LIFE STYLE | 2020/07/02

【ファクトチェック】反人種差別活動家による「奴隷を働かせて造ったピラミッドの破壊要求」は本当か?

Photo by Shutterstock
文:赤井大祐
世界を駆け巡るピラミッド破壊要求報道
今年5月、白人警察...

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フェイクニュースに騙されたメディア

しかし、このニュースは果たして事実なのだろうか?

『EGYPT INDEPENDENT』が引用したとする『CNN』の記事を確認したが、反人種差別活動家はギザのピラミッドについて言及していない。イギリスの通信社『ロイター』も「(ピラミッドを破壊すべきという)主張を裏付ける証拠はありません」とし、フェイクニュースであると結論付けた。

一方で、「エジプト人は奴隷によって建てられたピラミッドを破壊しますか?」といった反人種差別活動家らへ批判的な人からの皮肉を含んだツイートは散見された。

もっとも、ギザのピラミッドは奴隷によって作られたものではない。スコットランド国立博物館の主任キュレーター、マーガレット・メイトランド博士は「ピラミッドは徴集された労働者によって作られた」とし、奴隷商人コルストンの銅像と対比すべきではないとツイートした。

この誤解は、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスから始まったとされる。「クフ王のピラミッドは奴隷に働かせて造った」と著書『歴史』に残し、これが一般的に広まった。しかし最新の研究では、建設に従事した人々は奴隷ではなく一般の労働者であり、豊かな食生活を営んでいたと通説が塗り替えられているという。

ただでさえ情報にあふれる現代社会において、その真偽を確かめるのは非常に困難であり、面倒くさい作業であることは間違いない。しかし、間違った情報をシェアしないためにも、まずは一呼吸おいて情報源を確かめるよう意識してみてはいかがだろうか。


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