LIFE STYLE | 2021/08/24

キリンの群れは母系社会。ゾウに匹敵するほど、複雑で高機能な社会システムを持っているかもしれない

Photo by Shutterstock

文:岩見旦

平均体高が約4.8メートル。地球上で最も背の高い哺乳...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

Photo by Shutterstock

文:岩見旦

平均体高が約4.8メートル。地球上で最も背の高い哺乳類として知られているキリン。動物園の人気者だが、その認知度に反しこれまで社会的行動に関して科学的に解明されてこなかった。

そんな中、イギリスのブリストル大学の研究チームは、400本以上ものキリンにまつわる論文を調査。今月2日、キリンは母系社会を形成しているとの発表を、学術誌『Mammal Review』に掲載した。

400本以上の論文を調査して分かった、キリンの社会的行動

キリンは単独行動をしていると思われがちだが、実際は小さな親密な群れを作っている。その中には、大人のメスの集団が含まれることが多く、6年間ともに行動したケースや、母親と子どもが15年以上にわたり関係性を築いたケースも存在している。

これらの群れは最大3世代にわたる親族で構成されることがあり、メスが他の子どもの世話をし、群れの中の他の子どもが亡くなった際に嘆くこともあるとのこと。その一方、オスは群れから分散することが確認されたため、研究チームは、キリンは母系社会を形成していると結論付けた。

同大学の動物習性学者のゾーイ・ミュラー氏は「この論文は、キリンが複雑で高機能な社会システムを持っている動物であることを示唆する証拠をまとめたものです。ゾウやクジラ、チンパンジーに匹敵する可能性があります」と説明している。

閉経後のメスが長生きするよう進化した理由

キリンのメスの寿命は30歳ほどだが、生殖可能年齢はおよそ20歳までだ。『EurekAlert』によると、研究チームは、メスが閉経後も長生きするように進化したのは、次の世代の世話をして生存率を向上させるためだと考えているという。これは「おばあさん仮説」として知られており、ゾウやシャチ、人間など一部の哺乳類に当てはまる。ただし、この考察に関してはまだ論文化されておらず、今後さらなる調査が必要だろう。

キリンの個体数は1985年以降40%も減少しており、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種を掲載した「レッドリスト」に指定されている。キリンの社会的行動が解明され、理解が深まることで、保護の動きが加速することを期待したい。