文:岩見旦
近年ゲームの分野で活用されているAR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)。
アメリカの気象番組「The Weather Channel」は、これらの最先端のテクノロジーを駆使し、天気に関する情報をより分かりやすく、よりエンターテイメント性を持って届けている。
竜巻、洪水、山火事、水没をARで表現
まず紹介するのは、キャスターの男性が、スタジオで巨大モニターを使い、竜巻について解説を行っている動画。普通に番組は進行しているが、突如スタジオの中に電柱が横転。さらに自動車が飛んできた。威力を増す竜巻に、ついにはスタジオが飲み込まれてしまった。
もちろん、これらはすべてARで作られたものであり、実際に被害を被っているわけではない。竜巻の恐ろしさを、現実味を持って感じられたのではないだろうか。
こちらは昨年9月、大型ハリケーンのフローレンスがアメリカに上陸した際に公開された動画。「3フィート(約0.9m)以下」「6フィート(約1.8m)以下」「9フィート(約2.7m)以下」などと、それぞれ地域の洪水の水位が予想されているが、どのような被害が及ぶか、いまいちピンとこないだろう。
そこで洪水被害をARで表現。うねりをあげた濁流は自動車を浮かび上がらせ、人はまともに生き残れないことが分かる。一方、キャスターの男性の周りにはバリアが張られており、シュールな映像となっている。
近年、被害が拡大している山火事をARで表した動画も衝撃的だ。緑が生い茂り、動物が生活を送っている山の中で、小さな火が燃え移り、森を炎が包んでいく様子を捉えている。燃え盛る炎の中、キャスターの女性が淡々と解説を続けている。
麓の街に移動すると、そこは火の手は及んでいないものの、大量の黒い煙で大気が汚染されていることが手に取るように明らかだ。
最後は、今年4月に公開された地球温暖化を警告した動画だ。まず、2100年のサウスカロライナ州のチャールストンが、洪水により水没している様子が描かれる。ヴァージニア州ノーフォークでは、現在すでに同様の危機が迫っている。
1851年のグリーンランドに舞台が移動すると、巨大なヤコブスハブン氷河が、温暖化の影響で25マイル(約40km)にわたり、音を立てながら海の中に流出している様子がARで表現されている。
自然現象に対する脅威は頭の中では理解していても、いまいち実感が沸かないところがあった。しかし最先端のテクノロジーを活用したことで、心にダイレクトに響いたのではないだろうか。