文:岩見旦
地方裁判所を装った組織から、提訴を告知するという封書を送りつける新手の詐欺が流行中だ。SNS上で大きな話題を呼んでおり、裁判所のホームページでも警鐘を鳴らしている。
「地方裁判所 民事訴訟部」を名乗る詐欺封書にご注意
奈良英喜さんの自宅に届いたのは「地方裁判所 民事訴訟部」から送られてきた封書。「至急」の印が押されており開封してみると、「提訴の告知」という手紙が入っていた。
そこには「あなたは支払い義務違反という事で、地方裁判所に訴状の提出が行われ、受理されております。この件に関して異議申し立て、または取り下げ希望がある場合、下記日付までに答弁書の御提出または、当局にて御相談を受け賜わっておりますので、民事訴訟部ご相談窓口にお問い合わせ下さい」と記載されており、期限までに連絡しない場合は、財産差押えなど法的手続きを取ると警告している。
記されている住所と地図は確かに東京地裁のものだが、実際はこの封書は裁判所が送付したものではない。記載されている電話番号に連絡すると、詐欺グループへつながるのだ。
奈良さんは6月3日、自身のTwitterにこの封書が届いたことを明かし注意喚起した。すると瞬く間に拡散し、現在この投稿は9万4000件を超えるリツイートを記録。「大事に至らなくて良かったですね」「架空請求がアップデートされてる」「ハガキから封書に進化したのか」など、巧妙化する犯行手口に驚愕した人からの反響が寄せられた。また同様の封書が届いている人からのコメントも挙がった。
本当の裁判所から送られた封書には1072円分の切手
裁判所から突然封書が届いた時、不安になりまっとうな判断が出来なくなるかもしれない。そんな時に備え、その封書が本当に裁判所から送られたものか判断できるポイントを一つ紹介する。
本来、裁判所から「支払督促」や「少額訴訟の呼出状」などの文書が送付される際は、「特別送達」という印が押され、1072円分の切手が貼られる。内訳は通常の郵便料金82円、一般書留料金430円、特別送達料金560円だ。
今回のケースは、封書に「特別送達」の印がなく、貼られている切手も82円なので、開封するまでもなく、裁判所から送られてきた封書ではないことが分かる。
裁判所は「このような郵便物を受け取った場合には、最寄りの裁判所にお問い合わせください」と注意を促している。家族など身近な人がこれらの封書を受け取った場合は、アドバイスしてあげてほしい。