EVENT | 2025/06/14

歴史ある町並みから山岳の絶景へ
地元の風景・人・食とともに駆け抜ける“100kmの旅”

第13回 飛騨高山ウルトラマラソンに3,477人が出走、完走率72.5%

FINDERS編集部

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グルメ給水所やU25部門など進化を続ける地域密着型レース

6月8日(日)、岐阜県・高山市を舞台に「第13回 飛騨高山ウルトラマラソン」が開催された。フルマラソンを超える長距離を走る「ウルトラマラソン」の中でも、本大会は飛騨の自然や文化、そして地元の人々のもてなしが一体となった、ユニークなレースとして知られている。

今回のエントリー数は3,744人。当日出走したのは3,477人で、100km・71kmの過酷なコースに挑んだ。完走者は2,522人、完走率は72.5%。気温や標高差など厳しい条件の中でも、多くの参加者が自らの限界に挑み、走り抜けた。

スタート地点となったのは、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている飛騨高山の古い町並み。石畳の道と木造建築が並ぶ歴史情緒あふれる街道を、早朝の涼風を受けながらランナーたちが駆け出していく様子は、観る者にも非日常の高揚を与えてくれる。

コースは、緑豊かな美女高原を抜け、標高1,000メートル超の峠を越える本格的な山岳ルート。千光寺へと続く名物の急勾配と108段の石段が待ち構え、単調とは無縁の変化に富んだ構成となっている。身体は確かにきつい。しかし、そこにあるのは修行のような黙々とした苦しみではない。沿道で旗を振る地元の子どもたちや、笑顔で声をかけてくれるお年寄りたちの応援が、ランナーの足を一歩一歩前へと押し出していく。

「自分のために走っていたはずが、いつの間にか誰かの期待に応えるために走っていた」。そんな感想が、完走後のランナーの口から自然とこぼれるような、心を動かす体験がこの大会には詰まっている。

“走るグルメフェス”とも言うべき豪華な給水所の数々

飛騨高山ウルトラマラソンを語るうえで欠かせないのが、地域の食文化をふんだんに取り入れた「おもてなし給水所」だ。

よもぎうどん、火畑そば、イノシシの冷しゃぶ、とらふぐの唐揚げ、梨打ち汁、どぶ汁……。通常のマラソンでは見かけないような料理が次々と振る舞われ、走る苦しみを上回る“味覚の楽しみ”が、100kmの旅に独特のリズムを生んでいく。

とりわけ注目を集めたのが、57.2km地点・丹生川支所の「飛騨牛」だ。全国和牛能力共進会で“最優秀枝肉賞”を2大会連続で受賞した日本屈指のブランド牛がランナーに振る舞われるという贅沢。まさに“走るご褒美”とも言える逸品で、力尽きかけた身体に最後のひと押しを与える存在となった。

この“給水所グルメ”を目当てに参加するランナーも少なくなく、近年ではSNSで「#走るグルメ旅」として拡散されるなど、ユニークな参加動機にもつながっている。

若い世代の挑戦を後押しする「U25部門」も新設

今年から新たに設けられたのが、25歳以下のランナーを対象とした「U25部門」。参加費を20%割引とすることで、ウルトラマラソンに対するハードルを下げ、次世代の挑戦者を後押しする制度だ。初年度の参加者は71名。初々しいランナーたちが高山の町に新しい風を吹き込んだ。

また、飛騨高山市長であり大会実行委員会会長の田中明氏は、今年も自らスターターを務めるとともに、ゴール地点では全完走者2,522名と“グータッチ”でエールを交わすなど、地元行政と大会の一体感を強く印象づけた。

さらに、人気ランナー系インフルエンサー「ウルトラランナーみゃこ」さんがゲスト参加。後方から走る“応援ラン”で、参加者や沿道の人々に声援を送りながらコースを駆け抜け、その様子は大会後もSNSや動画で話題となっている。

競技結果にも注目が集まった。男子71kmの部では、昨年100km優勝の小野寺祐太選手が、4時間51分59秒で完走し、別種目での連勝を達成。女子100kmの部では、兒玉里恵選手が2位に30分以上の差をつけて8時間53分00秒でフィニッシュ。2連覇の偉業を成し遂げた。

レースを走る者、それを支える者、沿道で応援する者。立場の違いを越えて「走ること」を媒介に生まれるつながりが、飛騨高山ウルトラマラソンの真の魅力なのかもしれない。

第13回を迎えた今年の大会は、ウルトラマラソンという枠を超えて、地域とランナー、食と風景、人と人をつなぐ“100kmの物語”をまたひとつ紡いだ。


第13回 飛騨高山ウルトラマラソン
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