PR

EVENT | 2023/03/24

世界から注目を集めるスピントロニクス技術!東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)

文:荒井啓仁
東北の半導体産業、そして日本の半導体戦略を強力に後押し

東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発セ...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

文:荒井啓仁

東北の半導体産業、そして日本の半導体戦略を強力に後押し

東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)は、2012年に100%民間拠出によって設立された国内初のサイエンスパーク型の産学連携研究機関。民間共同研究費・競争的資金などのみで自立経営し、来たるべきカーボンニュートラル・DX・AI時代を支える革新的な集積エレクトロニクス技術、およびパワーエレクトロニクス技術を生み出し、東北の半導体産業、そして日本の半導体戦略を強力に後押しすることを目標に日々研究・開発を続けている。

これまでに半導体産業の川上から川下までの国内・国外を含めた企業群と、国や宮城県・岩手県などの地域行政からの支援施策も活用して革新的なシーズ技術をいくつも開発。研究開発当初から知財権の活用を見据えた契約や知財経費を計上、また、インハウスの組織によって知財管理ができるよう制度を整えるなど、スピーディな知財権の確保と柔軟な活用を促す戦略的な運用も実施している。

トップ1%論文の比率は10%以上、知財管理においても企業から評価

CIESの特徴はハード・ソフト・技術の3つがいずれも世界トップクラスの水準で融合している点だ。まずソフト面では、世界トップ1%論文(各分野の被引用回数上位)の保有比率が10%を超えている。これは世界のトップ大学のおよそ3倍以上の数値だ。論文だけではなく知財の保有数においても、世界の企業も含めてMRAM(磁気抵抗メモリ)関連技術の日本特許出願数3位を誇る。CIESセンター長の遠藤哲郎教授はそうした実績を残せる理由を以下のように語る。

遠藤哲郎氏

「世界のトップメーカーとのハイレベルなコラボレーションのおかげだと思っています。企業が持っている高レベルのものづくり技術、大学が誇る研究力、両者が融合することでイノベーションが生まれます。大学の質と企業の質、そしてオープンイノベーションで噛み合っている仕組みが東北大学にはあり、産学連携を押し進める根源がここにあると思っています。企業側がCIESと一緒にプロジェクトを行う理由には、知財化されている技術の数と質も影響しています。質の高い知財を多数保有しているということは企業にとってもセーフティーゾーンを約束されているということです」(遠藤氏)

ゲームチェンジ技術となる「スピントロニクス」で半導体の大幅な省電力化を実現

CIESによる技術開発で大きな成果を上げているのはスピントロニクス技術による省電力半導体の開発だ。従来の半導体は電気を利用して情報を保持していたため、常に電源が供給されてないとデータが消えてしまうことから、消費電力量の増大および機器の発熱を冷やすためにも電力が必要になってしまうという課題があった。しかしスピントロニクス技術に基づく省電力半導体は電流ではなく電子の回転の向き(スピン)を参照することで、電源を切っていてもデータを保持できる。これにより消費電力は1/30〜1/1000と大幅に減らすことができる。このような大幅な電力削減は、情報化社会の更なる高度化とカーボンニュートラルを両立させる上で重要なインパクトを持つ。

今後IoTデバイスの活用をより広げるため、限られたエネルギーで潤沢な演算を行う必要があるエッジコンピューティング(デバイスの近くでデータ処理を行うこと)の世界において、省電力半導体は鍵となるテクノロジーだ。世界的な企業からも注目が集まっている。

「1/30〜1/1000の省電力化という数値はファーストデモンストレーション段階の結果でしかなく、まだ下がりきってはいません。今後、従来の半導体の使い方が全く変わります」(遠藤氏)

大学発ベンチャーを設立し社会実装をさらに加速

CIESでは「スピントロニクス省電力ロジック半導体開発拠点」を整備し、世界で唯一となる300mm対応の研究開発施設を活用して、設計・試作・評価・システム化まで一貫して開発できる環境も整えている。さらに2018年にスピントロニクスの技術に関する設計・試作・評価・コンサルティングを手掛けるスタートアップ「パワースピン」を創業し、遠藤氏も代表取締役兼CTOに着任。東北大学ベンチャーパートナーズ、JAFCO、三菱UFJキャピタルから10億円を超える資金調達に成功した。同企業が研究拠点と民間企業をつなぎ、さらなる発展に向けた架け橋となることが期待されている。

「この世界はギブ・アンド・テイクの世界です。いくらドアを開けていても、誰も入ってなければオープンイノベーションにはなり得ません。学ぶべきことがなければ誰も来てくれないでしょう。東北大学、そしてCIESには世界の半導体メーカーが注目するスピントロニクスによる省電力半導体技術があり、材料、デバイス、ものづくり、回路設計、システムに関する知見を誰よりも持っているのが最大の強みです。これからもさまざまなプロジェクトを進めてまいりますので、いつかどこかで読者の皆さんともご一緒できればと思います」(遠藤氏)


東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)

Jイノベ選抜拠点の記事一覧はこちら