EVENT | 2020/08/14

「内科がヒマな夏」に体調不良が急増?意外と徹底できていない「コロナ対策の基本」を『感染症自衛マニュアル』著者の佐藤昭裕さんに訊く

新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、地方都市にも波及する昨今。「三密に気をつけよう」ということは誰しもがわかっている...

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「夏はヒマなはずの内科」が混み合う事態に

―― 政府や自治体の対策、病院・保健所のリソースが大丈夫なのかなど、佐藤先生が現時点で最も危惧していることは何でしょうか?

佐藤:ひとつは保健所の機能がパンクしていることです。7月に入って感染者が急激に増えたことで、追跡調査のトレースが完璧にはできなくなっています。加えて、保健所は他にも通常業務がたくさんあるんです。例えば母子検診、認知症予防の検診ですとか、それが不可避的に不十分になってしまうことのツケがいつか回ってきてしまうのではないかと危惧しています。

これは病院も一緒で、今は手術の実施数をかなり絞っていますし、病気を早期に発見するための健康診断も延期・中止されてしまっています。実際にデータも出てきていますが、数年後のガン死亡率が上がるんじゃないかと言われているんです。

―― 佐藤先生は内科の開業医ですが、患者さんの傾向に変化が見られますか?

佐藤:当院は東京都と契約を結び、公費(医師が必要と判断したケース)・自費ともにPCR検査の実施が可能ですので、今は保健所にPCR検査を依頼することはありません。ただ、最近では明らかに「具合が悪い」と来院する患者数が増えていると感じます。例年、内科は夏の時期すごくヒマなのですが、この時期にこれだけ忙しくなってしまうと、11月以降のインフルエンザの予防接種が増えて忙しくなるシーズンに一体どうなってしまうんだろうと不安になります。

―― そうした患者さんは「どうも風邪っぽいのですが」と来るのか、「新型コロナと思われる症状が出ています」と訴えるのか、その辺りはいかがでしょうか?

佐藤:医師であっても、診察で話を聞くだけではそれが風邪か新型コロナなのかの区別はつきません。なので疑わしい方はPCR検査をするしかないのですが、陽性率はかなり高いと感じます。東京都の発表ですと概ね6~8%前後を推移していますが、当院で実施したケースですともっと高く、20%を超えてしまっています。

3月から4月の「感染が疑われる症状が出ているのにPCR検査が受けられない!」とさかんに言われた状況と比べて、現在では大分改善され「今日熱が出ました」という人でも受けられるようになってます。

―― PCR検査の件数が増えていることはわかるのですが、増やせた理由が調べようとしてもよくわかりません。端的に何故なのでしょうか?

佐藤:当初は国が指定した感染症指定医療機関でしか検査ができなかったんです。それをどんどん拡大し、我々のようなクリニックで自費分も込みで実施できるようになった(症状がなくとも海外渡航前に検査を求められるケースなどで利用される)のと、各自治体が地域外来・検査センターを設け、かかりつけ医との連携が強化されスムーズに検査できるようになったことが大きいと思います。

―― 7月末ごろから「法人を対象に、1人あたり月額1万3800円でPCR検査が受け放題です!」という宣伝FAXが出回っているというツイートが散見されます。自費でのPCR検査料金が1回3万円ほどであることを鑑みるとかなりお得だとも感じるのですが、利用して良いのでしょうか?

あるユーザーが7月29日に投稿したツイートより(アカウント名・ツイート内容をぼかしています)

佐藤:こんなものもあるんですか……。どの会社がやっているのか不明瞭なのでなんとも言えませんが、きちんと実施先のHPを確認し、国の基準を満たしているのかなどを厳密に確認した方がいいですね。

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