EVENT | 2020/12/08

毒親「北大に合格しなければクズ」「パニック障害は気のせい」数々の壮絶虐待を受けた古谷経衡が語る、絶縁のススメ

保守系の政治トピックスを扱うことが多い文筆家として知られる古谷経衡氏が、“異色の一冊”とも言える...

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併発する精神疾患の苦しみと名医・貝谷久宣先生との出会い

―― 本では、両親からの教育虐待に加えて、パニック障害の苦しみについてもかなりの分量が割かれています。その中ではパニック障害だけでなく広場恐怖症も発症していたとありましたね。

古谷:英語では「Agoraphobia」と言うんですが、体育館での全校集会みたいに、たくさんの人がいる場所でどうしようもなく恐怖を感じてしまうんです。厳密に言うとパニック障害とは別の疾病ですけれども、僕の主治医が言うには合併していて、どちらかというと広場恐怖症が先行しているとのことでした。ただ、広場恐怖症単体では発作は起こらないんです。ただ怖いとか苦手だというだけで。

―― それはうつに近いものなのでしょうか?

古谷:パニック障害単体で発病する人は非常に少なくて、かつそれはストレスが基になっているので、どうしてもうつ病とか双極性障害を合併すると。一応僕は抗うつ剤を飲んでいます。

自分の場合はこうやって喋れますし、外に出られないということではないですね。よく、物書きにありがちな実存への問いとか、うつ病みたいな感じですし、いろんな人にあると思います。今はほとんどないですが、初期の頃は不眠も結構ありました。そういう症状が複合的に合併していくというのが精神医学的には通常らしいですね。

―― そうした各種症状がようやく改善に向かったのは比較的最近のことで、精神科医の貝谷久宣先生との出会いがきっかけだったと。

古谷:はい。精神科医によって得意分野が当然それぞれ違うわけですけど、内科医が胃も腸も診るのと同じで臨床の場ではある程度何でも診る必要が生じてきます。そうすると、専門ではない先生が診た場合は患者からすると「教科書的にこれが効くと書かれている薬を出されて終わり」という対応になってしまうことも珍しくありません。

そうしたこともあっていわゆるドクターショッピング的にいろいろ転々として、最終的には数年前に妻の紹介で貝谷久宣先生という、日本のパニック症の中では最高権威の一人である方を紹介いただいたことができたんですね。

それで多剤併用療法という、複数の薬を併用していくというかたちを採りまして、パニック症は当然それで抑えられる。合併している広場恐怖症やうつについても、同じ要領でずっと静かにやっていくと。

―― どの病気であっても、自分に合った先生を探すのは難しいですよね。

古谷:患者の側から「この先生はどこの学会に所属していて何が得意です」って調べるのは大変じゃないですか。だから「本当は循環器が悪いんだけれども、循環器系の専門医でなく一般内科に行ってしまって風邪薬をずっと出されています」みたいなことが少なからず起きてしまっていると思うんです。僕は単にラッキーだったと思います。

―― 先生を紹介してもらえたというのは、どんな経緯だったんですか。

古谷:妻の友人がここの医療法人で事務をやっていたんです。

―― なるほど! ちなみに複数の薬を出された際「何がどの症状に効いている」ということは体感できるんですか?

古谷:最初に「この薬はこういう効果があります」と説明はされるんですが、体感ではわからないですね。レクサプロというのが基本的にはパニック症第一選択とされ、僕もそれを飲んでいるんですが、サプリみたいに規定量を8種類ぐらい飲む感じです。どんな薬も1週間、2週間飲んで効くものではなくて、何カ月も続けていくうちに効いてくるという感じです。

ただ、ワイパックスという頓服薬があって、それはパニック発作が起こりそうな時に緊急避難用として飲むんですけれども、今はあまり飲まなくてもいいようになっていますね。これは飲むと明らかに効果が分かります。

―― どんな効果があるんでしょうか?

古谷:患者からすれば、パニック障害は脳の信号が過剰に暴走するというなので、それを鈍らせてやるという感じですね。だからワイパックスを飲んだ後に車は運転できないですね。どよん、となって非常に気持ち良くなる。普通に喋ったりはできますけど、機敏な動きはできないというか、それをさせないことによって緊急避難するので。そのぐらいは分かりますかね。

「謝りたい」と言われて親と会ってみたら…

――2018年のYahoo!ニュース個人の記事では、最後に「親との関係が改善に向かうかもしれない」という結び方をしていましたよね。それから完全な絶縁に至るまでに何があったんでしょうか。

古谷:あれは両親と会う前に書いたからですね。あれを読んで「謝りたい」と言ってきたんです。ただ会ったら結局「自分がやったことは忘れた、そんなことをした覚えはない」と言っていて、こっちからしたら18年間植民地統治されてきたみたいな話ですから、そんな態度で解決できるわけがないと。

向こうからしたら息子が自分たちのことを悪く言ったり揶揄したりするのが嫌なんでしょうね。最終的に「息子に相続させる」という前提で譲り受けた家屋、土地を取り上げようとしたので、こちらも弁護士を立てて戦おうと。そうしたら、内弁慶なのですっと引っ込むんですよ。それでもう終わりです。これまで徹底的に全面戦争でやるみたいなことを両親に対して言ったことが僕もなかったから、ちょっとビビったんだと思います。

当時はYahoo!ニュース個人の記事よりもっと細かいことを書いて200部ぐらい印刷して、親戚という親戚に全部配ってやろうと思ったんです。こっちだって徹底的にやるぞというふうに思ったんですけど向こうが折れてきたので、じゃあ芸の肥やしというか本にしてやろうと思ってこの本になりました。Yahoo!ニュース個人の記事の時点で、僕の親戚側から僕にコンタクトはなくなりましたね。だから、気まずいんじゃないですか。

―― 正直、自分がその親戚だったとしたら古谷さんに対してなんて言っていいか分からないと思います。

古谷:自分の親族がそんなことをしていたという、真偽はともかく、そういうある種の告白がなされたから、たぶん連絡は来ないですね。来なくて結構です。

―― この辺りで印象的だったエピソードの一つは、古谷さんのこの名前が本名を改名したものだったという。

古谷:家庭裁判所を通じて数百円ぐらいでできちゃうんです。僕は親によって教育虐待的なことをされていたので、とにかく親から授かった名前が嫌でしょうがなかったんです。改名する際には「使用実績」が問われるんですけど、僕の「経衡」という下の名前はペンネームでずっと使ってきたこともあり、5、6年間使った名前であれば基本的には社会認知があるということで、相応の理由があれば変更が許可されます。

正直変えなくてもいいんですけど、住民票を取るたびに親の付けた名前がちらほらするのは嫌なので、これで精神的にも書類的にも離別できたなという認証が欲しかったんですよね。それで変えました。

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