Photo By Tippecanoe County Jail
米国インディアナ州に暮らす夫婦が2013年、アパートに9歳の養子を一人置いてカナダに逃亡したと育児放棄の容疑で起訴された。
しかし、母親がその少女がサイコパスであったと告白をし、まるでホラー映画を彷彿させると全米を驚愕させている。
子どものはずが大人の身体
クリスティン・バーネットさんと元夫のマイケル・バーネットさんは、2010年にウクライナから来た当時6歳だった女の子、ナタリア・グレースを養子として引き取った。身長は90センチほどしかなく、歩行に問題を抱えた小人症だったという。
しかし、ともに生活を始めると辻褄が合わないことが起きた。『DailyMail』によると、ナタリアは本来幼いはずなのにも関わらず、すでに生理が来ており、大人の歯に入れ替わっていたという。さらに小人症でも起こるような数センチの成長も無かったとのこと。
コーヒーに漂白剤を入れて毒殺
クリスティンさんはナタリアを病院に連れて行ったところ「医師はすべて、彼女は成人でのみ診断される重度の精神疾患を患っていると診断された」という。ナタリアは動いている車から飛び降りたり、鏡に血を塗りつけたりしたことも。
『DailyMail TV』のインタビューに、クリスティンさんはナタリアから暴力で脅されていたと明かした。ナタリアから、家族を殺し「毛布にくるんで裏庭に捨てる」と宣言されたという。また、「夜中に人の上に立っていて、寝られませんでした。私たちは怖くて尖ったものを隠さなければなりませんでした」「私のコーヒーに漂白剤のようなものを入れていて、何をしているか尋ねたら、毒殺しようとしていると答えられたこともあります」とも。
最終的に夫婦は、ナタリアの年齢を確認するため、骨密度検査をするかかりつけの医者の助けを求め、少なくとも14歳以上であると診断された。この検査結果から、クリスティンさんはナタリアにより適切な洋服を買い与えたが、症状はより悪化。2012年、ナタリアはクリスティンさんを電気柵に引き込もうとしたのだ。
ナタリアの年齢を修正し、カナダに移住する夫婦
同年、ナタリアは国営の精神科に入院することに。クリスティンさんによると、その時ナタリアは本当の年齢を告白したとのこと。
夫婦はインディアナ州の裁判所に、ナタリアの年齢の修正を申し出て、判事はその申し出を「真実」として受け入れ、ナタリアを1989年生まれに変更した。この時、ナタリアは22歳となった。
夫婦は2013年、退院後ナタリアをインディアナ州のアパートに住ませ、カナダに移住。ナタリアの家賃以外、財政的にサポートをしなかった。
ただし夫婦はナタリアが社会保障番号、福利厚生、フードスタンプ(米国の低所得者向け食料費補助対策)を取得するのを援助。彼女がアパートを追い出された時に備え、新しい住まいも用意したと主張する。
現在のナタリアは?
2014年、ナタリアは警察に赴き、親である夫婦がカナダに移住して以来、会っていないことを明かした。
その後5年間の何があったか、詳細は不明だが2019年9月に、夫婦は育児放棄のため起訴された。裁判所の文書には、ナタリアが2010年に約8歳、2012年に11歳であったことを示す医師の報告が引用されているという。
警察によるとマイケルさんはナタリアが未成年であることを認め、さらに宣誓供述書には「マイケルとクリスティンはナタリアに、若く見えるけど実際には22歳であると他人に伝えるようにと言ったことを認める」とあった。
マイケルさんの弁護士は、宣誓供述書は嘘であると主張し、「マイケルはナタリアが子どもであるとは知らなかった」と主張した。また、クリスティンさんはこれらの告発を否定し、養子縁組が詐欺であったとFacebookに投稿。現在2人は保釈されている。
しかしその後も法廷での闘争は続き、2022年の11月マイケルさんはついに不起訴処分に。『Indianapolice Local News』の取材に対して「これでようやく息ができるようになった」と漏らした。クリスティンさんは2023年の2月に裁判を控えているということだ。
謎が謎を呼ぶ怪事件。まさに事実は小説より奇なりである。
2023年1月11日更新(初出は2019年10月7日)
文:岩見旦