文:coolpolaris
人生で最も幸福な時間が一転
米国オレゴン州メドフォード在住のキャスリーン・ソーソンさんは、昨年12月29日に、テディちゃんを出産した。夫のジェシーさんとの間には、すでに3人の子どもがおり、キャスリーンさんは4人の母親となった。
高校生の時に出逢い大恋愛の末に結ばれた夫婦と4人の子どもたちは、幸せに包まれていたのも束の間、今年1月3日にキャスリーンさんの容態が急変した。原因不明の脳内出血を起こし、医師の努力もむなしく、数日後に脳死と判定された。34歳だった。
臓器提供が12人の生きる希望に
4人目の子どもが生まれて1週間も経たない内の悲劇に、家族は悲しみに打ちひしがれた。しかし夫のジェシーさんは冷静に、キャスリーンさんの臓器を他人に提供することを決意した。それはキャスリーンさんが生前から願っていたことであり、この悲劇が臓器提供を心待ちにする人の希望になると信じていたからだ。キャスリーンさんの両親と妹も同じ思いだった。
こうして、キャスリーンさんの心臓や肺を含む12個もの臓器が希望者に提供された。「臓器提供は、悲しみの中での決心だったが、希望につながる前向きな判断だったと思う」と、ジェシーさんは『Good Morning America』の取材で語った。
集まる賞賛と広がる善意の輪
夫婦の思いを知る友人のリチャード・スタッブスさんは1月8日、残された家族を支えるため、クラウドファンディングサイト『GoFundMe』にプロジェクトを立ち上げた。それからわずか2週間で目標の9万5000ドルを集め、現在13万ドルの支援が寄せられている。集まったお金は、ソーソン家の医療費、葬儀費用、賃金補填などに充てられる。
また、スタッブスさんは「キャスリーンは、大好きなガーデニングを子どもたちに教えたり、友だちを招待してイベントをしたりできる庭を造るのが夢でした。目標より多く集まったお金は、ジェシーと子どもたちがその夢を引き継いで、庭を造るための資金に使われます」と付け加えた。
ジェシーさんは「妻が臓器を提供した方々の、明るい未来が楽しみです。また、彼女の決心を誇りに思い、子どもたちにとってかけがえのない教えになると信じています」と、キャスリーンさんの行動は最高の教育になったと語る。
現在、アメリカには約11万4000人が救命臓器移植の順番待ちリストに載っており、10分ごとに新しい名前が増えるという。ソーソン夫婦のような勇気ある決断が決して無駄にならないよう、臓器提供を受けた人の希望にあふれる人生を願ってやまない。