクジェットを使用するデジタルマニュファクチャリングネットワーク(DMN)研究会の起ち上げも準備しており、統合されたシステムを駆使しながら、ものづくりの変革を推進できればと考えています」(硯里氏)


山形大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンター

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