EVENT | 2020/08/14

「内科がヒマな夏」に体調不良が急増?意外と徹底できていない「コロナ対策の基本」を『感染症自衛マニュアル』著者の佐藤昭裕さんに訊く

新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、地方都市にも波及する昨今。「三密に気をつけよう」ということは誰しもがわかっている...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

行楽シーズンに気をつけたい「旅行時」の自衛ポイント

―― 引き続きマクロな政策などに関するご意見もうかがいたいと思います。現時点で大きな問題だと感じることは何でしょうか?

佐藤:やはり感染拡大が収まらないことです。結果論としては、今の「新しい生活様式」だけでは抑えきれなかったということだと思います。国・自治体が対策をしてくれないのであれば、なおさら個々人が自衛を強めるしか今のところは感染拡大を防ぐ手段はありません。

―― Go Toキャンペーンやお盆の帰省に関しても、結局行っていいのかいけないのか、各地域の実情がそれぞれ異なるとはいえ、国と各知事の発言が正反対だと混乱してしまうのも仕方ないですね。

佐藤:個人的には、きちんと対策を取っていれば家族旅行はいいんじゃないかと思うんです。毎日同じ空間で生活している以上、リスクはそう変わらないですし。ですが友達5人ぐらい以上の大人数の旅行は止めておいた方がいい、という感じでしょうか。ただ、ここで言う「5人」という数字に何か根拠があるわけではないということは強調しておきたいと思います

もちろん、旅行・帰省先で三密を避けることには気をつけてほしいです。地方ですと都心部よりはお店の数も少ないので、すぐ満員になってしまって換気も悪いと問題になってしまいます。加えて、例えば

・ホテルに泊まって部屋食を食べるようにする
・回し飲みや大皿料理のシェアはしないようにする
・温泉に入るにしても他人と近づきすぎない、しゃべらないようにする

など、対策を取っていくことが大切ですね。対策と言っても、基本的には日常で行うべきことと同じです。

夏に特有の問題で言えば、やはり換気でしょうか。普段の生活では「1時間に1回、5~10分ほど窓を開けましょう」で十分なんですが、熱帯夜に窓を開けて寝るのは結構辛いですよね。熱中症の危険性もありますし。そこだけ気をつけてほしいです。

「Go Toキャンペーン」をやる・やらないが取り沙汰されていた時に自分が言っていたのは、「感染者がほとんど出ていない地域同士で行き来するのは問題ないんじゃないか」ということでした。ただ、最近では患者ゼロだった岩手県でも感染が出てしまいましたし、同様に全国に広がっていますよね。そうなってくると「この地域ならOK」ということは言えなくなります。少なくとも、東京・大阪など拡大が止まらない地域に行くというのは止めた方がいいですし、そうした地域に住んでいる方も他県に行くということは控えてほしいと思います。

―― SNSでは「帰省すらもってのほかだ!」という意見も目立つ一方で、KARADA内科クリニックのある五反田周辺の居酒屋はどこも盛況です(取材時点)。やはりSNSだけでは現実で起こっていることや、その空気感を捉えきれないと感じます。

佐藤:SNSには「コロナはただの風邪です」と書いている人も一定数見かけますが、身の回りではほとんど見かけないですよね。そういう意味では大半の日本人の意識っていうのは間違ってないと思うんです。コロナは恐れるべきだし、これから第一波の時みたいな医療体制の逼迫も残念ながら起きてしまうと思います。

加えて、後から振り返って「やっぱりこれが正しかった、間違っていた」ということはたくさん出てくると思うんです。この病気は数年単位で付き合っていかなくてはならないので、今の段階からトライアンドエラーを繰り返して、未来のために色々やっていくしかないと思います。

―― 「個々人が自衛を強めるしか今のところは感染拡大を防ぐ手段はありません」とおっしゃられていましたが、改めて「自衛」とはどういう行為を指すのか、教えていただけないでしょうか。

佐藤:4~5月にかけての全国の緊急事態宣言は、感染拡大を防ぐという意味では成功していましたよね。あの時にやっていたことを、国・自治体が指示しなくとも自分でやればいいと思うんです。それは例えば「週末に不要な外出を止めましょう」ですとか、「できるだけ会食を止めましょう」ということをしつつ、三密に気をつける、人との距離を取る、マスクをつける、こまめに手を洗うという基本的な行動です。

今、ニューヨークではかなり感染者数が減ってきましたけど、未だに店内での飲食は禁止されているんですよね。結果論から言えば、日本は既存の行動を全解放するのが早すぎたんだと思います。今の状況は第二波と呼ばれていますけど、これは第一波の再燃だと思うんです。

―― ただ「自粛要請」という矛盾した日本語のもとに、もう一度あの飲食・物販・サービス店舗の大半を強制閉店させるような、激烈なロックダウンを行うのは難しいとも感じてしまいます。

佐藤:それをさせないためにも、第一波の経験を活かして飲食店ならもう一度テイクアウト中心に切り替えるなど、柔軟な対応ができればいいと思います。「命を取るか経済を取るか」というような1か0かしかない空気感になってしまうのは良くないですよね。


prev